かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト交響曲全集 ピノック/イングリッシュ・コンサート編12

神奈川県立図書館ピノック/イングリッシュ・コンサートモーツァルト交響曲全集の今回は第12集を取り上げます。ようやくこの全集の最後まで来ました。

最後は第40番と第41番「ジュピター」になるわけなのですが、これは全集でなくてもふつうにカップリングされることが多い2曲ですね。

しかし、ここでは全集の一部として俯瞰してみますと、やはりピリオド演奏だからこそ、この二つの楽曲がすでに古典派の範疇から外れつつあるということを実感させてくれます。なかなかうまくいかない強弱のつけ方や、テンポ感というものでピノックに「迷い」を感じます。

それが特に出ているのが第40番のテンポでして、ややロマンティックになりつつあります。しかし、それでも演奏としては成り立ってしまうのですから、そもそもこの曲が持つ性格というものをかんがえさせてくれます。

ただ、それでももう少し思い切って快速テンポにしてほしかったですね〜。そのほうがより、この曲の古典派でありながら次の時代を見据えた先進性というものがクローズアップされたのではと思います。

その点で、私はこの第40番に関してはサヴァリッシュ/チェコ・フィルの演奏以上のものにいまだ出会っていません。

マイ・コレクション:モーツァルト 交響曲第40番・第41番「ジュピター」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/347

次の第41番のほうが快速で、これは逆にこの第41番がとても古典的な楽曲であるということを認識させてくれます。しかし、その音楽性というか精神性はすでにベートーヴェンの時代をも先取りしたようなものになっています。

その意味で、この2曲はモーツァルト交響曲の中でも特異な地位を占める作品だと私は思います。なぜか。それは、以下のサイトを見てくだされば一目瞭然です。その「時代」ゆえなのです。

18世紀の交響曲:作曲時期の比較
http://www.kanzaki.com/music/mw/sym/yc?s=18c

モーツァルトのこの二つの作品が作曲されたのは、1788年の7月から8月にかけてです(第40番が7月25日、ジュピターが8月10日)。ハイドンはと言えば、「パリ交響曲」期で、ようやく古典的完成を見る時期になります。

モーツァルトの素晴らしさは、私はなんといってもその「吸収力」だと思っています。ハイドンがようやく完成させたものを、モーツァルトはやすやすと自家薬篭中のものにして、さらなる高みへと昇らせた・・・・・それは、ハイドンより数年早いわけなのです。ハイドンがそこまでたどり着いたのはモーツァルトの死後です。

その点でハイドンよりモーツァルトという意見がちょっと少ないなあと思います。ハイドンがくだらなく、モーツァルトが素晴らしいのではなく、ハイドンもすごいのですが、モーツァルトはその上なのだということなのです。

だからこそ、逆にこういったピノックのような「迷い」も本場では生まれるのではないかという気がします。実際モーツァルトは「もっと快速に演奏してくれないかな〜」と思っているかもしれません。

第40番のテンポに関しては、いろんな切り口があると思いますが、クラリネットの採用も一つあるのかもしれません。実際、モーツァルトは翌年クラリネットを書き加えたようです。その点がこの曲を切る時にロマンティックになる一つの要因かもしれません。

ただ、この二つに関しては以前から第39番を加えモーツァルトの三大交響曲として扱われることが多く、さらに言えば3の倍数でひとくくりされることが多いことから、モーツァルトが三曲セットで考えていたという意見もあります。そのうちクラリネットを加えているのは第40番だけであるということを考えますと、快速テンポというほうが私は統一性があるように思っています。

そこでクラリネットが鳴ったら、いったいどんな音色になるんだろう・・・・・天才モーツァルトがそう考えてもおかしくないですよね。そしてそれをサヴァリッシュチェコ・フィルで見事証明してみせました。何ら問題ありません。

となると、ピリオド楽器であるからこそ、もう少し早いテンポでもよかった気がします。その点だけがマイナスですね。これは時代観というものに左右されすぎたような気がします。一度それから距離を取ってみて、その上でもう一度時代観を構築しなおすということをやってもよかったような気がします。

テンポとしてはそんなに遅いわけではないのでいろいろ考えているなとは感じられるんですけどね・・・・・ま、それは私と美意識が合わなかった、ということでしょうか。

最後の第41番で、「終わりよければすべてよし」としましょうか!

そうそう、第40番ではフォローもしておきましょう。実は第4楽章できちんと繰り返しをやっています。これは私がきいた中ではピノックだけです。こういった学究的な面がしっかりとある分、テンポが若干遅かったのが気になったのでもあるのですね。

全体的には、お勧めです!



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
交響曲第40番ト短調K.550
交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」
トレヴァー・ピノック指揮
イングリッシュ・コンサート



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