かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:オーケストラ・ダスビダーニャ第12回定期演奏会

今月のお買いもの、令和2年2月に購入したものをご紹介しています。今回は2月9日に聴きに行きました、オーケストラ・ダスビダーニャ第12回定期演奏会の会場である東京芸術劇場で購入しました、オーケストラ・ダスビダーニャ第12回定期演奏会のCDをご紹介します。

この第12回の記録は、封を開けたとき私はびっくりしました。CDが1枚しかない・・・・・そう、最近の2枚組ではないんです。それでも値段は大して変わらない・・・・・ダスビがどれだけ最近のCDでは出血大サービスなのかを物語ります。

とはいえ、ダスビのコンサートに足しげく通っているファンの方ならば、第12回だけがCDとして残っているわけではないのに、なぜ選択したのかが興味深いところでしょう。もちろん、ちゃんと理由があります。

まず、メインが「交響曲第1番」であること。これは私が持っているダスビのCDの中で、ないものだったからです。そしてカップリングが、「ヴォロチャーエフ要塞の日々」と所謂ジャズ組曲第2番だったから、です。

栄えあるショスタコーヴィチ交響曲第1番は、かなり意欲作だと言える作品ですが、まだショスタコーヴィチ社会主義に大いなる未来を感じていた時代の作品だともいえます。そんな若き作曲家の情熱を掬い取ったかのような団員さんたちの情熱的な演奏。前半の作品達の演奏と比べると、多少はじけている点もあるように思います。

では、その前半だったカップリングがダメなのかと言えば、そんなことはなく、むしろダスバー達の愉悦が楽しめるものでもあります。まずは「ヴォロチャーエフ要塞の日々」。これは映画音楽で、シベリア出兵時に日本軍とソ連パルチザンとの戦いの舞台となった、ヴォロチャエフスクの砦のことです。

http://www.dasubi.org/dsch/kaisetu/12_1.html

ダスビの前団長である白川氏の上記解説くらいしかないのがさみしいのですが、多くの日本人がソ連との戦争はないか、あるいは第二次大戦終戦直前に参戦して領土をかすめ取っていったとしか知らないと思うのですが、じつは日本は4年もの間、戦っているんです。

ja.wikipedia.org

この映画はソ連側の視点で描かれているので誇張こそされていますが、日本軍が残虐行為を行ったことは事実のようです(それが戦闘遂行の上しょうがなかったとはいえ)。ここであえて「ソ連パルチザン」という表現を私はしていますが、それは実はこの時期、まだロシア軍も存在したから、なのです。

つまり、この時の日本軍の「敵」はパルチザンであり、ロシア軍ではないんです。そこがこの作品の一つの肝でもあります。つまり、映画が作られた1937年という時点では社会主義ソ連であるわけで、ソ連軍はあってもロシア軍はいないわけです。何が言いたいのかって?実社会の認識において、当時の敵って、日本軍と「ロシア軍」だったよねえ、ということなのです。ここがとても重要です。

今でも「露助」とか言ってロシアを侮蔑する言動はあまたありますが、じつは戦前においては、「ロシア」と「ソ連」は別なもの、という認識があったことを、結構私たちは知りません(というか、私の青春時代までは常識だったんですが・・・・・)。たとえ日露戦争で敵味方に分かれたとしても、日本とロシアはともに「帝国」だったことを忘れている人が多いのですよね。だからこそ、赤軍側からすれば日本と「ロシア」が敵になるわけですし、日本からすれば赤軍が敵だけれどもロシア軍は守るべき存在になるわけです。

この映画音楽を作曲するとき、ショスタコーヴィチは何を思ったのか・・・・・資料が圧倒的にたらないので、今わかる範囲内で言及するとすれば、愛国者として祖国を守ってくれたパルチザンには感謝しつつも、その称賛には多少斜に構えていたのではないかなあ、と思っています。最後の革命歌は、ショスタコーヴィチのサービスだけなんだろうかって思うんですよね・・・・・

さて、最後が実は2曲目として収録されている「ジャズ組曲第2番」。なかなか演奏がお目にかかれることがないこの作品、ずっと探していたものだったんです。ダスビなら演奏しているはず・・・・・毎年そう思って、でもほかのCDを買い求めていたんですが、ようやく念願かなって買い求めることができた、ということです。

しかしながら、この組曲はジャズではありません。むしろ日本的に言えば流しに近い感じです。正式には「劇伴オーケストラのための組曲」です。劇伴とは、劇場お抱えのオーケストラのことです。つまり、第1曲の「ヴォロチャーエフ」とこの第2曲は明らかに関連しているってことなんですね。こういうダスビのセンス、大好きです!

どうもショスタコーヴィチが勘違いでジャズ組曲と名付けたようです。それにしても、ジャジーではないにしても、そのコミカルな音楽は十分楽しませてくれるものです。ショスタコーヴィチのしたたかさを感じる作品ですが、それを思いっきり楽しむダスバー達の生き生きとした演奏は聴いていて本当に楽しい!

それで力を使い果たしたのか(w)、第1番ではホルンがひっくり返ったり、現在のダスビだとありえない失敗も多いのですが、どこかほほえましく聴いていられるのは、そもそもダスバー達が作品と作曲者に対して普遍的なものを受け取っていて、共感しつくしているからだろうと思います。ダスビの共感の嵐がギュッと詰まった一枚。2枚組でないのが全く違和感ない素晴らしい一枚だと思います。

 


聴いているCD
オーケストラ・ダスビダーニャ第12回定期演奏会
ドミトリー・ドミトリエヴィッチ・ショスタコーヴィチ作曲
映画「ヴォロチャーエフ要塞の日々」作品48
劇伴オーケストラのための組曲(ジャズ組曲第2番)(第7曲はアンコールも)
交響曲第1番作品10
スケルツォ作品1(アンコール)
長田雅人指揮
オーケストラ・ダスビダーニャ
コール・ダスビダーニャ
(R-0610999JV)

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