かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:クライスラー 作品集2

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリである、パールマンとサンダースが弾くクライスラーの作品集、今回はその第2回として2枚目をご紹介します。

2枚目は有名な作品も入っていますがむしろ、あまり知られていないような作品のほうが圧倒的に多く、如何にクライスラーが多くの作品を「綴って」きたのかがわかるようになっています。

とはいえ、クライスラーの作品はそれほどヴィルトォーソでもないのが特徴です。しかしながら、その多くは艶があり、魅了します。これはクライスラーの信念だったかもしれませんね。

ハイフェッツのように弾けるようではない。しかし、その響きや旋律で魅了することはできる・・・・・そのゆるぎない信念が、残された多くの作品が今でも聴衆に愛されていることにつながっているのでしょう。

15曲目の「アンダンテ・カンタービレ」。チャイコフスキーの作曲でそもそもは室内楽作品だったものを、クライスラーの編曲で単独の作品へと生まれ変わったわけで、これを見ますと今ロシアがやっていることがいかに愚かなことなのかがよくわかります。ウクライナがロシアと一体などという前に、ロシアの作品がヨーロッパで受け入れられたからこそ、世界中に広がったことも考えるべきではないかと思います。

その意味では、私の中ではプーチンも橋下も大して変わりありませんが、それを言い出すとながーくなりますので・・・・・ただ、ここで言及させていただきますが、私はロシアの今回の行動を非難しておりますが、ロシアの芸術を愛してやみません。むしろこの事態において、差別される傾向があるので守りたいとすら思っています。

その意味でも、このアルバムは非常に重要な意味を持つのではないでしょうか。それはパールマンがそもそもユダヤ人である、ということもあるのかもしれません・・・・・

どんな作品でも愛情をこめ、歌うヴァイオリン。それが紡ぎだす、魅力的な世界。一方でパールマンチャイコフスキーなどのようなヴィルトォーソ的な作品も歌い上げます。その幅の広さこそ、私がファンとなっている一因です。パールマンなら、どの作曲家のどの作品の演奏でも、しっかりと世界を紡いでくれます。それが魅力なのです。

やっぱり・・・・・パールマンの音源、もっと欲しいでつ。

 


聴いている音源
フリッツ・クライスラー作曲、編曲
ロンド(「ハフナー・セレナード」より)(モーツァルト作曲)
サラバンドとアレグレット(コレルリ作曲)
マラゲーニャ 作品165-3(アルベニス作曲)
真夜中の瞳(喜歌劇「オペラ舞踏会」より)(ホイベルガー作曲)
ハンガリア舞曲ヘ短調ブラームス作曲)
無言歌 作品62-1「五月のそよ風」(メンデルスゾーン作曲)
クープランのスタイルによる才たけた貴婦人
フランクールのスタイルによるシチリアーノとリゴードン
スペインのセレナード(シャミナード作曲)
プロヴァンスのオーバード
ポルポラのスタイルによるメヌエット
フラスキータのセレナード(レハール作曲)
メロディー 作品16-2(パデレフスキ―作曲)
おもちゃの兵士の行進曲
アンダンテ・カンタービレチャイコフスキー作曲)
無言歌(チャイコフスキー作曲)
ディッターズドルフのスタイルによるスケルツォ
スラヴ舞曲第1番ト短調ドヴォルザーク作曲)
カプリース 第20番(パガニーニ作曲)
シンコペーション
岸辺のメモリー(グレインジャー作曲)
イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)
サミュエル・サンダース(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:クライスラー 作品集1

東京の図書館から、今回と次回の2回に渡り、小金井市立図書館のライブラリである、クライスラーの作品を集めたアルバムをとりあげます。

クライスラーと言えば、ヴァイオリニストとしても、そして編曲者や作曲者としても有名です。しかし、どんな作品を書いたり、編曲したの?となると、意外と答えられる人は少ないのではないでしょうか。そんな時に便利なのが、このアルバムだと言えるでしょう。

