かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:サン=サーンス 交響曲全集1

今月のお買いものは、全部で3つあります。まずは、サン=サーンス交響曲全集をご紹介します。今日はその1枚目です。

収録されているのはイ長調、第1番、そして第2番です。

まず、イ長調。これは番号が付いていません。サン=サーンス15歳の時の作品(ウィキのデータですと1850年「頃」となっていますので、前後するのかもしれませんが)だそうで、13歳でコンセルヴァトワールへの入学が許可された彼らしい、完成度の高い楽曲です。番号が付いていないなんて信じられないくらいです。

全体的に美しく流れる音楽です。後期ロマン派の作曲家としての片りんをのぞかせます。それにしても、これで10代の作品なのか?と驚きを隠せません。

正直、フランス物って避けてきましたけれど、これは素晴らしい作品です。フランスの作曲家も最近好んで聴くようになっていますが、それにしてもその懐の深さを感じざるを得ません。

ただ、多少形式的な美しさというのはどうなのかな?と思います。とはいえ、形式が崩れているわけでもないです。よくよく聞いてみれば形式美も持っているのですが、それよりも流れる音楽でうっとりしてしまいます。

それが修正されたのが、第1番。第1楽章のソナタ形式は本当に美しいです。その上で、音楽が流れていてロマンティシズムにあふれています。フレーズのひとつひとつが美しく、まるで天国か楽園にいるかのようです。さらに、音楽も堂々たるものとなり、筋肉質でしまった音楽です。

特にそれを感じるのは第4楽章で、ファンファーレが鳴り響きます。輸入盤なので解説が英語なのが私としては苦しいところですが、とても熱いものが込みあがってきます。

それは第2番ではさらに顕著です。最初、フーガから始まってその主題がソナタ形式を構成するという、形式的にも個性的な音楽へと変化しているだけでなく、音楽そのものがきびしいものになっているのが特徴です。それもそのはず、イ短調です。ここで彼は短調交響曲を持ってきたというわけなんですね。

この第2番は24歳の時の作品ですが、これで実は彼の残っている交響曲のうち第4作目なんです。驚いてしまいます。どれだけ天才なのか・・・・・それでいて、この人は長生きだったのですが、若いうちにこれだけの作品を引っ提げてしまったら、それは楽壇において重要な立場になるだろうなあと思います。

しかしながら、そんな彼のこれらの曲ですら、当時は前衛的とみなされていたようで、ローマ大賞を二度逃しています。これは前衛的じゃないだろーと思いますが、当時はもっとカチッとした形式美を重んじていたことがわかります。今の私たちにとっては、それ以降の作曲家のほうがよっぽど前衛的ですが・・・・・

フランスという国は実は交響曲の歴史では重要な地域でして、シンフォニアからシンフォニーが生まれるのは実はラテン語圏でして、その一つの国がフランスでした。イタリアで発祥したシンフォニアは、フランスで3楽章の「シンフォニー」へと変化し、その後ゲルマン語圏で4楽章形式へと変化(シュターミッツら)して、このサン=サーンスの時代を迎えています。それから考えますと、サン=サーンスが標榜した「ゲルマン語圏とラテン語圏の音楽の融合」がまさしく彼の交響曲で実現されているといえるかと思います。

音楽的にも、第2番はシューマンの影響を受けているといわれていますが、むしろ私はこの4楽章形式というものこそ、サン=サーンスが実現したかったものなのではないかと思います。それは、これ以後例えばオネゲルなどが再び3楽章形式で交響曲を書いていることから、サン=サーンスがフランス音楽の中では異端だと考えざるをえないからです。それだけ、彼は古典的な音楽を書きながら、意外とやりたいことはアヴァンギャルドなことなのだなあと感じるのです。



聴いているCD
カミーユ・サン=サーンス作曲
交響曲イ長調
交響曲第1番変ホ長調作品2
交響曲第2番イ短調作品55
ジャン・マルティノン指揮
フランス国立放送管弦楽団
(EMI 50999 6 31804 2 8)