かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:シャイ―のカルミナ・ブラーナ

今回のマイ・コレは、カール・オルフ出世作カルミナ・ブラーナ。シャイ―指揮ベルリン放送交響楽団他です。

この曲はもちろん興味があったからこそ買ったのですが、私としては珍しく現代音楽の時代に属する作曲家のCDとなります。そのきっかけは、N響定期演奏会でこの曲を取り上げていたからであり、それもたまたま偶然だったのです。

このCDを買う数年前、まだ大学生だったころ、BSのN響定期演奏会の番組を録画することにはまっていた時期がありました。その時にたまたま録画してあったのが、実はカルミナ・ブラーナだったのです。その衝撃たるや、今でもはっきりと覚えています。

その録画を見たのが、実は何年か経ってからだったのです。こんなものを録画してあったかという点と、その音楽の新鮮さに驚きを隠せませんでした。

この曲の最大の特徴は、現代音楽でありながら、リズムと旋律重視の音楽である、ということにあります。しかし、決まった形式があるわけではありません。音楽としてはとても保守的でありながら、形式としては自由であるという点こそ、この曲の特徴であり、また魅力なのです。

N響定期はブロムシュテットでしたが、その演奏は今でもファンの間では語り草になるほどの名演。私も興奮した人間の一人です。では、それをCDで聴きたいとなると、このN響定期の演奏が基準となって、なかなかいいものがないのです。このシャイ―はいくつか推薦を摂っていたこと、そしてシャイ―はチャイコフスキー交響曲第5番でいい印象を持っていたということもあって、チョイスしたのですが・・・・・

なかなか、好きになれません。いや、今改めて聴きますとそれほどダメというわけでもないのです。生き生きとしたリズム、全体から薫るエロティシズム、それでいて健康的な部分もありと、この曲の魅力は十分表現しています。しかし・・・・・

私がカルミナ・ブラーナで好きな曲が二つあります。まずは第12曲「私はかつて湖に住み」です。白鳥が私は昔は湖で自由に生きていたが、今では焼かれて食事に饗されるしまつだと嘆く歌です。白鳥を擬人化しているだけでも抱腹絶倒ですが、その上焼かれてしまっているにも関わらず、自分はもう食べられてしまうと嘆くのですよ!もうこれが笑わずにいられましょうか!しかし、それだけ表現力が要求される曲でもあり、音域もカウンターテナーです。カルミナ・ブラーナ自体、もともと中世の教会の歌曲集からとられているのですが、その時代をかなり意識した音楽となっているのは間違いありません。そのことがこの曲を抱腹絶倒のものであると同時に、高い表現力が要求される超一級の音楽にしています。

続く第13曲「わしは僧院長様だぞ」は、バスによって歌われる僧院長を笑い飛ばす内容。酒の席で酔っぱらった僧院長をとにかくおかしく描いていて、どれだけ酔っぱらって「お前ら、控えおろう〜」とやれるかがカギとなります。当然演奏者は素面ですから、これもかなり高い表現力が要求されます。表現力ではなくこの2曲は「演技力」が必要だと言ってもいいでしょう。素面で酔っ払いを表現しなくてはいけないのですから。

それが、ちょっと不足なのですね、この演奏は・・・・・

もちろん、それはこの曲が決して簡単な曲ではないということの証明でもあるのですが、私はカルミナ・ブラーナの演奏を判断するとき、その2曲の出来で判断しますので、それからしますとこのシャイ―は少なくともN響定期を超えてはいません。

それだけ、私にとっては、N響定期の衝撃が大きかったという証左でもあります。十数年たって、ようやくこれもいいかな?と思えるようになりました。それは、実は歌ったからなのですが・・・・・

何事も、「百聞は一見にしかず」だと感じさせられた一枚です。



聴いているCD
カール・オルフ作曲
カルミナ・ブラーナ
シルヴィア・グリーンバーグ(ソプラノ)
ジェイムズ・ボウマン(カウンター・テノール
ティーヴン・ロバーツ(バリトン
ベルリン国立大聖堂少年合唱団
リッカルド・シャイ―指揮
ベルリン放送交響楽団・合唱団
(LONDON POCL-2412)