かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハイドン交響曲全集30

神奈川県立図書館所蔵CDハイドン交響曲全集の今回は第30回目です。第92番「オックスフォード」、協奏交響曲、第93番をとりあげます。

今回も以下のサイトとウィキを参照しています。

ハイドン交響曲
http://www.kanzaki.com/music/mw/sym/haydn

必ずしも順番とは言い難いラインナップですが、交響曲は順番になっているのが特徴です。ちょうど、この一枚には「パリ交響曲」期の最後の曲と、「ザロモン・セット」期の最初の曲が収められているからです。番号順では、そういったことになるのですね。

私としましては、協奏交響曲交響曲として扱っていいのか、という疑念がありますので、この全集を高く評価をしてはいるものの、この編集はどうなのだろうと思います。

前にも何度か言及している協奏交響曲ですが、いわゆるこれって、端的に言えばロマン派のヴィルトォーソ協奏曲のことなのです。シンフォニア・コンチェルタンテなんて名称(だからこそ日本語訳では「協奏交響曲」なのですが)がついているからこそおかしくなるんですよね。

この時期のハイドンは、すでに作曲する交響曲は4楽章制のみです。そんな中で、「交響曲」としてわざわざ何の目的で3楽章制を取る必要があるのかということなのですね。

もし、ハイドンの協奏交響曲交響曲のカテゴリーに入れるのであれば、当然ですがハイドンのものよりも古い、モーツァルトのものはどう取り扱うのでしょう?

そのあたりが、いまだ理解し得ていません。

さて、楽曲および演奏と参りましょう。まず第92番「オックスフォード」です。
http://www.kanzaki.com/music/perf/hyd?o=Hob.I-92

1789年作曲で、名称の由縁についてはウィキのほうに詳しい説明が出ています。

交響曲第92番 (ハイドン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC92%E7%95%AA_(%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3)

あくまでもこの曲は「パリ交響曲」期の最後の作品で、ドーニ交響曲の一つです。オックスフォード大学の表彰式に出るときの最新の交響曲が、たまたまパリ交響曲最後の作品だったというだけなのです。決して次の時期の「ザロモン・セット」期の作品ではありません。とはいうものの、第1楽章は二つとも序奏と第1主題のリズムがよく似ているのは、この時期のハイドンの美意識を見るうえで重要だと思います。

序奏も堂々としていまして、ドーニ伯爵へ献呈されたというよりは、確かにオックスフォードの表彰式で演奏されるほうが似合っているかもしれませんね。それでも、第4楽章の主題展開部の転調にはハイドンらしい茶目っ気がたくさん含まれています。

次に、協奏交響曲です。
http://www.kanzaki.com/music/perf/hyd?o=Hob.I-105

協奏交響曲 (ハイドン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%94%E5%A5%8F%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2_(%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3)

両者の説明からは、なぜこの曲が交響曲のカテゴリーに入るのかの説明がなされていないと思います。作曲年は1792年ですから、すでにモーツァルトがなくなっているんですね。ハイドンだから古い、のではなく、ハイドンでも時代はベートーヴェンと一緒だ、という意識でこの時期は見ていく必要があると思います。

その視点から言いますと、私は交響曲のカテゴリーとして第105番にするのはいささか乱暴すぎると思っています。ハイドンがそうであったように、この時期の交響曲とは、ソナタ形式を備え、急〜緩〜舞〜急の構成を持つ4楽章形式の曲であり、協奏交響曲のように3楽章制は取りません。さらに言いますと、この曲はまずオーケストラによって導入部が演奏されて、おのおのソリストが入ってくるという構造になっており、その点からもこの曲は交響曲とは言い難いのです。これはあきらかに協奏曲の構造ですから。

もし、カテゴライズする一つの要因としては、モーツァルトが晩年、いくつか交響曲を3楽章で作曲しているという点でしょうか。ただ、今まで私が調べ見てきた範囲でいえば、3楽章制の交響曲は何かの序曲としての役割で、3楽章制としては協奏曲のほうが位としては上であるということなのです。

