かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付」

今日のマイ・コレは、また第九を取上げます。指揮は藤岡幸夫、オケと合唱はOrchestra&Chor Freudeです。

このCDは買ったものですが、非売品です。え、どういうこと?と仰るかもしれません。これは実はコンサートに参加した人だけに販売したものだからです。

つまり、私はこの演奏会に参加している、ということになります。そうです、私は参加しています。オケではなく合唱団で。パートはファーストテノール、つまりトップです。

この演奏は、藤岡氏の初レコーディングでもあります。当時の彼の若い情熱が今でも伝わってきます。

藤岡さん(とあえて言わせていただきます)の第九は、シャルル・ミュンシュの演奏を模範とするだけあって、かなり速いテンポかつ情熱的な演奏で進んで行きます。前半はよくオケが付いていっているのですが、後半、特に第3楽章のホルン独奏の部分あたりから疲れが見え始めます。第4楽章は合唱団を支えるので精一杯!

でも、全体的にはオケと合唱団ともにアンサンブルがすばらしいなと、今冷静に聴きなおしますと思います。だめなのはソリストですね〜。まあ、仕方がないでしょう。この演奏会、完全に学生の手作りなんですから。

私がこの演奏会に参加したきっかけは、確か前年に渋谷のオーチャード・ホールで第九を聴いたときだったと思います。通常、コンサートに行きますと山のようにチラシが入った袋をもらいますが、そのなかに珍しいチラシが・・・・

「関東の学生が主催する第九の演奏会、合唱団員募集!」

以前、ティファニーの時に述べたと思いますが、高校時代から私は第九を歌うのが夢でした。その夢をかなえるイベントが、来春(当時)東京で行われる・・・・・

当時、悩んだ末、参加を決意しました。サークルの春合宿もありますし、演奏会の時期は実は毎年鎌倉での春の見学会がある時期とも重なっていました。それをこなさせるかどうか、自分でも自信がもてなかったのです。実際、この演奏会の次の日が春の見学会で、鎌倉駅集合が10時でした。前日は打ち上げで散々飲んだ(渋谷からは最終電車でした)のに、さらに翌日も飲み会・・・・・

よくもまあ、飲めない私がこなしたなあと思います。まあ、サークルのクラシック好きの後輩が明日ともに見学会なのに、聴きに来てくれていたということもありました。先輩として恥ずかしい姿は見せられないですから。

この演奏会はいろんな思い出が詰まっているものでもあります。淡い恋もしましたし(残念ながら成就しませんでした)、指揮者とさしで飲んだのもこのときが初めてです。学生オケならよくある話ですよね。指揮者と学生が懇親会という名の飲み会を開くのは。そのとき、何と私は指揮者のすぐ近くに座るという名誉に預かりました。

そのとき、どの指揮者の演奏がすきなのかという話題になって、私は普段はオケの団員という合唱団員とスウィトナーが好きだということで盛り上がっていましたが、藤岡さんが、

「○○(私の本名です)さん、ミュンシュって知ってる?僕はあの人の情熱的でテンポの速い演奏が好きで、そんな演奏をしたいんだ」

と熱く語られたのです。私は恥ずかしながら、当時名前しか知らなくて、いずれ・・・・・と思っていた指揮者です。

となんと、当時でたてのパーソナルCDデッキ(いわゆる、CDウォークマンですね)でその演奏を聴かせてくれたのです!誰がCDを持っていたって?私の記憶が確かならば、藤岡さんです。前にデュトワの時に述べましたが、指揮者ってレファレンスのためにCDをたくさん持っているのです。それを聴きながら譜読みをして、どう演奏するのか決めるのです。勿論、演奏するには通常譜読みから入りますが、指揮者の場合、それを聴くことでどう指揮するのがいいのかを考えるのです。それを熱く語っていただきました。

そのことを他の指揮者からさらにきいて後年知ったとき、私はこの演奏会に出てよかったと思いました。演奏をするためにどんなことが必要なのか、さまざま教えていただくことになったからです。その後社会人になってからの合唱団員として歌うときにどれだけ参考になったかわかりません。

実はこの演奏会、藤岡さんの演奏を聴いた人が思いつきで始めたそうで、開催までにかなり苦労されたそうなのです。ですから、後年私も合唱団の運営に携わったとき、ああ、あの時あの人たちもこんな苦労をしていたんだなと実感することになりました。まあ、それ以上の苦労を結局私は背負い込むことになってしまいましたが・・・・・

今、もし藤岡さんから「第九、合唱団員が足りないから出てくれないかな?」といわれれば、体調がそれほどすぐれるわけではないですが、彼のためになら出るでしょう。第九なら、すぐ楽譜を買って、はせ参じることができます。まだまだ、歌いたい曲です。全然極めていませんからね。

ただ、今までの経験は無駄にしません。「あれ、○○さん、うまくなったねー」とは絶対に言わせるだけの自信はあります。それだけ、歌ってきました。

昨年、事業仕分けに対する反対意見を述べられる場面でテレビに出ていらっしゃいましたが、今度は事業仕分けなどの意見を戦わせながら、でも、ともにいいアンサンブルを作って行けたら、光栄ですね。

現在、藤岡さんは関西フィルハーモニー交響楽団の主席指揮者になっておられます。私が参加した合唱団は、その後自分たちで合唱指揮者を中心に合唱団を作ったそうです。そのとき、私はサークル重視でしたので参加しなかったのですが、それに触発されて、後年地元の合唱団に参加することになるのです。



聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
「エグモント」序曲作品84
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付」
平塚美和(ソプラノ)
三角暎子(アルト)
八反丸善文(テノール
大熊一夫(バリトン
藤岡幸夫指揮
オーケストラ&コール・フロイデ
(合唱指揮:宮里英樹)
(Live Note LN3008)
※本文中でも述べましたが、一般には非売品です。でも、当時3000円しましたね。このレーベル、日本のいろんな団体をレコーディングしている会社で、後年私は名古屋フィルを買っていますし、プロではザ・タロー・シンガーズの演奏を出していて、その演奏会に行ったときにびっくりしました。なんてすごいレーベルが自分の演奏会の記録を作ったのだろう、と。