かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハイドン ミサ曲全集7

今回の県立図書館所蔵CDは、ハイドンのミサ曲全集の第7集を取上げます。指揮はサー・デイヴィッド・ウィルコックス、オケはロンドン交響楽団、合唱はケンブリッジ・キングスカレッジ聖歌隊です。

ロンドン交響楽団を使っているだけに、オケはとても厚みがあります。それだけに、勇壮さと重厚さを併せ持っています。それもそのはず、ハイドンで唯一といっていい、有名なミサ曲「ネルソン・ミサ」ですから。

正確には、標題は「深き悲しみのミサ」といいます。ネルソン・ミサはあくまでも副題です。でも、その副題の方が圧倒的に有名ですね。このミサ曲だけは合唱好きな人以外でも名前だけは知っているでしょう。

構造的には、かなり古い形式を持ちます。グローリアはいくつかの部分から構成され、まるでそれはバッハのミサ曲ロ短調を思わせます。ただ、それはモーツァルトもやっている形式なので、決してバロックに戻ったとかそういうことではありません。

ただ、この曲が作曲されたのがちょうどネルソン艦隊がナポレオン艦隊を打ち破った時期だったということと、無関係ではないでしょう。交響曲もそういう時事に左右されて作曲されているものがありますので、ミサ曲も当然その影響を受けて当然でしょう(その是非は別にして)。

ハイドンが作曲していた時代は、ちょうどナポレオンが台頭してきた時代です。特にこのミサ曲が作曲された時期はすでにモーツァルトもなくなって、時代はベートーヴェンへと移っています。戦争の影響を受けないわけがありません。

この時期のハイドンを理解するためのサイトがいくつかヒットしましたので、ご紹介します。

つくば古典音楽合唱団第7回定期演奏会プログラムノート
http://koten.sakura.ne.jp/choir/concert07.html

これほど、ハイドンのミサ曲に関してきちんとした解説を私はネット上で見たことがありません。ですので、できればハイドンのミサ曲は解説がきちんとついている国内盤で買いたいですね。このシリーズの音源は元のCDが輸入盤なので日本語の解説はなしです。英語力がある人は、挑戦してみてもいいのでは?と思います。

国内盤は最近これと全く同じ演奏が宗教音楽全集という形で出ましたので、そちらのほうが詳しい解説があると思います。できればそちらを買われるほうがいいのでは?と思います。ただ、それが店頭にない場合、あるいはすでに廃盤となってしまった場合は一枚一枚粘り強く買っていくしかないでしょう。そのとき輸入盤しか手に入らなくてそれがハイドンの後期6つのミサ曲の場合は、この解説が非常に役に立つと思います。

ハイドンの「ミサ曲第9番ニ短調」(ネルソン・ミサ)音楽のおはなし
http://www.smyhk.com/music/meikyoku-192.html

ここはネルソン・ミサに限定していますが、短い文章の中で重要な点に絞って解説されています。特に「独唱部分に於いて、ソリストが歌うのではなく、合唱のメンバーの一人が兼任をして歌う形式になっています。」という解説は、非常に納得です。もともと、ミサ曲の独唱部分というのはそこから始まっています。

ですから、このシリーズの合唱団も聖歌隊を使っているのだと、私は思っています。

これらの解説をひとまとめにしますと、ハイドンの心中が浮かび上がってきます。

すでにモーツァルトはいない・・・・・自分の音楽もすでに過去のものになりつつある・・・・・でも、これだけの音楽はまだまだ書ける。が、時代はベートーヴェンにうつりつつある・・・・・

そして、戦争の影がひたひたと近づく。

それを反映したのか、主調がニ短調なんですね。これは通常のミサ曲ではありえません。通常長調ですから。

それが、第九やモツレクと一緒のニ短調なのです。このあたり、彼の心中はいかばかりだったのでしょうか。

もともと、このミサ曲が「不安な時代のミサ」と呼ばれていたことを考えますと、そんなことを想像してしまいます。楽譜を見てみると、いろんな発見があるかもしれません。聴いているだけでも、モツレクと関係あるのでは?と考えられる音形が出てきます。それは第九ともつながってゆくような気がするのです。

このミサ曲ほど、それを感じるものはありません。それほど、ハイドンのミサ曲の中でも、最高峰といっていい作品でしょう。そのためでしょうか、このミサだけ最後に持ってきていて、しかも一曲だけ独立して収録されているというのも特徴だと思っています。

単にこの曲がイギリスと関係が深いというだけではないような気がします。



聴いている音源
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
ミサ曲第9番ニ短調「深き悲しみのミサ」(ネルソン・ミサ)Hob.XX�U.11
シルヴィア・スタルマン(ソプラノ)
ヘレン・ワッツ(コントラルト)
ウィルフレッド・ブラウン(テノール
トム・クラウゼ(バリトン
サイモン・プレストン(オルガン)
ケンブリッジキングス・カレッジ聖歌隊
サー・デイヴィッド・ウィルコックス指揮
ロンドン交響楽団
(元CD:ロンドン 448 525-2)