今回のマイ・コレは、ブカレスト・フィルのブラ4とハンガリー舞曲です。
先週、第2番と第3番の演奏をとりあげましたが、この第4番もとても素晴らしいアンサンブルです。
ブラームスの交響曲と言いますと、実はウィーン・フィルが初演というケースが多いのですが、かつて同じ帝国であったハンガリーも、そのオケの実力たるや、これを聴きますと侮れません。
そして、実はこの第4番は初演はウィーン・フィルではないのです。そのせいなのでしょうか、この曲が一番演奏がうまいなと思います。
ブラームス:交響曲第4番ホ短調Op.98
http://www.kk.iij4u.or.jp/~takuya/bra4.html
さて、今回は紹介のサイトでウィキをとりあげていません。その理由は第4楽章にあります。ウィキでは第4楽章で使われている変奏曲形式を「シャコンヌ」と説明していますが、正確にはパッサカリアです。その点の説明が上記サイトのほうが丁寧だったので、こちらを採用しました。実際、私が持っているCDのブックレットでも、シャコンヌではなくパッサカリアです。
パッサカリア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%B5%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%A2
シャコンヌ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%8C
ブラームスは前回も取り上げたように、実は古典派以前の作曲家が取り上げた題材を自分風にアレンジして作曲をするということを、特に晩年やっています。対位法やこのパッサカリアなどがその代表例ですが、ベートーヴェンの重圧を感じていた彼ですが、逸れ以前の作曲家の題材を取り上げるときにはとても生き生きとした音楽となっています。
とはいうものの、この曲はブラームスの晩年の作品となりますので、それなりにくらーい音楽にはなっていますが。でも、ところどころに抜けるような青空が広がるのですから、一概に「暗い音楽」と決めつけるべきではないと思います。
そのコントラストが本当にこのオーケストラはうまい!そしてそれを最上質のアンサンブルで表現しているのです。それが何とも心をわしづかみにするんですよね〜。
その点で、このオケはとても生き生きと演奏をしていて、その分第2番や第3番の演奏と比べると、細かい点ですが精緻な点が素晴らしいのです。
その分、私などは心が乱れてしまうこともあるんですけどね・・・・・だからこそ、第2番や第3番のほうが好きという点もあります。
逆に言えば、それだけこの曲は地味ながらエネルギーを持っているんですね。ワーグナーの音楽がもてはやされる中、自分の立ち位置をしっかりと構築して作曲をし続けたブラームスの、頑固で一途な姿勢が見え隠れします。そのせいでしょうか、とてもストレートにブラームスの静寂からいずる「覚悟」というものが伝わってくるんですね。
ブラームスさん、私の心を揺さぶらないで・・・・・
思わずそう言いたくなるような演奏を、このオケはしてくれています。
それが一転、カップリングのハンガリー舞曲集では、その生き生きとした演奏が素晴らしい快活な演奏に変わるのですから、たまりません。ハンガリー舞曲がもつ歴史的な影というものすら吹っ飛んでしまいます。
ハンガリー舞曲集は、実はこの第4番とは好対照で、若き日のブラームスの、熱き血潮ともいうべき情熱が作曲させた作品です。1848年、ハンガリーで動乱(オーストリア帝国からの独立運動)が起きます。その時にはロシアとオーストリアに鎮圧されたのですが、その時、多くのナショナリストがハンブルクへとのがれてきたのです。それがブラームスとハンガリーのロマ音楽の一つ、チャールダ―シュとの出会いでした。
ブラームスはその独特のリズムにかなり刺激を受けたようで、一生懸命に採譜をして、ピアノ連弾用に編曲したのが、このハンガリー舞曲集です。それをさらにピアノ独奏用に編曲。それは評判だったので、さらには管弦楽用にも編曲したのが、カップリングの曲です。そのうち、ブラームス本人の編曲は3曲で、そのほかはマルティン・シュメリングの編曲です。
しかし、この中で一番有名なのが、シュメリングが編曲した第5番なのですから面白いものです。ブラームスの編曲もけっこういいのですけどね。
この舞曲は本当に人気になったことから、ドヴォルザークのスラヴ舞曲の作曲へとつながっていますし(ブラームスの助言による)、その後いろんな作曲家を刺激したのですが、もともと、そのきっかけはハンガリーの独立運動であることはあまり知られていません。
ヨーロッパの歴史風景 近代・現代編
西暦 1849年、ハンガリー独立運動がハプスブルク家によって押し潰された。
http://www.europe-z2.com/kindai/ad1849hu_n.html
こういった歴史が実はこの曲の根底には流れているということは忘れてはならないと思います。そのことを想起させるのが、オケの第4番からは一転のリズミカルで生き生きとした、正確なアンサンブルです。アインザッツの強さも素晴らしく、彼らがこの曲に込めた気持ちが伝わってきます。
ブラームス自身はそれほどナショナリズムというものに執着していた人ではありませんでしたが、かといって若き青年であったブラームスが無関心だったとは思えません。何しろ、レイクエムをドイツ語の歌詞で作曲したくらいですから(ドイツ・レイクエム)。そういった彼自身がもつごく普通のナショナリズムが、他国の土着の音楽へと目を向けさせたと考えていいと思います。
それを全くナショナリズムが高揚しないような、誰でも楽しめる作品へと昇華させるところが、いかにもブラームスらしいと私は思います。
ラフの時にも言いましたが、そういったソフトなもののほうが、伝播力は強いのです。このオケはそういったことまでよく知っていると思います。
聴いているCD
ヨハネス・ブラームス作曲
交響曲第4番ホ短調作品98
ハンガリー舞曲集(管弦楽版)
クリスティアン・マンデール指揮
「ジョルジュ・エネスコ」ブカレスト・フィルハーモニー管弦楽団
(BMG Arte Nova BVCC-6060)
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