かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」

今日の「マイ・コレクション」はドヴォさんの「新世界より」です。指揮はクリストフ・フォン・ドホナーニ、演奏はクリーヴランド管弦楽団です。

このCDも高校生の時に買ったものです。ですからもう20ウン年たっている代物です。しかし、演奏は全く色あせません。現在でもなかなかこれ以上の演奏に出会えていないという歴史を刻んできました。

いや、この演奏はそれほどすごいものではありません。奇をてらった部分もないですし、ドラマティックな部分があるわけでもありません。それでも、私はこの演奏以上のものにいまだ出会えていません。

この演奏以外にCDは持っていませんが、それでもヴィデオにとってあるものはいくつかありますし、コンサートへいったことも何度かあります。それでも、この演奏以上のものにいまだ出会えていないのです。

いっそ、県立図書館でスウィトナーを借りてこようかと思っているくらいで、この「新世界より」ほど第九と同じくらい最初に買った演奏を未だにいいと思っているものはありません。

その理由として、テンポを挙げることができるかと思います。決して速すぎず、遅すぎず。それでいて各パートは生き生きとしています。きびきびとしているといったほうが適切かもしれません。

その上、クリーヴランド管の芳醇な響き。特にそれを感じるのは、「遠き山に日は落ちて」で有名な第2楽章。弦もすばらしいですが、何といってもホルンがすばらしい・・・・・

私は、これはスメタナもそうなのですが、ボヘミア系の音楽はすべからずホルンにかなり重要な役割を持たせているなと感じています。特にメロディを吹かせているわけではないのですが、まるで遠くで角笛がなっているような、誰かが歌っているような、そんな情景が目に浮かんできます。

このCDはまさしくその表現が絶妙なのです。

前に、ドヴォルザーク交響曲全曲を取上げたときに、彼は鉄道をモティーフにしているのではないかと述べましたが、これはまさしく彼が日参していたターミナルから霊感を得たと思います。実際はインディアンの民謡から曲の構成を練っていますが、そのきっかけとなったのは大陸横断鉄道であることはいろんな資料からみて間違いないでしょう。

その証拠は実はいくらでもあって、それをクリーヴランドはかなりきちんと演奏しています。その一つが、ホルンなのです。

他の交響曲でもよく言われることですが、ホルンは機関車の汽笛を表しているという説があります。それにのっとってみますと、まさしくこの曲ではホルンは「汽笛」だと思います。それが、このCDではホルンがしっかりと吹かれているだけに顕著です。

考えて見ましょう。日本の明治期のアメリカで、角笛って使っていると思いますか?あるいは、ヨーロッパの森や草原のような狩がなされているでしょうか?いや、どうみても西部劇、ですよね。バイソンやバッファローを追いかけたり、馬で羊を追い込んだり。どうみても角笛の出番はありません。

となると、この曲では明らかに機関車の汽笛として使われているという推理が成り立ちます。それをよく表現しているのが第3楽章で、まさしくその冒頭は機関車が走ってゆく様子です。弦楽部は機関車の蒸気音やレールのつなぎ目を拾う音です。そこに、木管がインディアンの歌を奏でる・・・・・

まさしく、大陸横断鉄道そのものです。

この曲が「新世界より」と「より」がかならずつく理由も、そこに尽きるように思いますし、クリーヴランドはだからこそ祖国を表した曲に最大限の敬意を払って演奏しているように感じます。

そう、アメリカの音楽はここから始まる、といっても過言ではありません。その音楽に最大限の敬意を払う・・・・・すばらしいことです。

この曲はアメリカの音楽そのものではなく、あくまでもドヴォルザークボヘミアを描く手法で描いた「アメリカ」ですが、それでも当時の大陸の様子を垣間見ることができます。そしてそのことにアメリカ人が誇りを持っていることが、この演奏からはひしひしと伝わってきます。

実は、このCDを買った当時はそれがよくわからず、ずっといつかはチェコのオケ(となると、チェコ・フィルになるわけですが)で聴きたいと思っていましたが、今ではそんな気持ちはありません。どちらでもかまいません。ただ、やはり私はむしろこの曲だけはアメリカのオケで聴きたい、という気持ちのほうが強くなっています。

それはやはり、この曲がまさしく新世界たるアメリカを表現した曲である、ということに尽きるからだと思います。

今、オバマ政権はアメリカに新幹線、あるいはリニアを建設しようとしていますが、もしそれが実現した暁には、新たなる大陸横断鉄道ができる可能性をはらんでいます。そのときにふたたび、この曲はアメリカを代表する曲になることでしょう。

日本の新幹線は、果たして?



聴いているCD
アントニン・ドヴォルザーク作曲
交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より
クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮
クリーヴランド管弦楽団
(ポリドール F35L 20064)
※ロンドンレーベル