かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:マーラー 交響曲第5番

今日の「マイ・コレクション」はマーラー交響曲第5番です。指揮はエリアフ・インバル、演奏はフランクフルト放送交響楽団です。

今までは、ある意味自分がもともと興味を持っていた曲を買っていたわけなのですが、この一枚から少しずつ変わっていきます。自分の殻を破りたい、自分が知らない世界を知りたい、そんな気持ちへと変わる、そのきっかけを作った一枚といえるかと思います。

先日からmixiへもアップするようになりましたが、昨年からブログを読んでくださっている方々ならお分かりかと思いますが、私の興味はほとんど古典派か国民楽派か、という部分でした。それが、いきなり後期ロマン派、しかも難解といわれるマーラーなのです。

このCDを買ったのも高校時代です。しかも、このCDはさらに初があって、私が記憶している限りでは始めて都心の、山野楽器本店で買ったCDなのです。この後、山野本店で買う機会は社会人になるまで到来しません。なぜなら、大学の生協にいいCD売り場があったためなのです。

ですから、このCDはいろんな意味で思い出深い一枚なのです。

このCDを買ったきっかけは、まず地元ではマーラーのCDが手に入りにくいという点がありました。当時、ちょうどマーラーブームがやってきて、私もごたぶんにもれずその波に巻き込まれていました。

しかし、いざ買うときに散々迷ったのも事実です。なにしろ高校生で、しかも初マーラー。理解できるわけがありません。今ほどマーラーの演奏がラジオでもテレビでも、ましてやコンサートでもあふれていたわけではありません。マーラー交響曲を取上げるだけでニュースになった時代です。

実は当時買いたかった曲はいくつか彼の作品でありました。その中から結局この第5番を選んだのは、第4楽章アダージェットの存在でした。当時、マーラーといえばアダージェットという感じでもあり、私は「全体の中で、この曲はどういう感じなのだろう」と思い、第5番を選んだのです。しかも、そのときこの5番位しかわかる曲もなかったですし・・・・・

そんな経緯で、このCDを手に入れたのですが・・・・・予想通り、全く理解できない!

ただ、音楽自体はそれほど奇異に感じなかったというのはあります。それだけ、私はいろんな音楽に触れていたといえると思います。父がエアチェックで歌謡曲を毎週録音してくれたり、母は越路吹雪が好きだったり。中学校時代は友人にへヴィメタを聴かされたり。自分自身も中学時代までは演歌が好きだったり。そんな経緯が、恐らくマーラーを奇異に感じなかった理由だと思います。

それを感じるようになったのは、アマチュア合唱団で竹馬の友に出会って、和声の話をするようになってからです。7thですとか、モーツァルトの和声だとか、そういう話をするようになって、ああ、自分がマーラーを理解できなくても、その音楽を奇異に感じなかったのは、基本的にいわゆるニュー・ミュージックの和声に絶えず触れていたためだったのだな、と理解してからです。

これは和声に詳しい人であれば納得できるのではないでしょうか。いわゆるニュー・ミュージックの和声はある意味後期ロマン派の和声に近いのです。それをもっと突き詰めれば、モーツァルトへとたどり着きます。

そんな音楽に囲まれていた私が、いまやブルックナーへとたどり着くのは、ある意味必然だったのかもしれません。そんなきっかけを作ったのが、このCDです。

インバルのこの一枚は一応名演といわれていますが、これについてはわたしもどういっていいのか未だにわかりません。つまり、今でも私は理解できていないということになろうかと思います。それだけ、逆にマーラーの音楽は奥が深いといえるかと思います。

ただ、私はこの曲があまり好きではありません。それは、この曲の第1楽章が葬送行進曲であるということと無関係ではありません。

いや、葬送曲が嫌いなわけではありません。実際、レクイエムでは大好きな曲がたくさんあります。後に取上げるかと思いますが、社会人になってから、モーツァルトのレクイエムを皮切りにレクイエムばかりを集め始める時期がきます。ですから、葬送曲であるから嫌いなわけではありません。問題は、音楽自体が持つ「虚無」なのです。

私自身、虚無的なことが嫌いなわけではないのですが、この曲はあまりにもそれが強すぎて、返っていろんなことを考えてしまうという点にあります。それが心に不安をもたらすことが、どうしてもこの曲を好きになれない理由です。

それでも、アダージェットはやはりすばらしいです。そんな虚無的な中にまるでベルベットのようなアダージェット。ただ、最近精神的に落ち着かない中では決して聴くことのなかった曲です。ようやく落ち着いてきたからこそ、聴けるといっていいでしょう。

よく、この曲はマーラーの精神分裂的な部分が現れていると言われますが、それが何となく理解できてしまうからこそ、この曲は極力避けてきたといえると思います。

それでも、ある時期この曲ばかり聴いていた時期があります。それは、母がなくなった直後です。よく自殺しなかったなあと今から考えますと感じます。この曲、特にアダージェットは自殺願望がある人が聴くと実行に移すといわれていますので・・・・・

そう、mixiの方はご存知かと思いますが、私は今でも自殺願望が全くないわけではありません。それでも、この曲を聴いてそれほど死にたいとは思えないので、自分ではようやく落ち着いてきたのかなと思っています。

それほど、この曲は私にとって避けるべき曲であり、できればそれほど熱心に聴くことがない方がいい曲なのです。しかしそれは恐らく、この一枚がやはり名盤だという証拠でもあるかと、私は思っています。



聴いているCD
グスタフ・マーラー作曲
交響曲第5番
エリアフ・インバル指揮
フランクフルト放送交響楽団
(DENON 33CO-1088)
※これも、いまでは再販の番号になっているはずです。「クレスト1000」に入っているかと記憶しています。