今日は、神奈川県立図書館の所蔵CDをご紹介するコーナーです。今回は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第5番と第6番です。
確か、このCDはなかなか借りられなかったように記憶しています。初めて予約をかけたものだったと思います。
神奈川県立図書館OPACでは、図書カードを作るとネット上で予約がかけられるのです。実はネットで予約がかけられること自体は家族が横浜市立図書館でやっていたので知っていました。ただ、県立図書館で、しかもCDでというのはマイミクさんに教えていただくまで全く知らなかったのです。
それでも、最初は予約をせず様子見で行っていましたが、このベートーヴェンの弦四のシリーズを全部借りようと思い立ったとき、どうしても番号順にはいきませんでした。考えてみれば県民の共有財産なのですから当然です。誰でも借りる権利があるわけですから、私だけ優先で番号順で借りるというわけにはいきません。
このアルバン・ベルクの旧盤は番号順になっているのがいいのです。演奏だけでなく、順番に聴いてゆくことでベートーヴェンの創作の歩みを知ることができるからです。その上で、技術的にも精神的にも高い演奏を聴くことができる。こんなにすばらしいシリーズはありません。
ですので、このCDから予約をかけ始めました。今や、予約をかけないほうが珍しくなりました。いわゆる「全集もの」を借りるときには、必ず予約をかけるようになっています。
私はベートーヴェンの弦四の初期作品をこのアルバン・ベルクで知りました。方針変更によりスメタナの方が後になります。それでも、スメタナの演奏がすっと聴けたというのは、恐らく私の人生経験が豊かになったことと、アルバン・ベルクがこの2曲に関してはそれほどものすごい演奏をしていないという点があると思います。
かといって、つまらないというわけではありません。アインザッツの強さは相変わらずですし、アンサンブルのすばらしさも群を抜いています。それでも、スメタナも遜色がないということは、アルバン・ベルクの演奏自体がそれほど奇をてらっていないということに尽きるのではないでしょうか。
実際、この作品18の6曲はそれほど我の強い曲ではありません。ですので、それほどすごい演奏にしようがない、と言えるでしょう。ベートーヴェンの個性は既に表れていますが、まだハイリゲンシュタットの遺書も書かれていない時期ですから、それほど強烈なメッセージがこめられているわけでもありません。ですから、楽譜に忠実に演奏する分には、何か強烈な印象になるはずもない、と思います。
だからこそ、彼らの演奏のすばらしさが逆に光っていると思います。それを特に感じるのは第5番の第3楽章と第6番の第1楽章で、特に第5番の第3楽章はモーツァルトのハイドン・セットとの関連も指摘される部分ですが、その変奏曲が単なるサロン向けではないということをはっきりと私たちに教えてくれます。
ハイドンやモーツァルトの流れを汲みつつ、ベートーヴェンの個性がすでに花開いているこの2曲を颯爽と演奏しているのを聴きますと、とてもしあわせな気分になります。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
弦楽四重奏曲第5番イ長調作品18-5
弦楽四重奏曲第6番変ロ長調作品18-6
アルバン・ベルク四重奏団
(元CD:東芝EMI TOCE-5997)