かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:メジェーエワが弾くメトネル作品集3

東京の図書館から、2回に渡り取り上げております、小金井市立図書館のライブラリである、イリーナ・メジェーエワが弾くメトネルの作品集、今回は第2回目として第3集を取り上げます。なお、第1集は借りてきておりませんので、第2集を第1回目に取り上げております関係で、この第2回目は第3集を取り上げております。

まず、おさらいとして、メトネルがどんな作曲家なのか、そしてメジェーエワがどんなピアニストなのか、ウィキペディアなどを参照しておきましょう。メトネルは19世紀から20世紀にかけて活躍したピアニストであり作曲家、メジェーエワは旧ソ連で生まれましたが現在は日本を拠点にして活躍するピアニストです。

ja.wikipedia.org

mejoueva.net

ja.wikipedia.org

この二人に共通するのは、ある時期から祖国ロシアあるいはソ連へ帰っていないという点です。メジェーエワが帰るかどうかはわかりませんが、メトネル同様、現状では帰国は難しいと言えるでしょう。メジェーエワがメトネルを取り上げるのも、そんな自分の人生とメトネルの人生が重なるためではないかと、前回分析しました。メトネル同様、現状では海外でその生涯を終える可能性のほうが高いと言えるでしょう。おそらく、拠点としている日本、京都ではないでしょうか。

しかもです、メトネルは望郷の音楽を書いたと言うよりは、自分の美意識に合う先端の音楽を書いたと言える作曲家です。同様に、メジェーエワも、自分の価値を理解してくれる海外の聴衆と演奏活動を通して触れ合いたいという意識があるように思います。

1曲目のソナタ=エレジーソナタ三部作の第2番と言われる作品。ピアノ・ソナタ第3番とも言われます。単一楽章でささっと通り抜ける印象がありますが、作品11-1よりは象徴主義に傾倒している作品だと言えます。とはいえ、後期ロマン派の香りのほうが強い作品ですが。

2曲目の3つの小品は、それぞれ標題がついていますが、後期ロマン派というよりは象徴主義に近い作品です。「葬送行進曲」はかなり不協和音が多用されている作品で、どこか寂し気。「おとぎ話」も、かなり不協和音が多用され、単なる楽しい話にならずにさみし気。そこにメジェーエワが共感しているように聴こえるのです

3曲目の「ソナタ=バラード」も作品27とあって、これもまた不協和音が効果的に使われており、象徴主義に近い作品。ピアノ・ソナタ第8番とも言われており、3つの楽章が連続して演奏されます。しかも、ソナタで3楽章制。二重言語用法がなされていて隠されたテーマは「自由」とも取れそうです。この作品を、メジェーエワが味わいながら、時には感情の起伏も激しく演奏するところに、どこかメジェーエワの内面も反映されているように思うのです。

最後の「エレジー」は作品59-2。作曲年代が1940~44年なので、激動の世界を反映した印象があります。この録音は2000年なのですが、それでもメジェーエワの気持ちがどこか演奏に反映されているというか、作品に共感して愛にあふれている印象を受けます。

2枚全体を通しても、メジェーエワのメトネルという作曲家に対する共感にあふれていると思います。この第3集のロケーションも、第2集と同じ群馬の笠懸野文化ホール(現 グンエイホールPAL)。その暖かい響きは、聴いていて美しくかつ壮麗です。その響きにメジェーエワが惚れ込んでいるかのようです。それはまた、メトネルという作曲家に対する共感の表れのように思うのは私だけなのでしょうか。勿論、予算などの関係で同じホールになったという可能性もありますが、それでも、同じホールを使うということは、その響きが分かっているからこそ、作曲家あるいは作品の内面を表現しやすいとも言えます。それだけ、その響きが気に入ったとも言えそうです。

実際、私自身、メトネルという作曲家に対して親しみを持っていますし、自分の美意識や哲学にあう社会や環境を得るということは、なかなか難しいと感じています。それでも、ふと見渡せば与えられているものもたくさんあることに気が付きますし、そのことによって、自分の生きる糧になっている部分もあります。メトネルも同じだったように思い始めている私がいます。それは明らかに、メジェーエワの演奏が私の魂を揺らしたということなのです。

第1集はまだ借りたりしていないわけなので、是非ともメジェーエワの演奏でほしいと思っております。勿論、ハイレゾで。それがいつ実現するかは正直分かりません。e-onkyoネットストアで物色してみないことには何とも言えませんので。しかし、メトネルはできればメジェーエワの演奏で聴きたいと、今は考えています。この日本で、メジェーエワが生き生きと演奏活動ができるのであれば、私としてはできる限りのことをしたいと思います。

 


聴いている音源
ニコライ・メトネル作曲
ソナタ=エレジー ニ短調作品11-2(「三部作ソナタ」第2番)
3つの小品作品31
ソナタ=バラード 嬰ヘ長調作品27
エレジー 作品59-2
イリーナ・メジェーエワ(ピアノ)

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