かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト交響曲全集9

今回の県立図書館所蔵CDは、モーツァルト交響曲全集の第9集で、実際は後期交響曲全集の3枚目となります。マリナー指揮、アカデミー室内管です。

集録は第29番から第32番までで、いよいよモーツァルトらしい作品が並んでくることとなります。

第29番は1774年4月6日の成立ですが、実は前回とりあげた第28番より前なのです。第1楽章はもしかすると聞き覚えのある方も多いのではないかと思いますが、それくらいこの第29番は演奏機会も多い作品です。実はそれはモーツァルト自身もそう思っていたようで、1783年1月4日の手紙にはウィーンで演奏されたとの記述があります。堂々たる4楽章制ですし、音楽もモーツァルトが好んだ転調が完全に現れており、下降音形も現出しています。まさしくモーツァルトの音楽スタイルが完成されつつあると言っていいでしょう。

規模としても、演奏時間が20分ほどと大きくなっていますし、だんだんモーツァルトが自信を深めていっているのがよくわかります。

第30番は1774年5月5日にザルツブルクで作曲されたものです。モーツァルトとしては幾分インターバルが長いかなという印象です。第29番が4月6日。ほぼ一か月後です。もう少し短いものもあります。それだけ、彼はいいものをじっくり作りたいという気持ちになっていると考えられます。これも4楽章ですから、その意気ごみを感じる曲です。第1楽章はモルトアレグロ。そう、第40番と一緒なんですね〜。これは結構早めのテンポです。かといってものすごく早いって感じではないんですが、通奏低音部はかなり早いパッセージで演奏されています。ん?マリナーさん、それだと第40番と矛盾しません?

まあ、それは置いといて、いずれにしても4楽章の堂々たる交響曲となっていて、決して何かの序曲ではなくなっています。それでいて転調も豊かで自然です。

第31番は1778年6月12日と第30番から4年もたっていますが、実はこの間に第28番と以前ご紹介したニ長調K.196+121とハ長調K.208+102の3曲が入ることとなります。それにしても、4年の間にたった3曲というのはちょっと少なすぎます。恐らく宗教曲に忙殺されていたためとは思いますが、まだまだ新たに彼の作品として出てくる交響曲がありそうです。そんな時間が経ってから作曲された第31番はなんと3楽章制。「パリ」という名がついていますが、それはパリで作曲されたからですが、そのフランス風を意識したのか、きちんとした3楽章になっています。第1楽章の主題の繰り返しなどを見ますと、あまり序曲として作曲している感じではありません。もし使ったとしても演奏会序曲としてという感じです。それは全体で約20分ほど演奏時間がかかることからしても明らかだと思います。3楽章制とはいえ、オペラの序曲としては考えていないでしょう。その点からも、彼の自負というものを感じます。ただ、第2楽章は冗長との批判を受けて(現代からしますと決して長くないんですが)、ほぼ半分の演奏時間にしたものも作曲していて(パリ初版)、それも収録されていますが、のちにモーツァルトは初めのものへ戻しています。どちらも素晴らしいもので、以前ピアノ協奏曲で言及したような不自然さはないです。が、やはりモーツァルトは初めのものを気に入っていたということだと思います。ここに彼の「仕事師」としての類まれなる才能を見ることができると思います。

しかも、この曲は彼のアジャスト能力の高さも物語っていて、当時フランスではアレグロで始まった曲は終楽章でアレグロとなり、それをトゥッティ(全合奏)で始めるという習慣がありました。それをさっと入れるだけでなく、実際はピアノで初めて、8小節後にフォルテにするというびっくり箱をやってのけています。単なる天才ではありません。とても繊細でサーヴィス精神旺盛で、ある意味相手の要求に対して真面目であるともいえるでしょう。

第32番は1779年4月28日にザルツブルクへ帰ってきて作曲されたものですが、今度は3楽章制でしかもつながっているという、まさしくシンフォニアとなっているのです。何かの序曲に転用するつもりで書かれたのは間違いなく、実際多くの学者がそのように考えています。わたしもその考えに賛成です。とても堂々とした音楽であることもそうですが、ト長調という調性もそれを物語っていますし、演奏時間が8分ほどというのもそれを裏付けているように思います。しかし、そうであるのにもかかわらず、この作品はバロック的な作風から明らかに古典派へと移行したものと学者では受け止められていて、ファゴット、チェロ、コントラバスが個々に動いているというのです。単なるシンフォニアではない、ということになろうかと思います。もしかすると、ベートーヴェンの第5番や第6番は、この第32番を念頭に置いて作曲されたものかもしれません(あるいは、この楽譜を研究して)。

さて、では演奏はと言いますと、もちろん素晴らしいのですが、やはりアレグロらしいそのテンポを見てみますと、なぜ第40番だけはゆったり目で入っているのかがやはり疑問に思えてきます。確かにそう演奏しますと単なるアレグロでは済まないなとは思いますが、かといって指示は「モルトアレグロ」だけですし、古典派の演奏習慣から考えましても、遅すぎるようにこの第8集を聴いても思います。いや、これを聴いたからこそ余計そう思うのです。

第40番だけでも、いろんな演奏を聴く必要があるようですね。少なくとも、私はモーツァルトから「マッケラスも聴いてみたら?」と言われているような気がしてならないのです。「そうしたら、僕の気持ちがもっとわかるかもしれないよ!」と。

うーん、ヴォルフガング、そこまでお金が回らないのだよ!君のように身代をつぶしてまで僕にはできないからねえ・・・・・どうしたらいいのかね?

なーんて、訊いてみたくなりますね。



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
交響曲第29番イ長調K.201(186a)
交響曲第30番ニ長調K.202(186b)
交響曲第31番ニ長調K.297(300a)「パリ」
交響曲第32番ト長調K.318(序曲)
サー・ネヴィル・マリナー指揮
聖マーティン=イン=ザ=フィールズ教会アカデミー(アカデミー室内管弦楽団



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