かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト交響曲全集6

今回の神奈川県立図書館所蔵CDは、マリナー/アカデミー管のモーツァルト交響曲全集の第6枚目となります。正確には前期交響曲集の最後の一枚ということになりましょう。

その最後の一枚は、特に注目すべき一枚であると思っています。番号付きはたった一曲、後は番号なしとなっているのです。

まず1曲目の番号付である第20番(真作)は、1772年7月にザルツブルクで作曲された4楽章形式の交響曲です。事典によりますと、いろんなことを試している曲で、この曲でもモーツァルトPDCAを回しているという感じがします。確かに、古臭い音楽の中になにか新しいものを入れようとしているのを感じます。

ハイドンのような音楽を目指しながら、実際はもっと別な音楽を志向し始めた彼の心のうちが見て取れるようです。

第2曲目の交響曲ニ長調K.126+161/163(141a)(真作だが成立年不明、旧表示第50番)は1771年から72年にかけて作曲されたとされています。3楽章形式で各楽章がつながっているのも特徴なのですが、実は第1・第2楽章はもともと劇的セレナータ「シピオーネの夢」序曲と終曲で、それに第3楽章(K.163)を付け足したものです。それでいて全く遜色ないのは素晴らしいです。まるで最初から一つの曲だったかのようです。ただ、第1楽章は本当にモーツァルトの何かのオペラの序曲そっくりです。

第3曲目も交響曲ニ長調(旧表示第48番)なのですが、これにはケッヘル番号が振られていません。偽作?いえ、モーツァルトの真作なのですが、実際に交響曲として成立したかどうかがわからないのです。第3楽章の直筆譜に他人の手で「アルバのアスカーニオ」のシンフォニアにつかわれたと記載があるだけなのです。つまり、上記のようなオペラの曲をもとにした交響曲であろうということで交響曲にジャンル分けされていて、マリナーがそれに準じてとりあげたというものです。ただし、新全集では交響曲としてまともには取り扱われていません。しかし、交響曲としては前曲よりははるかにらしいものではあります。

第4曲目は交響曲ニ長調K.196+121(207a)で、これももともと3幕のドランマ・ジョコーソ「偽りの女庭師」K.196に使われたのち、交響曲へと改作されたと推測されています。その時期はわかっておらず、そのため番号が付けられていません。これも3楽章で、この曲ははっきりと3つに分かれていますが、最終第3楽章はオペラにつかわれたであろうということすら推測になっています。

第5曲目は交響曲ハ長調K.208+102(213c)。これももともと2幕の音楽劇「羊飼いの王」K.208序曲とアリア、そして交響曲のフィナーレK.102であって、恐らくオペラから改作したうえで最後第3楽章を別に付け足したものと推測されています。そしてもちろん成立年も不明で、おそらく1775年〜76年とされています(75年に第2楽章まで、第3楽章が76年かもと推定)。そしてこれも3楽章ありながら連続しているというものです。

こう聞いてきますと、この時期の彼の交響曲の要請がオペラの序曲からとられていることからも、何かの行事の開始を告げるような役割を果たす交響曲が主体であるということが言えるかと思います。それはモーツァルトの才能を買っているようで、卑下もしているということの証明でもあります。この場合の「卑下」とは、音楽家の地位のことではなく、音楽界での彼の位置づけとして、という意味です。堂々たる4楽章は大作曲家と言われる人たちしか作れず、彼には3楽章形式の軽いものしか要請されない・・・・・4楽章で作っても、それは実験的なものに終始する・・・・・

このことから、私はハイドンモーツァルトという流れではない、という意識で最近は聴くようにしています。もっとモーツァルトが長生きしていれば、恐らくそれで正しかったのではと思いますが、実際にはモーツァルトは実験で、ハイドンモーツァルト)→ベートーヴェン、という図式が正しいのだなと思っています。

もちろん、マリナー/アカデミーの演奏が素晴らしいせいか、彼の音楽は決して実験に終わっていませんが、ただ、ハイドンの音楽がモーツァルトに「引き継がれた」ものではないということが、聴きますとわかるのです。やはりそれはこのコンビがなせる業、なのではないかという気がします。奇をてらわない端正な演奏。それから紡ぎだされる美しい音楽。それがすべてを物語っています。

このあたりから、私ははっきりとハイドン交響曲が聴きたいと本気で思ったのは間違いありません。



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
交響曲第20番ニ長調K.133
交響曲ニ長調K.126+161/163(141a)(劇的セレナータ「シピオーネの夢」序曲と終曲)
交響曲ニ長調
交響曲ニ長調K.196+121(207a)(「偽りの女庭師」と終曲K.121)
交響曲ハ長調K.208+102(213c)(2幕の音楽劇「羊飼いの王」と終曲K.102)
サー・ネヴィル・マリナー指揮
聖マーティン=イン=ザ=フィールズ教会アカデミー(アカデミー室内管弦楽団) このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

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