正確には、クライスラーが作曲、編曲、あるいは演奏した曲、というほうがこのアルバムは正しいのでは?と思います。時には同じヴァイオリンの名手で作曲家のヴィエニャフスキの作品も収録されています。それはまさにクライスラーが好んで演奏した作品だと言っていいでしょう。

それ以外は、クライスラーが作曲、あるいは編曲したものばかり。「美しきロスマリン」「愛の喜び」は有名だと思いますが、逆にクライスラーと言えばベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のカデンツァ作曲でしか有名でなかったりもするので、この二つがクライスラーだと言ってどれだけ通るのかという点も・・・・・

というのは、クライスラーは大変多くの作品を書き、また編曲しましたが、そういった業績はこのようにまとめて紹介されることは稀です。むしろ「クラシック名曲集」みたいなもののほうにしっかりと収録されていることのほうが多いので、逆にそういうアルバムなどを聴かずにクラシックが好きになった人は知らないという人も多いのがクライスラーなのです。

ja.wikipedia.org

2枚組になっていますがその今回の1枚目には、1935年に騒動になった「偽作」もいくつか含まれております。しっかし、その偽作騒動で本当に埋もれていた作曲家の作品が再検証されたりもしたのですから、何が幸いするかなど、本当に人生は塞翁が馬だと思います。

そんなクライスラーの作品を演奏するのは、現代の名手パールマン。ペアを組むのはサンダース。決して派手ではありませんがしかし気品に満ちた作品達は綺羅星のごとくに輝かせ、クライスラーが得意とした作品などはパールマンの洒脱な演奏でかつての名手をほうふつとさせます。

実はパールマンは私の好きなヴァイオリニストです。大学生の時に大学図書館における図書館コンサート(いわゆる、CD鑑賞会)でパールマンが弾くチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を聴いてからファンです。とはいえ、当時ようやく日本が豊かになってきたころ。いくらバブルに踊った時期とはいえ、大学生がプロの演奏会へ行くのはそう簡単ではありません。親の負担を軽くするため実家から大学へ通っていましたし、そんな中でリサイタルの資金をねん出するのはそう簡単ではありません。

しかも、CDも人気でなかなか見つからず。そのうち、月日は経ち、今日パールマンは来日はもうしないと宣言するに至りました。

ja.wikipedia.org

そうだよね、お互い年取ったよね・・・・・となると、CDだけとなります。そんな中で図書館で見つけたのがこれだったのです。いつかは大学生の時に聴いた、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の演奏が聴きたいと、e-onkyoを漁っております。パールマンのヴァイオリンは、障害者というものを感じさせない力強さに同居する繊細さ、そして「艶」が魅力。この演奏でもそういった部分も聞き取れつつも、さらにご本人がノリノリで演奏する様子もわかり、聴いていてやはり楽しいです。

クライスラーの音楽はとにかく楽しいのです。その楽しさをどれだけ聴き手も分かち合えるような演奏が聴けるのか・・・・・パールマンは、その期待を裏切りません。だから、ファンをやめられないんです・・・・・

ちなみに私、facebookでフォローしています。

 


聴いている音源
フリッツ・クライスラー作曲、編曲
ウィーン奇想曲 作品2
マルティーニのスタイルによるアンダンティー
ボッケリーニのスタイルによるアレグレット
ジプシーの女
スラヴ舞曲第3番ト長調ドヴォルザーク作曲、クライスラー編曲)
クープランのスタイルによるルイ13世の歌とパヴァーヌ
美しきロスマリン
愛のよろこび
スペイン舞曲(歌劇「はかなき人生」より)(ファリャ作曲、クライスラー編曲)
愛の悲しみ
レシタティーヴォとスケルツォカプリッチョ作品6
タンゴ(アルベニス作曲、クライスラー編曲)
ベートーヴェンの主題によるロンディーノ
中国の太鼓
悪魔のトリル(タルティーニ作曲、クライスラーによるトランスクリプション)
踊る人形(ポルティーニ作曲)
カプリース イ短調ヴィエニャフスキ作曲)
ロンドンデリー・エア(アイルランド民謡)
イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)
サミュエル・サンダース(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。

