かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:大指揮者のピアノ曲

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリをご紹介します。大指揮者のピアノ曲を収録したアルバムです。

このアルバムに収録されている作曲家はみな、多くのクラシック・ファンが知っている指揮者ばかりです。トスカニーニアンセルメ、クナッパーブッシュ、セル、フルトヴェングラー、シューリヒト、そしてムラヴィンスキー。どれもその指揮する演奏は聴いたことがあるという人が多いでしょう。

けれども、彼らの作品は?というと、首をかしげる人も多いのではないでしょうか。え?作品って、彼らが残した演奏のこと?いえいえ。もちろん、作品ですから、曲のことです。知らない人のほうが多いのではないでしょうか。

では、私は知っていたのかって?ええ、知っていたんです。とはいえ、私もそれを知ったのはもう15年ほど前ですが。実はあるマイミクさんから教えていただいたんです。その音源が、なんと小金井市立図書館にあろうとは!確か神奈川県立図書館にはなかったような気がするのです(OPACで検索してみないと正確には言えませんが)。

このアルバムには意外性となるほどと納得する点と二つ私は印象を受けます。まず、意外性は、たとえばトスカニーニのなんとも愛らしい作品だったり、セルの洒脱なフランス風だったり。その指揮者の解釈からはちょっと想像できない作品がそこにはあり、各指揮者の多様性が見て取れます。一方の納得する部分は、すべての曲は少なくとも後期ロマン派の範疇から出ていないということなのです。おそらく、それがこれらの作品が顧られていない原因かと思われます。

フルトヴェングラー交響曲などが顧られるようになりましたが、そのほかの指揮者に関してはまだまだだなあと思います。私がググってみた範囲内で、明確に作曲家として扱っている指揮者はセルとフルトヴェングラーの二人だけです。

かつて私が所属していた合唱団、宮前フィルハーモニー合唱団「飛翔」の音楽監督だった守谷弘氏によれば、指揮者は作曲ができないとということでしたが、このアルバムを聴きますとなるほどなあって思う部分があるのです。アンセルメのマーチやセルの小品、そしてシューリヒトのソナタを聴きますと個性的!そのうえで構造も見事です。その目でスコアと格闘し、作曲家との対話をしているとすれば、名演が多いのもうなづけるなあと思います。

この中に不思議とカラヤンが入っていないんですよね。調査不足なのでなんとも言えませんが、カラヤンは作曲をしていない可能性があるのでは?と思います。だとすれば、カラヤンの指揮が「演奏する目」あるいは「聴衆としての目」しか持たないのは当たり前であり、あとはそれを受け入れるか否かだけの話であって、文明論ではないよなあって思うのです。その一方で、これら巨匠の「作品」が後期ロマン派の範疇から出ていないってことは、まさに後期ロマン派「しか」聴かない人たちによって神格化されているのだなとも思うと、現状の日本のクラシックコンサートのコンサート・ピースの貧弱さも、納得できるのです。そりゃあ、カラヤンの評価が歪むのもむべなるかな、と思います。

演奏するのは、ナクソスパートナーかと思いきや、じつはこのアルバム、国内盤なんです。キングレコードからの出版で、ピアニストは白石光隆。ほかにキングから「作曲家ムラヴィンスキー」を出しているピアニスト。いやあ、日本人ピアニストがこういうアルバムを出すの、いいですね~。巨匠と呼ばれる指揮者たちの別の顏を知ることができる上に、様々考えさせてくれますし、何よりもその演奏の生命力と説得力!テクニックの確かさの上に自在な表現が、各々の作品の生命を具現化し、その存在の確かさを私たちに証明してくれます。それをです、ソニーのSRS-HG10で聴きますと、ハイレゾではないのにその音の広がり!ピアノは一台で世界を奏でると言いますがまさにそれ。そしてそれだけの作品を、巨匠と呼ばれる指揮者たちが残している・・・・・

その事実を知って、では私は何を考えるかが、今後の課題だと思うんですね。これらの作品を知った後で巨匠たちの演奏を聴くのでは、その視点は全く違うはずなのです。先達たちのいいものは受け継ぎますが、悪いものは「そこに置き」、自分の目をしっかりと見開いて、彼らの演奏を聴こうと思います。それがピアニスト白石氏の言いたいことでもあるように思うのです。

 


聴いている音源
アルトゥーロ・トスカニーニ作曲
子守歌
エルネスト・アンセルメ作曲
軍隊行進曲第1番
ハンス・クナッパーツブッシュ作曲
タランテラ作品7
ジョージ・セル作曲
3つの小品 作品6
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー作曲
3つのピアノ曲
カール・シューリヒト作曲
ピアノ・ソナタヘ短調作品1
エフゲニー・ムラヴィンスキー作曲
アダージョ
前奏曲第1番ヘ短調
前奏曲第4番「果てもなきロシアの自然に捧ぐ」
前奏曲第7番
前奏曲第8番「無力な者へ」
タンゴ
フォクス・トロット
白石光隆(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。