かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:BCJ バッハカンタータ全曲演奏シリーズ39

今月のお買いもの、今回は毎度おなじみの〜、BCJでございます(決してちり紙交換ではありませんよ、はっつぁん)。バッハのカンタータ全曲演奏シリーズ第39集です。

このアルバムではカンタータ第68番、第175番、第28番、第183番、第85番(収録順)の5曲が収録されています。

まず、第68番「げに神はかくまで世を愛して」BWV68です。1725年5月21日に演奏されたもので、この日は聖霊降臨節第2日に当たります。何回かこのブログでもご紹介している女流詩人ツィグラーが詩を書いていまして、彼女が付けた詩のうち一番有名なものになります。コラールは最後におかれ、それとは別個の合唱を冒頭においていまして、コラールカンタータのようでそうではないという形式です。

でも、そんな形式崩れなど吹き飛ばすかのように、曲は善き牧者としての為政者をイエスになぞらえて説く内容です。そして、それはあくまでも美しくやさしい音楽で満たされています。バッハ自身が自らに厳しかったということでしょう。まるで「百年兵を養うは、ただ平和を維持するためなり(山本五十六)」のようです。

次の第175番「彼は己の羊の名を呼びて」BWV175は同じ聖霊降臨節第3日目用として、1725年5月22日、ライプツィヒで初演されました。これも台本はツィグラーによるものです。本当にこの時期バッハは彼女の歌詞を多用していますね。しかもこれまたかなり厳しい内容で、真の羊飼いとしてのイエス、そして盲目の理性への批判で貫かれています。キリスト教を信じる信じないは別として、私たちは「盲目の理性」ということは、肝に銘じていいのではと思います。

3曲目の第28番「神は頌むべきかな!今や年は終り」BWV28は、いわゆる「晦日」用として1725年のまさしく晦日、12月30日に初演されました。欧米ではクリスマスと言いますと年末行事ではなく年をまたぐ行事ですから、当然行く年を振り返り来る年を願うものです。このカンタータもその内容で貫かれています。まさしく「ゆく年くる年」でして、仏教徒の私としましては、聴いていますと除夜の鐘が聞こえてくるかのようで、身が引き締まる思いです。今年の大みそかはこれでも聴きましょうか!

4曲目は第183番「人々汝らを除名すべし」BWV183です。これも女流詩人ツィグラーの台本でして、その内容もストイック。その純粋さにバッハは惹かれたのでしょうか。私心なくイエスを信じなさいという内容です。まあ、それをカルトだといえばそうかもしれませんが、だからこそ自己犠牲もできるのであって、それを否定してしまうとでは靖国の英霊はどうなの?という誹りはまぬかれないでしょう。この点は十分傾注に値する内容です。1725年5月13日の復活祭第6日曜日用の作品で、実は彼はその前年にも同じテクストでBWV44を書いています。このあたり、敬虔なキリスト者らしい作品です。

最後は第85番「われは善き牧者(ひつじかい)なり」BWV85です。1725年4月15日にライプツィヒで初演されたこの曲も、やはり「魂の牧者としてのイエス」にテーマが置かれています。しかし、ここではそれは甘美なものではありません。むしろ十字架につけられたという「自己犠牲」にその本質を見出しています。これもまた上記山本元帥の言葉となぜかダブりますね。私はこの手の曲を聴きますと、どうしても特攻隊を連想してしまうのです・・・・・それはやはり、バッハが敬虔なクリシチャンであるということが反映された結果、なのかもしれません。

演奏は全体として悪かろうはずがありません。日本の団体と言いましてもソリストは全員欧米人ですし、そのアリアはどれも聴かせてくれます。のびのびとしたその音楽は、私たちに音楽を聴く幸せと、平和の尊さ、そしてそれを護ることの重要さを教えてくれます。さらに、護るために必要な資質とは何かまで考えさせてくれます。上質の教材だと思います。

毎回、BCJのアルバムは考えさせられることばかりです。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第68番「げに神はかくまで世を愛して」BWV68
カンタータ第175番「彼は己の羊の名を呼びて」BWV175
カンタータ第28番「神は頌むべきかな!今や年は終り」BWV28
カンタータ第183番「人々汝らを除名すべし」BWV183
カンタータ第85番「われは善き牧者(ひつじかい)なり」BWV85
キャロライン・サンプソン(ソプラノ)
ロビン・ブレイズカウンターテナー
ゲルト・テュルクテノール
ペーター・コーイ(バス)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(BIS SACD-1641)