今月のお買いもの:ORTリマスターによるヴィヴァルディのフルート協奏曲集

今月のお買いもの、令和4(2022)年6月に購入したものをご紹介しています。e-onkyoネットストアにて購入しました、ヴィヴァルディのフルート協奏曲集です。

レーベルはDENON。つまり日本コロンビアですね。1980年代前後のCDの登場によるデジタル化にいち早く日本で取り組んだのが日本コロンビアのDENONでした。今回はそのコロンビアがCD用として持っているマスターを、ORTという技術によってリマスターした音源を購入しています。つまり、録音された時にはCD用なので44.8kHz/16bitでマスターを作ったものを、技術で96kHz/24bitにアップコンバートの上リマスターしたものを購入した、ということです。

このコロンビアの技術が、ORT。Overtone Reconstruction Technology(倍音再構築技術)の頭文字を取ったものです。

columbia.jp

低音部の倍音を再構築してリマスターする、というのがこのORTの肝だそうで、しかもそれはSONYのDSEE HXやDSEE ULTIMATEのように機械的にやるのではなく、エンジニアがその都度関わってアップコンバートするというものだそうで、どんなもんだろと思い、試験的に購入してみたのです。

いろいろ音源があり、すでにCDで持っているマーラー交響曲第5番などは比較検討できるなあとは思いつつも、より分かりやすいのは小さい編成だろうと判断し、このヴィヴァルディのフルート協奏曲集を選択したのでした。すでに他の団体の演奏を持っている作品ですが、複数持って聴き比べてみるのも面白かろうと思い、このヴィヴァルディにしたという経緯もあります。

ですので、作品についてはウィキを提示しておくだけにとどめます。ただ、この作品はバロック時代の協奏曲と言ってもかなり先進的な作品でもあります。そもそもはフラウト・トラヴェルソとアンサンブルのための協奏曲なのですから。

ja.wikipedia.org

フラウト・トラヴェルソなので、モダンだと当然フルートになります。ですのでこの演奏でもフルートが用いられています。ただ、この音源がいつの録音なのかまでは記述がないのでわからないんですが、おそらく1980年代とかでしょう。アンサンブルが東京バッハ・モーツァルトアンサンブル(1989年設立)なので、1990年代でもおかしくはありません。その時代の割には、このアンサンブルは古楽なのに、ソロはモダンなんですよねえ。というか、モダンに聴こえると言ったほうがいいかもです。

この演奏のソリストであり指揮者でもある、有田正広は、モダンのフルートも、古楽フラウト・トラヴェルソも吹く人なので、音だけではなかなか判断付きにくいのですが、もしかするとトラヴェルソかもしれません。フルートのようにも、リコーダーのようにも聴こえますので、とすればトラヴェルソであってもおかしくありません。

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さて、アップコンバートの上リマスターされたこの音源はどのように聴こえるのかと言えば・・・・・ソニーのDSEE HXを外して聴いていますが、艶があるのは素晴らしい!空気感といいますか、音の存在感がCDとは異なるように思います。これだと、あえてマーラー交響曲第5番を試してみても面白いなあと思います。マーラー交響曲は大編成で響きが重厚であるからこそ、ハイレゾで聴くのに適している作品でもあります。さて、CDに比べていかに音質が向上しているのか?試してみるのは面白いと思います。

もちろん、この音源は96kHzなので、あえてDSEE HXを動作させてというのも面白いと思います。つまり、もともとが96kHz/24bitで録音された、と仮定してシステムを動作させてみるということです。それだとさらに空気感が増してきます。なるほど、確かに低音倍音を再構築するというのは、ソニー機械的であると言っても同じであるわけで、機械的なのかもっと丁寧なのかの違いでしかありません。その意味では、CDをflac44.1kHz/16bitでリッピングして、DSEE HXなどで196kHz/24bit相当にしてみるというもの一つの方法だろうと思います。

