かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト クラヴィーア協奏曲集2

県立書簡所蔵CDのモーツァルトピアノ協奏曲特集、今回は第2回目です。この第2集には第8番から第10番までが収められています。

今回から、ピアノではなく、クラヴィーアという名称を使うことにしました。ピアノフォルテは音質・性能とも現代のピアノとは異なるためです。

実際、モーツァルト事典でもピアノではなく、クラヴィーアという名称で説明されています。私も、このピリオドのものだけはその名称で語りたいと思います。

一体、オケとクラヴィーアとのバランスはどうなのだろうと、この第2集でも考えてしまいます。そこで一つ浮かんだのは、協奏曲の変遷です。

もともと、協奏曲の構造として、オケとの伴奏部分はそれほどあるわけではなく、むしろオケのみの部分、そして独奏のみの部分と分かれていました。独奏のみの部分のうち、即興で演奏される部分をカデンツァといったわけです。

それが、協奏交響曲と統合され、オケと一緒に演奏する部分が出現し、やがてそれはベートーヴェンで完成されるという歴史です。

このピリオドの演奏は、どうしてもそれを考えながら聴くことになってしまいます。ちょうどモーツァルトの時代は過渡期にあたり、構造としてはすでにベートーヴェンと一緒と言ってもいいのかもしれないほどです(かなり乱暴な言い方になりますけれど)。しかし、カデンツァではない独奏者のみの部分もあるという構造も残っています。

音のピッチの問題は私にとっては些細なことです。それは古楽を聴くときには違うのが当たり前ですし。その私をしても、あれ?って思う点がいくつかあります。その一つが、前回やその前、モダンと比較したときにも述べた「オケとのバランス」なのです。

モーツァルトのクラヴィーア協奏曲はクラヴィーアがオケとかなり対等に渡りあっています。ですから、もっとクラヴィーアが目だっていいわけです。それがところどころそう感じない部分があるんですね。

それは、例えば作曲技法にあるのか、とも考えてしまいます。しかし、和声学の基礎を作ったとも言われるモーツァルトが、あまりにも法則無視をするのかなあ、という気もしています。そのあたりになってしまうと、もう楽典を勉強するしかないでしょうから、すぐにはわからない話になるかと思います。ただ、それであれば事典である程度触れているはずなんですね。

でも、それは全然触れられていない。ということは、特に作曲技法等ではない、ということになろうかと思います。

ただ、一つだけ感じるのは、低音部分ではあまりクラヴィーアは目立たない、ということなんです。もしかすると、ここになぞを解く鍵がありそうです。

やはり、何か書物がほしい・・・・・楽典のほうがいいのかもしれませんし、あるいは解説書でもいいかもしれません。モーツァルトがクラヴィーアの性能を知らないで作曲したとは到底思えません。

例えば、第5番では比較的低い音から始まっていますが、この第8番から第10番までは比較的高音からクラヴィーアは始まっています。それですと、クラヴィーアがたとえオケに負けていても印象が強く残るので、聴くほうとしては集中していきます。ただ、あえてクラヴィーアに注意を向けて欲しいがため、低音部からはじめたとしたら・・・・・

その可能性はあるかもしれないな、と思っています。ただ、それを証明するものはないですし、事典でもそれは触れられていない。ですから、そうだと断定することは非常に危険なわけです。でも、そう感じざるを得ない部分が、この初期の作品群にはあることだけは事実です。

それでも、第10番から様相は少し変化するように思います。フォルテピアノを使ってでも、第10番の音楽はすばらしいものです。特に開始は堂々としていますし、第9番と比べましてもそれは段違いです。ただ、クラヴィーアが2台使われているという点はありますが・・・・・でも、昨日紹介しました第7番の3台は、その後モーツァルト自身の手で2台用に編曲されていることを考えますと、必ずしも台数の多さが理由とは思えません。

このあたりを、もう少し慎重に他の演奏も含めて聴いてゆく必要があると思います。まあ、そういう意味では、やっぱりピリオドは・・・・・と言われてしまっても、仕方ない演奏だろうなあと思います。



聴いている音源
ヴォルグガング・アマデウスモーツァルト作曲
クラヴィーア協奏曲第8番ハ長調K.246
クラヴィーア協奏曲第9番変ホ長調K.271
2台のクラヴィーアのための協奏曲変ホ長調K.365(316a)(第10番)
マルコム・ビルソン(フォルテピアノ
ロバート・レヴァインフォルテピアノ
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
(ARCHIV UCCA9020)