かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:メジェーエワが弾くメトネル作品集2

東京の図書館から、今回と次回の2回に渡り、小金井市立図書館のライブラリである、メトネルの作品集を取り上げます。

メトネルは、19世紀~20世紀に活躍した、ロシアのピアニストであり作曲家です。最近、いろんなピアニストが取り上げるようになりました。

ja.wikipedia.org

そして、このメトネルを取り上げているピアニストのひとりが、今回取り上げるアルバムのピアニストである、イリーナ・メジェーエワ。旧ソ連の出身ですが、実は彼女は本拠としているのが日本なのです。

mejoueva.net

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元々はワールドワイドで活躍していたそうなのですが、日本コロムビアのプロデューサーと結婚して、拠点を日本に移したそうです。しかも、東京かと思いきや、京都という・・・

え、大阪のほうがいいのでは?という人もいるかもしれませんが、通勤ラッシュや環境を考えた時、むしろ関西なら京都のほうがいいだろうなあという気がします。しかも、コンサートを行う大阪へもそれほど不便ではありません。JRなら大阪駅、阪急なら梅田、京阪なら淀屋橋と大阪のいろんなところへアクセス可能であることも、京都を本拠とする利便性の一つです。勿論、東京であっても、新幹線なら市内から計算しても2時間30分程度で駅から駅へと到達してしまいます。意外と便利なのです。

実は、メジェーエワは以前から注目しているピアニストのひとりです。e-onkyoネットストアで物色していますと、結構な頻度でメジェーエワのアルバムを目にします。しかも、ロシアのウクライナ侵攻後もです。それは実力と共に日本は京都を拠点にしているという点もあるでしょうし、レパートリーも結構広いことも、彼女の魅力です。

そして、第2集を取り上げるというのは不自然だと思う人も多いと思います。はい、第1集を借りてきておりません・・・いつかは第1集も借りてきたいと思っていますが、とりあえず今回は第2集を取り上げたいと思います。

その第2集ですが、1曲目は栄えある作品1の「8つの小品」のうち、4曲が取り上げられています。後期ロマン派の香りがする作品ぞろい。その香りが本当に匂ってくるかのように、共感を持って演奏している点も魅力的。そういえば、メトネルは1927年以来没するまで祖国へ戻らなかった人で、晩年になって支援者が続々集まって来た人でもあります。メジェーエワも同じ境遇だと言えますね。

2曲目は、ピアノ・ソナタ作品11-1。三部作の第1番と呼ばれ、ピアノ・ソナタ第2番とも言われます。1904~07年にかけて作曲された作品ですが、これもかなり後期ロマン派らしい作品。でも古臭いと言うか、誰かの真似って感じがしないんです。単一楽章になっているのは、当時の流行に沿ったものであるように思います。

3曲目から5曲目が「おとぎ話」。作品番号はそれぞれ異なりますが、実はいろんな「おとぎ話」をメトネルは書いています。これも後期ロマン派そのものという曲ですが、それでも印象派的な部分もあり、時代を感じさせる曲です。むしろドビュッシー象徴主義をほうふつとさせます。メトネルが新しい様式を得ようと、海外へ出たのかもしれないと思いますと、その内面性にメジェーエワが共感しているかのように、味わって演奏しているのが聞こえてきて、作品への愛にあふれているように私には聴こえます。

最後の「忘れられた調べ」はまさに後期ロマン派というよりは象徴主義の方へと軸足を移しているように思います。実際作曲されたのは1919年~20年です。その時代を考えれば、象徴主義に偏ってもおかしくないと思います。印象主義とするには和声がはっきりしていますし、後期ロマン派というには複雑です。やはり、メトネルは後期ロマン派あるいは象徴主義というカテゴライズなのではと思いますし、その芸術を追い求めた人だったように思います。

メジェーエワが日本に来たのは、夫が日本人で自分のアルバムのプロデューサーだったからというのもあると思いますが、もう一つ、どこかロシア音楽界に不満を持っていたのでは?と思います。その自分とメトネルとが、どこか重なるのだと思います。金太郎あめのように、どこを切っても、一音一音に愛がこもっており、味わいながら弾いているのが分かります。

そのうえで、このアルバムのロケーションは笠懸野文化ホール。現在はネーミングライツでグンエイホールPALとなっていますが、写真で見ますと、かなり音響がいいように思いますし、実際このアルバムを聴いていても、その響きの良さ、そして音響の暖かさは抜群です。メトネルという作曲家を表現するために適切なホールはどこかを、探し当てたんだ!という想いが、どこか演奏に漂っているように感じるのは私だけなのでしょうか・・・それにしても、メジェーエワに関東近辺の素晴らしいホールを教えてもらえるとは!

www.city.midori.gunma.jp

こういう経験をすることもまた、幸せなことだと思います。

 


聴いている音源
ニコライ・メトネル作曲
「8つの心象風景」作品1より(4曲)
 第1曲 プロローグ
 第2曲 ロ短調
 第4曲 変ト長調
 第8曲 いちょうちょう
ピアノ・ソナタ変イ長調作品11-1(「三部作ソナタ」第1番)
おとぎ話 ハ長調作品9-2
おとぎ話 ハ短調作品42-2(フリギア旋法)
おとぎ話 嬰ト短調作品42-3
「忘れられた調べ」作品39
イリーナ・メジェーエワ(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。