かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハイドン ミサ曲全集1

今回の県立図書館所蔵CDは、ハイドンのミサ曲を取上げます。今回からしばらく、このコーナーではハイドンのミサ曲が続きます。このCDの指揮はサイモン・プレストン、オケは古楽アカデミー(エンシェント室内管弦楽団)、合唱はオックスフォード大聖堂聖歌隊です。

この演奏はエンシェント室内がオケですから、古楽演奏の走りといえるでしょう。また、聖歌隊ということでソプラノはボーイ・ソプラノになっている点も特徴です。

このハイドンのミサ曲を借りたのは、長年の念願がかなった瞬間でした。合唱団に入っていたころ、実はいつかは歌いたいと思っていたのがハイドンのミサ曲でした。友人と一緒にタワレコで物色したことすらあります。そのときは金銭的な理由であきらめたように記憶しています。

しかし、図書館で全集を見たときには心躍りました。そのため、借りることを即決しました。かつて買うことをあきらめたものが、税金で借りることができる・・・・・・何のためらいがありましょうや!

モーツァルトのミサ曲を聴きますと、どうしてもハイドンのミサ曲へと興味は行きますし、また実際アマチュア合唱団でもハイドンのミサ曲は人気です。構成がしっかりしている点や、規模がバラエティに富んでいる点、古典派であるゆえにハーモニーが美しい点など、魅力的な点が実はたくさんあるのです。

日本は基本的に仏教および神道の国ですから、宗教曲自体あまり取上げられることはないですが、それでもモーツァルトやバッハというのは有名なのです。がハイドンとなるといまいちという点は否めません。ハイドンのミサ曲ほどまたバラエティに富んでいるすばらしい曲もありません。モーツァルトも研究した題材であるということは私たちは知っておいてもいいように思います。

このCDでは番号がついていない曲とついている曲がそれぞれ1曲づつ収録されています。一応、ハイドンのミサ曲は12曲と言われていますが、多作家ハイドンですから、当然散逸している曲も多数あります。どうやら番号がついていないものはそういったものの一つだったようです。それが「天の高きより水を滴らせよ」です。時間にしてわずか8分足らず。とても短い曲で何の目的で使われたかはよくわかっていません。しかし、短いながらミサ曲としての構成はきちんとなっています。ハイドンのいつごろの作品なのか、興味が尽きません。

もう一つは一転長い通常のミサ曲で第3番「聖チェチーリアのミサ」です。これはがっちりとしたミサ曲で、時間も1時間を越えます。これを聴いたときに、いかにモーツァルトが困難な課題を克服したのかがよくわかりました。モーツァルトは長くても30分を超えてはいけないとされたわけです。しかしこの曲は1時間以上です。どうすれば短くできるか、実際悩んだことが手紙に残されていますが、それは本当に想像を絶する困難な作業だったことでしょう。それがハイドンのミサ曲を聴きますと本当によくわかるのです。

そのハイドンのミサ曲は長いのですが筋肉質で、そんなに長いのが全く気になりません。このあたりはさすがヒット・メーカー、ハイドンの面目躍如といったところでしょう。恐らく、この楽譜を見ただけでモーツァルトは絶望の淵に追いやられたことだと思います。それだけこの曲は美しく、構成もすばらしいのです。

ただ、同じ条件であれば恐らく私はモーツァルトの方がもっとすばらしい曲を書いたのでは?と思います。それがミサ曲ハ短調などで垣間見られると思うのですが、残念なことにそれは実現されずに終わってしまいます。ですので、1時間を超える程度の曲ですとすばらしい曲は圧倒的にハイドンが残しているといえましょう(そのほかでは、ベートーヴェンのミサ・ソレムニスまで待たねばなりません)。

こういう曲を取上げるイギリスという国の伝統に対する尊敬の念というのはすばらしいなと思います。それはイギリスでハイドンが活躍したという側面も当然あるでしょうが、彼のミサ曲が必ずしもイギリスで作曲されたわけではありません。それなのにきちんと取り上げ、CDとして残し、後世へ伝える努力を惜しまない点は、私は高く評価したいと思います。だからこそ、このシリーズはベートーヴェンのピアノ・ソナタを同時に借りつつ、粘り強く集めることにしたのです。



聴いている音源
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
ミサ曲「天の高きより水を滴らせよ」Hob.XX�U.3
ミサ曲第3番ハ長調「聖チェチーリアのミサ」Hob.XX�U.5
ユディス・ネルソン(ソプラノ)
マーガレット・ケイブル(コントラルト)
マーティン・ヒルテノール
デイヴィッド・トーマス(バス)
オックスフォード大聖堂聖歌隊
サイモン・プレストン指揮
古楽アカデミー(エンシェント室内管弦楽団
(元CD:ロンドン 448 519-2)
※「天の高きより水を滴らせよ」はウィキではHob.XX�U.2となっていますが、一応図書館の記載であげておきたいと思います。