ラインナップが今は新しいものが出ていないようなので、これはおそらくですが、ソニーの技術に駆逐されたかな?という気がしています。確かにこういった技術も素晴らしいとは思います。特にコロンビアの初期のデジタル音源をアップサンプリングしながら聴く場合には、どことなく空気感が薄い感じを受けるからです。ですので、こういった技術は素晴らしいと思います。ですがSONYの技術も万能ではないので時として不満もありますが、ほとんどの場合は満足して聴くことができます。唯一不満が残るのがことごとく日本コロンビアの録音であることを考えますと、再販をCDではなくハイレゾに絞り、ORTリマスターで配信するという方法も、一つではないかという気がするのです。

それを確認するためには、まずはマーラー交響曲第5番を聴いてみなくてはなりませんし、できれば、私が一番最初に購入したベートーヴェンの第九のCDである、スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリンの音源をORTで再版し配信していただけると嬉しいかなと思います。好きな演奏であるのですがハイレゾ時代だとちょっと音質で物足りなさを感じもするだけに、この技術でどのように生まれ変わるのか、聴いてみたい気持ちが湧き上がってきています。

日本コロンビア様、どうでしょう、初期デジタル録音は基本CDで再販するのではなく、ORTリマスターでハイレゾとして配信するのは。ぜひご検討下さいますとうれしいです。スウィトナーの第九が出れば、CDはもっていますがぜひとも購入してみたいと思います。そんな気にさせる、生命力もかわいらしさも聴こえる、優れた演奏が素晴らしい技術でよみがえった録音だと言えるでしょう。お勧めです。

 


聴いているハイレゾ
アントニオ・ヴィヴァルディ作曲
フルート協奏曲集作品10
有田正広指揮、フラウト・トラヴェルソ
東京バッハ・モーツァルトアンサンブル
(DENON flac96kHz/24bit ORTリマスター)

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東京の図書館から~府中市立図書館~:リャプノフ 交響曲第1番ほか

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、リャプノフの交響曲第1番などを収録したアルバムをご紹介します。

リャプノフという作曲家は、コアなクラシック・ファンじゃないとあまり知られていない作曲家ではないかと思います。ロシアの後期ロマン派の作曲家とは言いますが、どちらかと言えばその最後の時代の作曲家だと言えるでしょう。有名な作曲家が生まれた時代のちょうど狭間の時代に活躍したというほうがわかりやすいかもしれません。

ja.wikipedia.org

私自身、この図書館から借りてきたもの以外に音源を持っているかと言えばないのです。少なくともCDでは持っていません。ハイレゾを狙うほうがいいかもしれないという状態です。ナクソスなら可能性ありですが・・・・・

この音源は多分かなり適当に借りてきてリッピングしたものだと思いますが、まあ入門編としてはこんなところなのかもなと思っています。なぜなら、ウィキの記述に従えば、このアルバムに収録されている作品はみな師匠バラキレフの影響下にある作品だと言えるからです。そしてそんなアルバムなのだということを証明するかのように、アルバム最後にはバラキレフの作品をリャプノフが編曲した「イスラメイ」が収録されています。

ロシア最後の国民楽派とも言われるのもうなづけるなあと思うような作品が交響曲第1番。そしてその印象をさらに強めるのが2曲目の「ロシアの主題による荘厳な序曲」です。ただ、この二つ以外にもリャプノフの作品は数多くありますので、むしろ交響曲第2番や、ピアノ協奏曲を聴くほうが真のリャプノフの世界を理解できるのではないかと現在は思っています。

