かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:マズアとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管によるブルックナー交響曲全集4

東京の図書館から、9回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリであるクルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏によるブルックナーの苦境曲全集、第4回の今回は交響曲第4番を取り上げます。

「ロマンティック」という標題がついている作品ですが、ブルックナー命名ではないようです。とはいえ、ブルックナー交響曲の中では明るくかつドラマティックな作品だと思います。

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この作品の人気が高いことを考えると、暗い曲だから精神性が高く素晴らしい曲、明るい曲だから精神性がなく軽薄な曲という判断がいかに間違っておりくだらないかがわかる例だと思います。このロマンティックでブルックナー終止など、ブルックナーの様式が交響曲における使い方が確定したと言える重要な作品でもあります。それはむしろオルガニストであるブルックナーがそのオルガン演奏の手法を交響曲というジャンルにしっかり落としこみ、完成させたタイミングであるとも言えるでしょう。

私もブルックナーの作品の中ではこの第4番は好きな作品の一つですが、それは適度に酔えるからだと言えるでしょう。あまりどっぷり酔ってしまい、下手すればその沼から出られなくなるようなことがないことは、私にとって現在とても必要なことです。

そのうえ、この演奏はテンポもよく、ブルックナー終止から音楽の再開までのインターバルも適度で、全体像がつかみやすく、しかし重厚なサウンドを存分に味わうことができるという優れた演奏だと言えるでしょう。一見すると軽薄に見えるこの演奏がいかに深いスコアリーディングから生み出されているかが想像できるものです。

マズアという指揮者がいかに優れた芸術家であるかは、こういった演奏からうかがえるものです。音楽の構成要素とは何か、それを演奏においてどのように表現として使えばよいか、細やかな神経の行き届いている演奏で、いつまでも聴いていたくなります。

どうもブルックナーが好きな人たちは、その響きに酔うがため、その酔い方を他者に強制するきらいがあります。しかし、このマズアのタクトはそのブルックナー鑑賞法に明確に刃を突き立て、反論するものであると言えるでしょう。芸術である前にこの作品は音楽なのだ!という表明が聴こえてきそうです。

私としては、この演奏はとても好きなものです。悪い酔い方に気が付かない人たちとは違い、マズアはブルックナー交響曲において、境界線が引ける健康的なアプローチとは何かを追求し、見事に成功していると言えるでしょう。

 


聴いている音源
アントン・ブルックナー作曲
交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(原典版
クルト・マズア指揮
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

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