かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

モーツァルト ミサ・ブレヴィス ニ短調 K.65(61a)

モーツァルトのミサ曲シリーズ、今日はK.65です。この曲からしばらくはザルツブルク時代の作品になります。

K.49のときにも述べたと思いますが、モーツァルトの宗教曲のほとんどはザルツブルクで作曲されているのです。ミサ曲も例外ではありません。そのことが、作品に大きな影響を与えています。

それは、「究極の単純化」とも言うべきものです。モーツァルトザルツブルク大聖堂で宗教音楽に携わることになりますが、そこの神父であるコロレドは、ミサの時間に制限を設けました。そのために、ミサ曲は45分を超えてはならないとされたのです。日曜礼拝に使われるからです。

しかし、それは古典派の時代ではたとえミサ・ブレヴィスであってもなかなか実現できない課題でした。

ミサ曲という神を賛美する内容からして、繰り返しはある程度やらねばならないとか、ソナタ形式に基づくなど、制約が多いがために、ミサ・ソレムニスならばどうしても45分はかかります。それですら認められるぎりぎり。

そこで、モーツァルトは何をやったかといえば、「端折ること」だったのです。しかし、例えば交響曲なら4楽章もしくは3楽章ですし、協奏曲なら3楽章で済みます。しかし、ミサ曲はどうしても6楽章あるわけです。

まず、作曲するミサ曲の形式を主にミサ・ブレヴィスに絞りました。これなら思い切って端折ることができます。その上で、編成を簡素にしたり、カノンを多用するなど、できるだけ作品自体を簡素に仕上げたのです。

しかし、そのことが彼のミサ曲はつまらない、という評価を与えることになりました。確かに、ザルツブルクという土地とその時代を考えれば当然とはいえますが、かといってまったく聴くに値しないのかといえば、そんなことは微塵もありません。

このK.65のニ短調という調性。第九と同じ調性です。通常、ミサ曲はハ長調を最上とするのですが・・・・・

しかし、ミサ・ブレヴィスだからこそ実現できた調性です。それを彼はミサ曲全体へ応用しました。

また、編成がこの曲は非常に簡素です。独唱4部、四部混声合唱、ヴァイオリン2部、トロンボーン3、バス、オルガンという編成です。オケ好きな方なら、これがいかに簡素なのか、よくわかるかと思います。

また、ソナタ形式等では徹底的に繰り返しを廃しました。そのため、この曲では15分を切るという演奏時間を達成することができました。

そういう意味において、このK.65は非常に大事な曲なのです。

内容的にも、深みが出てきていて、K.49と比べますと成長の跡が見て取れます。しかし、まだまだ後年の作品と比べますと、物足りなさもあります。

しかし、彼の努力の跡がはっきりと聴き取れる曲です。サンクトゥスは1分かからない・・・・・

課題を実現するために、どれだけの努力をしたか。それがはっきりわかる点がすばらしいのです。