最後に収録されている師匠バラキレフの「イスラメイ」も、並んで違和感がないのが不思議に感じるということは、第1曲目と第2曲目がともにバラキレフの影響下にあるということを強く示唆するものであるわけです。その意味では、このアルバムの趣旨は「バラキレフの影響から出発したリャプノフという作曲家」という編集方針が見えてきます。

こういうロシア的な作曲家の演奏となると生きの良さを示すのが、「スヴェトラさん」の愛称で知られるエフゲニー・スヴェトラーノフ。オケはロシア国立交響楽団。ダイナミックさと生命力あふれる演奏はリャプノフという作曲家が非凡な才能を持つ作曲家だったことを示すものでもあります。ロシアの「独自性」というのはこういう文化的な点にこそあるのでは?と思います。決して政治的な点ではないように思うのですが・・・・・

それと、この音源の録音の良さ!DSEE HXを動作させてハイレゾ相当で聴いていますが、時折まるでそこにオーケストラがいるかのような錯覚に陥ります。とても美しい録音でもあるのです。録音時期的にも1980年代後半なので、それなりにいい録音があっても何ら不思議はないんですが、それにしても優れて美しいと思います。そういう美しさを経験すればするほど、なんと今ロシアはもったいないことをしているんだろうなあと思います。

 


聴いている音源
セルゲイ・リャプノフ作曲
交響曲第1番ロ短調作品12
ロシアの主題による荘厳な序曲 作品7
ミーリィ・バラキレフ作曲
東洋風幻想曲「イスラメイ」(リャプノフによる管弦楽編曲)
エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮
ロシア国立交響楽団

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東京の図書館から~小金井市立図書館~:やはりドヴォルザークは「鉄ヲタ」だった!「新世界より」と「モルダウ」の4手ピアノ版

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、ドヴォルザーク交響曲第9番新世界より」とスメタナの「モルダウ」の4手ピアノ版を収録したアルバムをご紹介します。

今回収録された2曲は、それぞれ作曲者によって4手ピアノ版へと編曲されています。通常ピアノ版へと編曲されるのは、その作品を聴いてほしいがために、簡便に演奏できるようという意思により実現されます。ドヴォルザークスメタナの二人の編曲を、「聴いてほしい」という視点から見てみようと思います。

まず、ドヴォルザーク交響曲第9番新世界より」と言えば、ドヴォルザーク交響曲の集大成と言える作品です。そして私の見立ては、アメリ国民楽派の扉を開いたものであると同じに、鉄道を作品の一風景として徹底的に取り入れたものでもあります。特にその傾向が強いのが、第9番「新世界より」であると言えるでしょう。

そのいわゆる「鉄分」が、編曲によりどうなっているのかと言えば、基本的にほぼ失われていない、と言えるでしょう。ピアノへの編曲はピアノ演奏を前提にして管弦楽版とは異なることがあります。その異なる部分があまりなく、むしろ蒸気機関車のドラフト音が強調すらされています。ですが、それは「風景の中の一部」とされているのが、ピアノ版の特徴だと言えるでしょう。

ということは、先日までとりあげておりました、イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏は実にドヴォルザークの意図を掬い取っていると言えるのではないでしょうか。ですがそれに気付くには、やはり鉄道に対する関心がないとスルーしかねないのではないか、という気がします。

いずれにしても、この編曲で、ドヴォルザークが「鉄ヲタ」であったことは確定した、と言っていいでしょう。

一方のスメタナモルダウ」。演奏にアコーギクもついてはいますが、しかし作品で重要視されている部分はあまりオケ版と変らないのが特徴で、それ以外はピアノ演奏を念頭に置いた編曲がなされています。それはドヴォルザークよりは上手だと言えるでしょう。確かに比べればドヴォルザークはピアノ作品を苦手としているとは言えるでしょう。だからと言って大事な部分とそうではない部分とを切り分け、自分が作品に込めた意図を外さない編曲になっていると言えます。

