かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

音楽雑記帳:メータ指揮のチャリティー「第九」を聴いて

今回の音楽雑記帳は、以前も「想い」のコーナーで述べました、ズービン・メータ指揮、NHK交響楽団のチャリティー・コンサートにおける第九の演奏についてです。

今回はいわゆるネット配信の動画を見ています。ですので、「コンサート雑感」とはしませんでした。

東北関東大震災被災者支援チャリティー・コンサート〜 ズービン・メータ指揮/NHK交響楽団特別演奏会
http://www.tokyo-harusai.com/news/news_823.html
(6月10までの期間限定のようです!見たい方はお早めに!)

実はこのコンサートは、「東京の春音楽祭」の一環だったのですね。とあるブログを見て居ましたら、紹介されていましたので、私も見てみました。

曲目は、バッハの管弦楽組曲第3番第2楽章エア、いわゆる「G線上のアリア」と、ベートーヴェンの第九です。この組み合わせはとても懐かしさを私自身は感じるプログラムなのですが、メータ氏が追悼という意味を込めたとなると、そんな甘い感傷に浸れるようなものにはなりません。

しかし、演奏としてはとても端正かつ素晴らしいアンサンブルで、のっけからN響が集中していることがよくわかります。

会場はいつものNHKホールあるいは東急Bunkamuraオーチャード・ホールでもなく、上野の東京文化会館。いくつもの名演を生み出してきたホールです。このブログでもチェコ・フィルの演奏を取り上げています。

マイ・コレクション:ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/340

そのせいなのか、N響は最大集中をしているように思います。いつもと雰囲気が違うということもあるのかもしれません。指揮者メータ氏の意向で、被災者を気遣い拍手がないのです。バッハが終わった後、そして第九が始まる時、さらには第3楽章でソリストが入ってきてもまったく拍手がありません。

実はこういったものってとても演奏する側に影響を与えるのです。聴かれる方は拍手をするのが当たり前だからしていらっしゃるかもしれませんが、演奏する側は実はそれがありがたかったり、ときにはプレッシャーになったりするものなのです。当然、この日(4月10日)のN響をはじめとする演奏者たちにも、それは影響を及ぼしていたと考えます。

特に、N響のアンサンブルの素晴らしさは、ここ数年のうちで最大なのではないでしょうか。それくらい素晴らしい演奏です。一糸乱れずと言ったら言い過ぎかもしれませんが、それくらい素晴らしい演奏です。

何かに取りつかれたような、端整ながら鬼気迫る演奏・・・・・第九の理想的な演奏かもしれません。

音を切る時の処理など細かいことを言えばきりないのですが、第1楽章ではコーダの部分。第2楽章ではトリオのAの部分。第3楽章ではトランペットが鳴り響く部分。どれもプロでも、そして海外のオケでも崩壊しそうになる時があるにも関わらず、それが一切ありません。日本のオケでそんな演奏を聴けるとは、なんて幸せなのでしょうか。

そして、圧巻は第4楽章。本当につらい部分があるにも関わらず、オケは必死になって支えます。そして合唱団も素晴らしい!冷静と情熱とを兼ね備えた、力強くかつしなやかなアンサンブルは、涙なしには聴けません。惜しむらくはソリストだと思います。というより、この演奏がやはり被災された人、あるいは亡くなられた人を想うからこそ、つい力が入ってしまったのかもしれません。しかし、合唱団はそれをアンサンブルとしてぶつけてくるわけですね。しかも高いレヴェルで。そういう時はソリストのほうが尻込みするくらいになります。明らかにソプラノとテノールは力が入ってしまっていましたね。

それはおそらく、二人とも地震災害に関わる人だからでしょう。ソプラノの並河寿美さんは神戸出身。小さい時に間違いなく阪神大震災を経験しているでしょう。そしてテノールは福井 敬。彼は私も好きな声楽家ですが、ナポレオン・マーチの部分で声が出なくなっている部分があります。そんなことをする人ではないのです。恐らく感極まった部分があったのだと思います。なぜなら、彼は岩手県の出身だからです。

しかし、その残念な部分を差し引いても、この演奏は本当に素晴らしいです。各楽器の音一つ一つが聞き取れる日本のオケの演奏など、そうそうある話ではありません。それはアンサンブルが秀逸である証拠であり、しかも高いレヴェルで実現されていないと聴こえないものなのです。

端整(第4楽章フェルマータは6拍なので決して爆演ではない)なのに、熱いものがこみあげてくる、しっかりとクライマックスもある演奏・・・・・

これを聴いてしまったら、ほかの演奏が聴けなくなるかもしれません。

当日この演奏に関わったすべての方に、感謝!その魂の演奏、被災地へ届きますように!




東北関東大震災 被災者支援チャリティー・コンサート
ズービン・メータ指揮/NHK交響楽団 特別演奏会

並河寿美(ソプラノ)
藤村実穂子(メゾ・ソプラノ)
福井 敬(テノール
アッティラ・ユン(バス)
東京オペラシンガーズ
ズービン・メータ指揮
NHK交響楽団
平成23(2011)年4月10日、東京文化会館・大ホール



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