かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト交響曲全集2

今回の県立図書館所蔵CDはマリナー、アカデミーのモーツァルト交響曲全集の第2集です。収録されているのは旧ランバッハ、K.Anh214、第8番から第10番、そして第42番と言われるヘ長調K.75です。

このうち、真作と確認されているのは旧ランバッハ、第8番から第10番で、K.Anh214は偽作の可能性もあるが今のところは真作ではないかと言われているもの、K.75は偽作の可能性が高いけれど確認できていないものになります。

モーツァルト交響曲にはこのような「真偽不明確」なものがたくさんあるのです。ですから、かつてモーツァルトの戴冠ミサを単独で取り上げた時に、真逆とも取れるような発言をした、というわけです。これからもどんどんそんな曲が出てきます。

とにかく、この全集を手に取りますとびっくりします。第50番なんて出てきますから、かなりのヲタクでないと「うそだろ!」と突っ込みたくなります。

さて、まず旧ランバッハですが、前回「新」の紹介で述べましたが、これも真偽のほどが二転三転しまして、現在ではこれがモーツァルトの作とされ、新ランバッハはほとんど演奏機会が失われました。何よりそれを印象付けるのが、この旧ランバッハにはケッヘル番号が付けられているのに、新にはつけられていないということです。

ならば、きちんと父レオポルトの作として、新たに番号を付けるべきだと思うんですけどね・・・・・今度はそれすら疑わしいようですが、さて、今後どうなりますことやら。一応、3楽章形式であるということは、申し添えておきます。

K.Ahn214は一応モーツァルト作として新全集に入れられた佳曲ですが、作曲年代が不明なうえ、モーツァルトの作ではないかもしれないとの疑念が払しょくできない作品です。ヨハン・クリスティアン・バッハの音楽との関連が強く印象付けられる作品とは言いますが、果たしてどうなんでしょうか。形式的には4楽章を取っているのでそれはあながちウソではないと思いますが、さて・・・・・

第8番は間違いなく彼の作曲とされているもので、4楽章形式です。この辺りは4楽章形式が多いのが特徴です。これがハイドンであればそれで固定するのですが、モーツァルトの場合、それが行ったり来たりするのが特徴なのです。それから言いましても、4楽章で固定させたのは、間違いなくベートーヴェンであると言っていいでしょう。ただそのベートーヴェンが早くもそれを崩し始めているのも、また面白い現象で、それも実は彼より前の、大バッハの息子たちがやっているという・・・・・

モーツァルトハイドン交響曲を聴きますと、どうしても大バッハの息子たちの作品群へと興味が向かざるを得ませんね。

第9番も4楽章形式で、すでに交響曲としての形式美を持っています。それでいてサロン的な軽さと、オペラの序曲に使っても不思議はないような堂々たるものも備えており、当時の交響曲の概念をうかがわせるに十分な作品です。

第10番では一転、3楽章形式で、なおかつ第1楽章と第2楽章がつながっているという、まるでベートーヴェンのようなことをやっています。明らかにシンフォニアを意識した形式ですね。モーツァルトにはいくつかこの「つながった楽章」をもつ交響曲が存在します。

ですから、彼の交響曲リッピングするときには注意が必要です。「あ、切れてるよ〜」とmp3でリッピングしても、アフターフェスティバルです。え、どういう意味かって、後の祭り、ですよ〜、はっつぁん。WAVでまずやることをお勧めします。その上でファイルでもエンコードできる、例えばCDexなどでmp3へエンコードすることをお勧めします。WAVであれば、フリーウェアの「サウンドエンジン」でつなげることができます。

交響曲ヘ長調K.75は、現在ではかなり偽作の方向へ傾いているようですが、その確たる証拠がないのでまだ全集からはずすことができない曲です。でもこれが4楽章形式の堂々たる曲なんですよね〜。作曲は今のところ第6番より前とされていますが、それにしても堂々としています。どうやら作曲は父レオポルトともささやかれているようで、これは私もレオポルトの音楽も聴かねばなるまい!と考えているところです。

演奏はどれも前回同様の素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれます。それにしても、アカデミーはハイドンのミサ曲と言い、モーツァルト交響曲と言い、歴史的な問いかけをする演奏を残していますね。これは神奈川だけでなく、私は人類共通の遺産ではないかと思っていまして、それだけの素晴らしい演奏を、偽作の疑いがあるものでさえ手を抜かずにしている点に、最敬礼です。



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
交響曲ト長調K.Anh.221(45a)「旧ランバッハ」
交響曲変ロ長調K.Anh.214(45b)
交響曲第8番ニ長調K.48
交響曲第9番ハ長調K.73
交響曲第10番ト長調K.74
交響曲ヘ長調K.75
サー・ネヴィル・マリナー指揮
聖マーティン=イン=ザ=フィールズ教会アカデミー(アカデミー室内管弦楽団