演奏するのは、かつて一世を風靡した夫婦デュオ、デュオ・クロムランクです。奥様は日本人である桑田妙子さんでもあります。その繊細かつ力強い演奏は、たとえば「新世界より」では風景の中で疾走する蒸気機関車の「音」の表現で抜群の効果を出しています。一方の「モルダウ」は、チェコの歴史と自然を表現するという部分で速いテンポを選択するなど、その繊細かつ力強いピアニズムを存分に活かしていると言えるでしょう。

そんな優れた演奏をするデュオですが、調べてみると残念なことに、1994年に夫婦ともども自殺してしまわれているのです。とても残念です・・・・・

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もちろん、今いろんなデュオがいらっしゃいますし、その中には夫婦デュオもいらっしゃいます。しかしそういった中でデュオ・クロムランクが今存在していたら、どんなきらめきがあったろうとおもうと、この演奏を聴きますと残念な気持ちが去来します。ですが、一方でやはりドヴォルザーク鉄道ヲタクだったのだ!という証明をした点で、やはり優れたデュオであったと言えるでしょう。合掌・・・・・

 


聴いている音源
アントニン・ドヴォルザーク作曲
交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」(作曲者によるピアノ連弾版)
ベドジヒ・スメタナ作曲
連作交響詩「わが祖国」より第2曲「モルダウ」(作曲者によるピアノ連弾版)
デュオ・クロムランク(ピアノ)
 パトリック・クロムランク
 桑田妙子

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。

今月のお買いもの:聖ヶ丘教会聖歌隊 讃美歌集

今月のお買いもの、令和4(2022)年6月にe-onkyoネットストアにて購入したものをご紹介します。聖ヶ丘教会聖歌隊が歌う讃美歌集を収録したハイレゾアルバム、flac196kHz/24bitです。

東京渋谷にある、プロテスタントの教会である、聖ヶ丘教会。佛教徒の私であればなかなかご縁がなかった教会なのですが、実はこの教会、一度だけ行ったことがあるんです。Setagaya Quodlibetさんの第2回演奏会を聴きに行った時です。

ykanchan.hatenablog.com

この時は聖堂で聴いたのですが、その時の響きの記憶と、今回の響きの記憶とがかみ合わないんです・・・・・この演奏のロケーションが教会なのか別の場所なのかがわかりませんので断言できないんですが、聴くだけではほかの場所なのかしらん?と思ってしまいます。けれど多分、聖堂だと思うんですけど。よく響いています。もしかすると、これが本当の聖ヶ丘教会聖堂の響きなのかもしれませんね。

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さて、収録されている曲は比較的私たち日本人になじみ深いものが多いように思われますが、しかし多くの人がこのように首をかしげるかもしれません。あれ?讃美歌ってカトリックじゃないの?と。

私も最初そう思ったのです。バッハだとコラール、つまり「聖歌」なので。しかし調べてみると、むしろカトリックこそ「聖歌」であり、「讃美歌」はプロテスタントでも団体別で異なることが分かったのです。まあ、基本仏教徒、しかも曹洞宗の私であれば知らなくて当然であったともいえますが。

gimon-sukkiri.jp

聖ヶ丘教会は日本基督教団です。なので「讃美歌」なのですね。おそらく、ドリフターズも「全員集合」の有名ネタ「ドリフの聖歌隊」はこの聖ヶ丘教会が渋谷にあることが理由だったのかもしれません。あの時も「讃美歌」でしたから。

疑問がすっきりしたところで、聴き進めていくと・・・・・あれ?これどこかで聞いたことがあるんだけどという曲がクラシックファンであれば4曲出てきます。第9曲目の讃美歌2編第152番「古いものはみな」、第13曲目の讃美歌2編第59番「すべてのもの統らすかみよ」、第15曲目の讃美歌第298番「やすかれ、わがこころよ」、そして最後の第25曲目の讃美歌第136番「血しおしたたる」の4曲です。

