かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

2秒間の静寂

mixiと同じタイトルになりますが、こちらでは少々内容を変えます。

昨日、荻窪杉並公会堂へコンサートを聴きに行きました。出演する友人よりチケットをいただいたためです。

そのコンサートは、以下のものです。

時代・国境を越えて今も心に響く宝石の調べ
楽聖の街ウィーンvol.2
モーツァルトの午後
フィガロの結婚 序曲
交響曲第40番ト短調K.550
・レクイエム ニ短調K.626
稲見里恵(ソプラノ)
淀 和恵(アルト)
柾木和敬(テノール
山下浩司(バス)
コア・アプラウ
砂川稔指揮
モーツァルト祝祭管弦楽団

合唱団「コア・アプラウス」は私も参加したことのある団体でして、一年ごとに団員を募って活動しています。今回、モーツァルトのレクイエムは彼らにとって二度目になります。私は一回目の翌年のフォーレのレクイエムの時に参加しました。

ですので、実力は知っているのです。それだけに、今回は楽しみでした。

フィガロの結婚
いわずと知れたモーツァルトのオペラですが、端正な演奏でした。もう少し軽さがほしかった面もありますが、ホールの響きからすると適当だったように思います。オケは無名に近いとはいえすべてプロ。そのあたりはさすがです。

杉並公会堂はリニューアルされてとても響きのいいホールになりましたが、コンサートホールでありオペラ座ではないため、軽く演奏しろというほうが無理な面があります。

この曲を最初にもってきたところに、指揮者のセンスの良さを感じます。

交響曲第40番
私が好きな演奏は、サヴァリッシュ/チェコフィルなので、かなりテンポが速いのですが、昨日はほとんどの指揮者がやるようにゆったり目。以前の演奏の記憶をたどり、たぶん砂川氏はゆったり目に演奏されるだろうと思っていましたから、自分の好きなテンポと違いましたが、それは気にならずに聴けました。

むしろ、第4楽章の金管がとても暖かく、「え、この曲はこんなに明るかったかな」と思うくらいで、新たな発見ができました。こういう機会に恵まれる演奏会はなかなかありません。

・レクイエム
ここから、合唱団とソリスト登場です。第1曲目のレクイエム、ソプラノのソリストがちょっと肩に力が入りすぎてしまいました。これは残念。せっかく、合唱団は秀逸なのに・・・・・

実は、合唱団はソプラノのソリストがご指導されているのですが、この方は私が歌ったときもやはり肩に力が入っていましたね。よっぽど、客席からキャッチャーのように肩を上下に揺らすジェスチャーをしようかと思いました。

キリエのフーガはいわゆる「H」音が入らず、なだらかな歌い方でいい感じです。さぞかし、指導者に締め上げられたのだろうと想像します。それでも、できない合唱団がほとんどですが。

他のソリストはどなたもやはりプロであるだけに力をしっかり出していらっしゃいました。ソプラノは少しづつ、しり上がりによくなっていくという感じでしたね。もう少し、運営に工夫があれば演奏に専念できるのかもしれません。

コンフターティスですこし息が乱れますが、それをうまく乗り切ります。そして、ラクリモーサでひとつクライマックスを迎えます。ここの表現力はアマチュアとはいえ、さすがでした。身震いしました。

奉献唱でオケが少し乱れ、それを合唱団がカバーします。そもそも、奉献唱の第1曲目「主イエス・キリスト」はアタッカで全パートが入りますので、テンポをつかむのがとても難しい曲です。集中力のみでしか切り抜けることができない曲なのですが、合唱団の集中力はすばらしかったです。

しかし、そのためにバスは声の勢いを犠牲にしなくてはいけなくなりましたが。でも、ナイスリカバリーでした。

サンクトゥスは、万軍の将ここにきたれりという感じがよく出ていまして、アインザッツも最高!ジュスマイヤーの作曲部分だとしても、とても幸せな気分になります。これぞ、遺族を癒す「レクイエム」の醍醐味です。

最後のコンムニオでやっとソプラノソロは調子を取り戻しました。そうそう、先生の本来の力はそうでしょ?といいたいところです。

合唱団はそれを受け継ぎ、最後の苦しいところをがんばります。駅伝で言えば、最後の箱根の山登り。フーガを無難にこなし、クライマックスを迎えます。

全体的に特にソプラノがよく、いわゆる「ぶら下がっている」感じがほとんど感じられず、安心して聴いていられました。欲を言えば、もう少しだけピアノを弱く歌ってほしかったなという点くらいですね。でも、これがとても難しいということは私自身が一番よく知っています。


最後、曲が終わっているのに、誰も拍手をしようとしません。2秒間の静寂。いや、もっとあったかもしれません。そのあと、割れんばかりの拍手が起きました。

私もちょっと迷いましたが、失礼とは思いつつ、ブラヴォーをかけました。本当に、この難しい曲を良くぞここまで・・・・・と思うと、自分自身がこの曲で苦労した思い出があるだけに、ブラヴォーをかけないで会場を去ることはできませんでした。

終演後、懐かしい人たちと再見。皆さんとてもお元気で、私のほうが恥ずかしい思いをしたくらいです。でも、そういう思いにさせてくれるのが、合唱のいい点のように思います。

チケットをくれた友にも挨拶をし、会場を後にしました。帰り道でも、興奮が覚めやらず、本当にかかわった皆様へ感謝の気持ちでいっぱいです。

人の声って、本当にすばらしいなあと感じた一日でした。