かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト交響曲全集10

今回の県立図書館所蔵CDは、マリナー/アカデミーによるモーツァルト交響曲全集の第10集、実際は後期交響曲集の第4枚目となります。集録されているのは第33番から第35番までです。

第33番は1779年7月9日にザルツブルクで完成された彼の真作です。4楽章形式をとる堂々たる交響曲です。しかも、第1楽章がとても長いという古典美あふれる曲でもあります。このあたりから彼の作風はいわゆる私たちが好んで聞いている彼の作品に出てくる流麗な旋律とドラスティックな転調というものが前面に出てくるようになります。

トータルの所要時間も30分近くと、規模から言いましてもハイドンと遜色ないものとなっています。音楽的にはハイドンを超えたのでは?と思うくらいです。ところが、この曲は本来4楽章ではなく、3楽章だったのです。全く4楽章で違和感ないのですが、そこが彼の音楽性の素晴らしい点でしょう。第3楽章のメヌエットはウィーンに出てから、恐らく1785年に加えられたものだろうと想像されています。

で、次の第34番は3楽章なのですよ、これが。1780年8月29日と、第33番から1年以上経っているにも関わらず、相変わらず彼は3楽章なのです。事典によりますと、3楽章はザルツブルクの愛好家が好んだといいますが、果たしてそれだけが理由なのでしょうか?それなら、彼に4楽章の曲を書かせて、ザルツブルクハイドンと言わせしめてもよかったと思うのですが、実際はそうしなかったわけです。

このあたりに、彼の立場というものが見え隠れします。ハイドンは言わずと知れたエステルハージ家に奉仕できるだけの人材である一方、モーツァルトは才能がありエステルハージ家に相当するような場所につかえることができたはずだと思いますが、それだけの立場ではないと判断されていたとしか考えられません。そして、ザルツブルクにおける交響曲の作曲はこの曲を最後に終わり、彼はついにウィーンに出ることを決意します。

そして作曲されたのが、第35番「ハフナー」です。これは最初から4楽章としてかかれたものです。1783年3月に完成し、その月に初演されています。ハフナーと呼ばれるのはこの曲を作曲するきっかけとなったザルツブルク市長の息子ジークムント・ハフナーに由来するもので、彼は父レオポルトの要請でこの曲を書き上げることになります。当時「後宮からの誘拐」などの大作の作曲に追われているさなかで、作曲の筆も遅めになったとはいえ、そんな中で堂々たる4楽章の曲を書くというのは、彼が以前からその形式を書きたくて準備していた証拠でもあります。

さて、これで4楽章で行くかと思いきや・・・・・そうではないんですよね〜。詳しくは次回述べますが、4楽章の交響曲の作曲も含め、新天地ウィーンへとやってきた彼ですが、たしかにピアニストとしては絶大な人気を博しましたが、交響曲の筆はますます遅くなっていき、3楽章の曲も作曲せざるを得なかったのです。理想と現実の差を彼はまざまざと見せつけられることとなります。そして彼は、自立とはなんぞやと自分自身に問いかけてゆくのです。

親元から離れるわけですから、本来ハフナーを作曲した時期には自立しているといっていいはずなんですが、けれど彼は父との関係で悩むんですね。そこで彼は精神的な自立という問題にぶち当たるわけなのです。このハフナーからはそんな気持ちはみじんも感じられませんが、しかし確かにだんだん彼の音楽はその内容が変化してゆくのです。

マリナーはそれを奇をてらわずにアカデミーに演奏させることで表現しています。だからこそ、なんだか彼の気持ちというのが伝わってくるように思います。とてもシンプルだからこそ伝わるもの・・・・・私も見習いたいです。

長々と書けばいいってもんじゃないですねー。でも、まあそれが私の特徴でもありますが、しかしそれでももう少し工夫はできるはずだと、モーツァルトの作品を聴くたびに考えさせられます。それも、マリナーがシンプルに演奏させているが故です。

そうはいっても、実は細かい点ではとても特徴ある演奏をしています。それは、高い音ではフォルテにし、低い音ではピアノにするという、モーツァルトの時代のスタンダードをきちんと表現している点です。これがきちんとできないオーケストラは山ほどあります。そして、それは今でも本場ヨーロッパではスタンダードです。

ですから、モーツァルトが振れない指揮者は相手にされませんし、音楽家としては致命的です。私たちが指揮者を論ずる場合、過去にその指揮者はモーツァルトを振っているかという点に注目しますと、また面白いでしょう。コンクールはもちろん、歌劇場たたき上げであっても、モーツァルトを振っていないと相手にされない・・・・・それが本場なのです。



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
交響曲第33番変ロ長調K.319
交響曲第34番ハ長調K.338
交響曲第35番ニ長調K.385「ハフナー」
サー・ネヴィル・マリナー指揮
聖マーティン=イン=ザ=フィールズ教会アカデミー(アカデミー室内管弦楽団


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