それぞれ、グリーンスリーヴズ、ブラームス交響曲第1番第4楽章、シベリウスフィンランディア、そしてバッハマタイ受難曲です。それぞれ原曲から讃美歌になっています。いや、第136番はそもそも讃美歌が原曲では?と思いがちですが、原曲はバッハというよりはコラールです。ですからコラールから転じて讃美歌になったと言えるでしょう。それぞれyoutubeにアップされていますから、音楽が聴きたい方はそれぞれの名前をコピペして検索して、聴いてみていただきたいと思います。ちなみに、第16曲目の讃美歌2編第167番「われをもすくいし」は「アメイジンググレイス」ですが、これは元々讃美歌です。

この演奏は日本の聖歌隊なので、すべて歌詞は日本語です。そんなもの買ってどうすんの?やはり原語だろ?という方もいらっしゃるかもしれません。しかし日本の教会で原語で歌われることはほとんどありません。これは仏教とは異なるのですが、なぜだと思いますか?それは、宗教活動の一環だからです。つまり、主の教えを門徒に伝えるという目的を持っているがこそ、なのです。実は仏教においても、書き下しや現代語にお経がかかれていることも最近では多くなりました。それでこそ生きている信仰だと思います。

確かに、原語の讃美歌を聴くことも大切だと思います。しかし、同じ民族で、すぐ隣に住むかもしれない同じ市民である、日本基督教団の信徒たちが、教会でどのような歌を、どのように歌っているのかを知るには、やはり彼らが日頃歌っている日本語の歌詞のものを聴くのが最も適しています。ここに収録されている讃美歌すべてを聴いていますと、私は実際キリスト者ではなく曹洞宗であるにも関わらず、心に染み入る曲ばかりです。

それはおそらく、日本語であるのと同時に、聖歌隊が歌っているということにもあるのだと思います。聖歌隊は通常プロではなく、常に練習こそすれ信徒たちですからアマチュアなのです。勿論中にはプロだけど信徒として参加しているという方もいらっしゃるかもしれませんが。いずれにしてもアマチュアなのです。それだけに同じ市民が歌っているという意識があり、魂に伝わってくるものがあります。

実際、私は仏教徒なのに聖歌隊として駆り出されたことがあります。川崎市宮前区にある、鷺沼サレジオ教会の聖歌隊がどうしても数が足りないので、手伝ってほしいと、当時合唱団で一緒だった信徒の団員から頼まれて、一日聖歌隊を務めさせていただいたことがあります。非常に喜ばれたことを思い出します。そのため何度かその手伝いを引き受けたことがあります。仏教でも、阿弥陀如来はすべての衆生を救い給う仏です。ならば、たとえその対象がキリスト教徒であろうとも、人助けをすることになんの迷いがあらんや、と判断したが故です。或いは大日如来薬師如来です。その法力ですべての衆生をお救い下さるのです。目の前に人が足らずに困っている人がいる。ならば、助けよう、自然な流れでした。

そして、教会はそんな私を受け入れてくださり、お礼までしてくださったのです。いまでも感謝してもし尽くせません。でもその経験があったればこそ、信じる宗教こそちがえど、おなじ市民、おなじ日本人であるという感覚が私の中に育っていきました。

だからこそ、この演奏が聖ヶ丘教会聖歌隊だと知って、ぜひともと思ったのです。しかもflac192kHz/24bitのハイレゾ。まるであの日聖堂で聴いたような、生きている信仰が聴こえてきます。魂が癒されるというか、温かいものが魂のなかに入ってくるような感覚すらします。それはプロが歌詞の意味をその都度勉強して歌うのとは異なる、アマチュアが毎週歌い継いでいるという、生きている信仰がなせる業であると言えるでしょう。

私自身の病気平癒のため、薬師寺に行きたくなりました・・・・・オンコロコロスンダリマトウギソワカ薬師如来の御名)、とあの奈良西ノ京の境内で、三回唱えたく・・・・・この聖歌隊のように。

 