そういったことからしますと、この曲は私は好きなのでとてもありがたい演奏ではあるんですが、交響曲としてカテゴライズするのはどうなのかなあと思います。

特に、モーツァルト研究者たちはこのジャンルを交響曲とは見ていません。むしろ協奏曲の一つとして認識をしています。ウィキでは交響曲の一種としていますので、相違がありますね。

協奏交響曲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%94%E5%A5%8F%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2

もともと、交響曲も協奏曲も3楽章制だったわけで、その違いはズバリ、ソリストがいるのかいないのかですから、その意味では協奏曲のジャンルの一つとして認識をするほうが、協奏曲の歴史を見るときに理解しやすいのではないかと思います。

私はむしろ、協奏交響曲は当時の交響曲と協奏曲が分化していく過程における、一つの独立したジャンルと考えています。

このハイドンの協奏交響曲は4人のソリストが存在します。楽器も弦と管があり、まるでダブルソナタをオーケストラと一緒に演奏しているかのようです。しかしあくまでも、古典派の会話する協奏曲の範疇を超えることはありません。この演奏でもそれは徹底されていまして、でも、4つの楽器が競い合う部分もあるわけなのです。

それが織りなす音楽を素直に楽しめる作品だと思います。編成も時期としては「ザロモン・セット」期ですので大きいですし、ハイドンの音楽の円熟味を思う存分楽しむことが出来ます。

最後に第93番です。
http://www.kanzaki.com/music/perf/hyd?o=Hob.I-93

交響曲第93番 (ハイドン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC93%E7%95%AA_(%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3)

ウィキではチェンバロの言及がありますが、その言及通り、前の期くらいからはこの演奏でもチェンバロは全く聞こえてきませんし、そもそも常に参照しているサイトではすでに編成からも外れています。ウィキの言及通り、ロンドンの聴衆にハイドンを紹介するためと考えていいと思います。そもそもチェンバロは編成になくても入れて構わないのです。バロック期では通奏低音と言えばチェンバロが主ですが、チェンバロの場合ほとんど演奏は即興演奏と言っていいのです。和音だけ合わせていけばいいので、特にこの時代は必要とされていません。ですので、指揮する代わりに入れたという推測は成り立つわけなのです。

堂々たる序奏から繰り出される音楽は、ハイドンの音楽が円熟期に入ったことを確実に教えてくれます。

さて、これも二つのサイトでは見解の相違が見受けられます。私としては上記サイトの説を取り、説明としてはウィキを採用する、というスタンスです。ウィキは一覧の説明がかなりいい加減だと思いますので・・・・・なぜ、新しい作品のほうが古いという記載になるのかが、私には理解できません。

その点では、常に参照しているサイトはすっきりしています。

演奏ですが、実は協奏交響曲はすでに聴いているピリオドのものよりも以前は好きではなかったのです。しかし最近、このモダンもとても好きになりました。よくよく聴きこみますと、とても端整で奇をてらわないその演奏は、とても素直に心に響いてきます。

交響曲も、疾走感を持ちながらも冷静さがあり、ハイドン先生のにやりとした顔が浮かんできそうです。アンサンブルも素晴らしいですし、この全集はやはり再評価すべきだと思います。だからこそ、全集を一つ一つ取り上げているわけなのですが(ひとくくりにしてもいいのですから)。

その点でも、県立図書館がピリオドを全集で集めず、モダンのみというのは、予算の関係もあるでしょうが、私は好感が持てる姿勢だと思います。

ただ、できればピリオドもそろえると、図書館法に基づく収集をしているなという感じになるのですけどね。



聴いている音源
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
交響曲第92番ト長調「オックスフォード」Hob.I.92
協奏交響曲変ロ長調Hob.I-105(ヴァイオリン、チェロ、オーボエファゴットのための、交響曲第105番)
交響曲第93番 ニ長調 Hob.I-93
イシュトヴァン・エングル(オーボエ、協奏交響曲
ラズロ・バラニャイ(バスーン、協奏交響曲
イゴールオシム(ヴァイオリン、協奏交響曲
ゾルタン・ラクツ(チェロ、協奏交響曲
アンタル・ドラティ指揮
フィルハーモニア・フンガリ



このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。