ほぼ一か月ぶりにコンサート雑感をお届けします。今回は2011年5月28日にありました、中央大学音楽研究会管弦楽部の第65回定期演奏会の模様です。
いわゆる「中大オケ」です。以前、第九の演奏をご紹介しました。
音楽雑記帳:実力をつけた中大オケ
http://yaplog.jp/yk6974/archive/477
まず端的に言えば、この時と同じような興奮と感動を与えてくれました。音の処理、そしてそれによる響きも最高でした!
第1曲目はワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲です。全体的に本当に素晴らしいアンサンブルで、特に木管と弦が素晴らしい!アインザッツも素晴らしく、強弱もきちんとついていまして、アマチュアとしてはもう合格点なのではないでしょうか。
それだけに惜しかったのが、金管。音が外れているのではなくタイミングが合っていないんですよね〜。いや、正確には音も若干ですが外し気味でした、出だし。
実はそれはこの曲だけではなく、以下の曲でも同様で、まず出だしで合わず次にあうということをくり返しています。それがたまにならいいのですが(そういったことはプロオケでもよくある話です)、必ずということになると、これは修正しないといけないことだと思います。
というのも、木管は完璧に合わせているからなのです。一番最初でというのはまあわかるんですけどね。特にこのマイスタージンガーは確かに致し方ない部分もありますが、一応、元アマチュア合唱団員からのアドヴァイスをいたします。
これは私がブラームスの「運命の歌」を歌った時の指揮者が練習中常に注意されていたことなのですが、六拍前から息を吸いなさい、そして2拍前から指揮棒を見なさいと教えられました。
今回のマイスタージンガーの場合ですと、いきなりですから、最初のタクトが振り下ろされる時点から逆算して、息を吸いはじめ、吐き出すのです。それを練習中にやって完璧に合わせておかないと、本番で最初だけが合わないという事態に直面してしまうのです。
能力がなくてアンサンブルを合わすことが出来ないということではないと私は演奏を聴いて感じています。むしろ能力は高いと思っています。そういった点を練習でしっかりとやれば、次は必ず合うでしょう。それが実現できれば、たとえ一度会わなくて崩壊しそうでも、それ以後はまず合わないってことはいきなりであってもないはずなのです。
これは私も多くのアマオケを聴いてきて経験的にわかっています。ぜひとも実践してみてほしいなと思います。
次に、モーツァルトのホルン協奏曲第3番です。まず驚いたのはその編成。いきなり少人数!しかし、それがモーツァルトの時代、当たり前でした。
アマチュアオーケストラでも、古典派の協奏曲では大人数で演奏してしまうこともしばしばですが、今回はほぼ楽譜の指定通りの人数でやられているのではないかと思います。
しかしそれゆえに、いわゆるアマチュアらしい音がしてしまいましたが、私はそれがプロオケのようにとまでは要求しません。というより、モーツァルトはそれをすぐ要求できるほど簡単ではないんですね〜、これが。
私も歌った経験があるために、モーツァルトの音楽がいかに深いかを知っています。それだけに、むしろオケの英断を高く評価したいと思います。
そしてさらに高評価なのは、高音部は強く低音部は弱く、リフレインは弱くという原則を一生懸命やろうとしている点です。正確に言えばまだもう少しだけ強弱をつけなければいけないのですが、しかしアマチュアでここまでやれれば及第点だろうと思います。決してこのホルン協奏曲は簡単な曲ではありません。
第3番変ホ長調 K.447(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%B3%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%88)#.E7.AC.AC3.E7.95.AA.E5.A4.89.E3.83.9B.E9.95.B7.E8.AA.BF_K.447
第1楽章はカデンツァが通常付きますが、今回はアインガングで済ませたようです。ソリストの力量のせいでしょうか?先生であっても難しいのがモーツァルトなのだということを肌で知っただけでも、オケの団員には宝になると思います。これにひるまず今後も何かの機会にモーツァルトに挑戦してほしいです。
最後がメイン、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」です。これは私にとって衝撃的な演奏でした。
これも全体的にはアンサンブルが素晴らしく金管以外非の打ちどころがありません。
まず第1楽章ですが、驚いたのは主題提示部で繰り返しがなされていることです。これをやったのは私が聴いた中では中大オケだけです。プロオケでも私はCD、実演奏、あるいは放送で聞いたことは一度としてありません。しかも、それを完璧なアンサンブルでやってしまう!
その上で、強弱をきちんとつけています。それは特に第2楽章で顕著で、序奏部での弦が弱くする部分で完璧に行われていました。ここで私はもう涙が出てきました。
この曲はこれほど感動する曲だっただろうか・・・・・
この楽章も、実は相変わらず金管が合わないなあと思っていたところに、その弦楽器の素晴らしい強弱のついたアンサンブルだったのです。直後のタクトと合ったコーラングレの美しさと言ったらなかったです(その部分は音一つ演奏されなかったですね〜、恐らくプレッシャーに負けたのだと思います。でも、タイミングは完璧です!最高!)。
第3楽章、第4楽章も言うことなし。これほど完璧な演奏を、まさか学生オケで聴くとは思いもよりませんでした。
聴けば、震災後満足のいく練習をしていなかったそうで、恐らく最初のマイスタージンガーは本来ならば入学式で演奏されるべき曲だったのではないかと思います。そういった様々な事柄が、彼らの心に去来しているのだなと思いますと、それもまた涙が出て仕方がないんですね。
本当にアマチュアオケの演奏会はこういったことがあるので素晴らしいです。
アンコールの曲は実は私は存じ上げなかった曲なのですが、ドヴォルザークのフェスティバルマーチ。団員全員参加のノリノリの演奏で、オケが楽しんでいることが観客を楽しませていることが素晴らしかったです。私も素直にスウィングしていました。こういった演奏が、本当に今求められているのだと思いますが、それを自然にやってしまうことが素晴らしかったです。
ぜひともまた聴きに行きたいオーケストラです。今度は年末に「悲愴」とのこと。これまた今度は追悼ともいえる曲です。この手の曲は実はのめりこみすぎると崩壊する危険性のある曲でもあります。特にこういった災害があった時には・・・・・
どこまで「冷静と情熱の間」を維持できるのか、楽しみです。今回はそれが完ぺきでした!
ここまで素晴らしければ、このオケでブルックナーなんて聴きたいなあなんて、それは無理でしょうかねえ。
追伸:
指揮者のプレトーク、素晴らしかったです。特に、ワーグナーの人物表現の比喩は、絶妙でした!
聴いたコンサート
中央大学学友会文化連盟音楽研究会管弦楽部 第65回定期演奏会
リヒャルト・ワーグナー作曲
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
ホルン協奏曲第3番変ホ長調K.447
アントニン・ドヴォルザーク作曲
交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」
高野哲夫(ホルン)
佐藤寿一指揮
中央大学学友会文化連盟音楽研究会管弦楽部
2011年5月28日、東京、多摩、パルテノン多摩大ホール
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