聴いているハイレゾ
讃美歌~心を穏やかにしてくれる安らぎのハーモニー
いつくしみ深き(讃美歌第312番)
みたまなるきよきかみ(讃美歌第500番)
うたごえたからに(讃美歌2編第25番)
かみともにいまして(讃美歌第405番)
カルバリ山の(讃美歌2編第185番)
たえなるみちしるべ(讃美歌第288番)
きょうありて(讃美歌2編第82番)
主よ、おわりまで(讃美歌第338番)
古いものはみな(讃美歌2編第152番、原曲:スコットランド民謡「グリーンスリーヴズ」)
さまようひとびと(讃美歌第239番)
みどりもふかき(讃美歌第122番)
主われを愛す(讃美歌第461番)
すべてのもの統らすかみよ(讃美歌2編第59番、原曲:ヨハネス・ブラームス作曲 交響曲第1番ハ短調作品68第4楽章第2主題)
ナルドのつぼ(讃美歌第391番)
やすかれ、わがこころよ(讃美歌第298番、原曲:ジャン・シベリウス作曲 「フィンランディア」)
われをもすくいし(讃美歌2編第167番、「アメイジング・グレイス」)
キリストにはかえられません(讃美歌第2編第195番)
まぼろしのかげをおいて(讃美歌第510番)
ああしゅのひとみ(讃美歌第243番)
夕日はかくれて(讃美歌第359番)
主の真理は(讃美歌第85番)
わがたましいを(讃美歌第273番)
うるわしの白百合(讃美歌第496番)
しゅよみてもて(讃美歌第285番)
血しおしたたる(讃美歌第136番、原曲:ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲 ヨハネ受難曲コラール)
小島策朗指揮
日本基督教団聖ヶ丘教会聖歌隊
(キングレコード flac192kHz/24bit)

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東京の図書館から~小金井市立図書館~:シャブリエ 管弦楽作品集

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリであるシャブリエ管弦楽作品集を収録したアルバムをご紹介します。

フランスを代表する作曲家の一人、シャブリエ。その代表的な作品がずらり並んだと言ってもいいような内容です。第1曲目の狂詩曲「スペイン」は我が国でも人気の曲。2曲目の歌劇「グヴェンドリーヌ」序曲は後期ロマン派らしい音楽。

「楽しい行進曲」「ハバネラ」「気まぐれなブーレ」の3曲は元々ピアノ曲だったものを管弦楽へと編曲されたもの。「ポーランドの祭り」は歌劇「いやいやながらの王様」の中の有名な合唱曲です。

あまり長くない曲が集められた故なのか、全体で40分もないアルバムに仕上がっています。シャブリエの作品はきらびやかかつ聴きやすい曲が多いため、気軽に聴くのに適しているということもあるでしょうし、また初期のステレオ録音として試験的な部分もあるのでしょう。

指揮者はあまり私が知らない人ですがしかし堅実かつ生き生きとした演奏を実現させているのが好印象。そのオケはパリ音楽院管弦楽団。色彩的な響きは聴き手をワクワクさせます。シャブリエの作品が持つ生命力の再現性の高さはさすがフランスのオケです。

その演奏を、DSEE HXを動作させてハイレゾ相当で聴きますと、実に空気感溢れるものとして聴こえてきます。あまりいじってないのかな?という気がします。一方で初期ステレオらしい「音」も聴こえてきます。しかしそれが気にならないくらい、生きのいい演奏になっているのが好印象です。

こういうアルバムを聴くのも、また乙なものです。

 


聴いている音源
エマニュエル・シャブリエ作曲
狂詩曲「スペイン」
歌劇「グヴェンドリーヌ」序曲
楽しい行進曲
ポーランドの祭り(歌劇「いやいやながらの王様」より 序奏と合唱)
ハバネラ
気まぐれなブーレ(モットル編)
ピエール・デルヴォー指揮
パリ音楽院管弦楽団
ルネ・デュクロ合唱団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。