今週の県立図書館所蔵CDは宗教曲特集です。まず今日は、ベルリオーズのレクイエムを取上げます。指揮は小澤征爾、オケはボストン交響楽団、合唱団はタングルウッド祝祭合唱団です。
ベルリオーズがレクイエムを作曲していたということは、コアなクラシックファンでないとなかなか知らないのではないでしょうか。実際、恥ずかしながら私も知りませんでした。ただ、合唱をやられている人たちにはひそかに人気のある曲です。
私がこの曲を知ったきっかけも、実は合唱関係の友人にコンサートへ誘われたことでした。本来大編成のこの曲を、何と聖歌隊がやってしまうコンサートがあるから、聴きに行かない?と誘われたのです。場所は原宿の教会。鉄の私としては久しぶりに副都心線に乗れるというあまりにもクラシックとはかけ離れた理由から、即答で行くとこたえました。
そのとき、私はベルリオーズがレクイエムを作曲していたことを知りませんでしたから、本来なら躊躇するところです。しかし、一緒に行かれる方が10数年らいの友人だったこと、また指導された方もこられること、そして副都心線に乗れるという3つの条件がそのとき重なりました。こうして、全く知らない曲でありながら私は喜び勇んで出かけてゆきました。町はクリスマス・・・・・男二人、一体どこへ行く?
しかし、そのコンサートは私に衝撃を与えました。演奏人数はわずか10人ちょっと。それでも、この曲のあふれるロマンティシズムとダイナミズムを感じることができたのです。
聖歌隊といっても、当然アマチュアです。それでも、私の心に突き刺さってきました。統制の取れたアンサンブル、必死に歌うその姿。ベルリオーズが込めた気持ちが伝わってくるようでした。
恐らく、その様子は以前このブログあるいはmixiでもご紹介しているかと思いますが、それをきっかけに私はこの曲をきちんとした形で聴きたいという気持ちが芽生えました。そんな時、図書館で見つけたのがこの音源です。実際、当時買おうかどうか迷っていたことも事実で、山野でも物色しています。
ベルリオーズのレクイエムは長い曲で、そのコンサートの時にも途中休憩があったほどです。つまり、場合によっては2枚組みになるということを意味します。当時の私の金銭事情ではちょっとそこまで手が出なかったのです。そこで、図書館のこの音源を借りることにしたのです。
幸いにして、この曲の解説はウィキペディアに掲載されており、それならば演奏に関してはともかく、この曲の理解に関しては問題ないだろうという結論もあり、借りることになりました。
この演奏はとても筋肉質で、実は一枚に収まっています。そういう意味では、ベルレク初心者の私にとっては、まさしくうってつけの演奏だったと思います。それがゆえに、物足りない部分があるのも事実で、実際同時鑑賞会で聴いた演奏の方が数倍よかったのです。ただ、それ以降私はこの曲がとても好きになりました。暗い中に光がさすような、単に暗いだけでないレクイエムの特徴をよく表現している名曲です。
小澤はその性質をコンパクトな中にもきちんと表現しようとしています。実際、メリハリが利いていて長い曲があっという間に過ぎてゆきます。また、アメリカのオケらしくきびきびとしたアンサンブルがすばらしく、この曲の長いというだけでないあふれるロマンティシズムが逆に浮かび上がってきます。
それと、ベルリオーズがこの曲を作曲した時期というのは、ミサ曲の形式が固まった時期にもあたり、構造的に奇抜なことは実はロマン派になりますとほとんどやりません。それなのに、レクイエムの決められた構造どおりに作曲されている中でもベルリオーズのあふれるロマンティシズムが前面に押し出されています。その点でもこの曲は名曲と言っていいと思いますし、またそれを際立たせている演奏になっているかと思います。
小澤ボストンというコンビがなせる業、と言ってしまうといいすぎでしょうか。
聴いている音源
エクトル・ベルリオーズ作曲
レクイエム 作品5
ヴィンスン・コウル(テノール)
タングルウッド祝祭合唱団
小澤征爾指揮
ボストン交響楽団
※実は、この音源は輸入盤で、どうやらOPACではアルファベットでないと引っかからないようです。あるのは事実ですが、今回はあえて元CDの情報はあげないでおきます。確か今でも発売されているはずです。昨年の段階では、銀座山野楽器本店で確認しています。