今回のマイ・コレはマゼールがウィーン・フィルを指揮した、ベートーヴェンの「運命」とシューベルトの「未完成」です。
まあ、このカップリングはゴールデンコンビなわけですが、私自身そんなカップリングはもっていなかったので、買ってしまいました。
私はなんとなくスウィトナー/シュターツカペレ・ベルリンの演奏に不満な点があったので、それ以降実は「運命」の「自分の好きな一枚をさがす旅」が始まってしまいました。これはその第一枚目ということになります。
今では本当に好きな演奏ですが、当時(17年前)はそれでも不満がありました。それは、繰り返しがないこと。今ではそんなことを気にはしませんが、当時はそれをとても気にしていました。
なぜなら、スウィトナーの運命がペータース版で、繰り返しをきちんとしていたからです。しかし、それは快速すぎました。
確かに、古典派の時代、かなりテンポは速かったようですが、ただ、冒頭の運命パッセージはどうしても速いテンポは抵抗がありました。それが不満をもった理由でもありましたので、繰り返しがあってなおかつその部分をゆっくりと演奏する一枚を探していました。
まあ、だんだんそれは気にならなくなっていきましたし、その条件を満たす演奏はついに見つかったのでよかったのですが、改めてこの演奏を聴きなおしてみますと、本当に繰り返し以外はすべて私が好む解釈でえんそうしてくれているのです。しかも、オケはウィーン・フィル。
失礼なやつですよね〜。こんなにも素晴らしい演奏を、当時は切って捨てました。「繰り返しがない!」がその理由です、もちろん。でも、それにこだわらなくなってから、次第にこの一枚の価値がわかってくるようになりました。
すでにこんなにもいい演奏を持っているのに、どうして顧みなかったのだろう・・・・・・
捨てなくてよかったなあと思います。本当に捨ててしまおうかと考えたこともあった演奏ですが、いまではそれはしなくて良かったと思います。第1楽章の運命主題のフェルマータをきちんと伸ばす部分。第2楽章のゆったりしたテンポとそれによる金管の神々しさ。第3楽章のおどろおどろしさ。そして、第4楽章冒頭での金管が奏でる勝利の音楽。
それを、ウィーン・フィルの超一流のアンサンブルで聞かせてくれているのです。本来ならば、こんな幸せな演奏はないはずなのに・・・・・
でも、それは旅をした結果たどり着いたのだと、今では思っています。
「未完成」はすでに大賀さんの指揮で満足していましたが、逆にウィーン・フィルで聴きたいという欲がでたものでもありました。これがなんとふくよかで、かつ歌っているのでしょう。そのうえで、過度にロマンティックになっていない点が素晴らしいです。シューベルトといいますと歌謡曲と揶揄されますが、少なくともこの演奏ではそれを感じません。
やっとこのような演奏をきちんと受け止められるように自分はなったのだなあと、感慨ひとしおです。
聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第5番ヘ短調作品67「運命」
フランツ・シューベルト作曲
交響曲第8番ロ短調D.759「未完成」※CDの記載による
ロリン・マゼール指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー・クラシカル SRCR 9252)