かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:大中恩 合唱作品集

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回は大中恩の合唱曲を収録したアルバムをご紹介します。元音源は多分ビクターだと思います。ビクターから出ている「日本合唱作品選集」のはずです。

そもそも、大中恩(おおなかめぐみ)って誰?って話ですよね。合唱をやられている人なら名前くらいはどこかで聞いている人だと思います。「犬のおまわりさん」「さっちゃん」を作曲した人と言えば、えー!と思う人もいるかもしれません。あ、一応男性です、この人。

ja.wikipedia.org

むしろお父様の作品「椰子の実」なら知ってる!という人もいるかもしれません。その父の活動に触発されたのかはわかりませんが、息子の合唱作品で最も有名なのが、第1曲に収録されている「島よ」です。

ja.wikipedia.org

ロマンティックな島々を歌い上げたのではなく、島はこの歌では「比喩」なのです。歌詞を掲示してくださっている方がいらっしゃるので、URLをご紹介しておきます。

haruyama.blogspot.com

戦中戦後を生きた人の、冷徹な目がそこにあるように思うのはわたしだけなのでしょうか。こういう歌詞は私は好きですね。まるでバッハ・・・・・

2曲目の「風のうた」は、最初のどかな冬の風瀬戸内の風景を歌ったかと思いきや、最後の「冬の風」は厳しい作品。大中氏がどんな「詩」に作曲したいと思うのかの一端が見える気がします。わたしのマイミクさんがブログでエントリ書いているので、ご参考に。

bokunoongaku.com

3曲目の「風と花粉」は、再び1曲目とおなじ詩人の歌詞なのですが、今度は一転、ひたすら美しい・・・・・けれどもどこか、楽し気な中に悲しみが沈殿しているような・・・・・外形的なものにはあまり大中氏が興味がないような気がします。しかもこれ、アカペラ!

そして最後の「五つのうた」。4人の詩を5つ並べた作品ですが、これが快活!生命を感じます。

こう聴いてきますと、大中氏は合唱曲というものをクラシックの伝統の上に構築していると感じます。というよりも、「日本語の歌詞によるクラシック音楽としての合唱曲」という位置づけだなあと。混声合唱が好むトップに来るという点でも、そう思いますし、3曲目の「風と花粉」を聴いてもそう思います。

そんな作品群を演奏するのは、これまた日本を代表する合唱団。1曲目の神戸中央合唱団は、N響モーツァルトの「レクイエム」を歌ったこともある実力を持つアマチュア合唱団。ソロの部分も簡単にやってのけて、しかもそのソロの部分が実は「島よ」の本質である「比喩表現」をズバリ言い当てているのですが、その表現も素晴らしい!

2曲目を担当するのが豊中混声合唱団。所謂「豊混」さんですが、うららかな春の風景など、もう聴いていて酔いしれます。3曲目と4曲目の「コールMeg」は実は作曲者が設立したアマチュア合唱団で、大中氏の作品の初演を数々手掛けた団体です。活動は30年で終了し、その後はご本人の死後もOB・OGで結成された「めぐメグコール」という団体が引き継いでいます。アマチュアらしい発声の中に、作曲者が指揮するからこその表情付けが見て取れ、それが楽しい!作曲者にとって創作そして表現とは喜びであるのだなと感じます。それは以下のジャスラックの記事を見ても明らかではないでしょうか。

www.jasrac.or.jp

正直、大中恩をエントリでとり上げれば、マイミクさんのふなぴーさんのように濃くなるのが普通なので、本当に端折って端折って書いていますが、それでも結構なヴォリューム・・・・・スマホから見ている人には長くて本当に申し訳ないんですが、それだけ大中恩という人の魅力は濃いものなんだと思ってくださればうれしいです。合唱団員が団を作りましょう!とかいう作曲家って、本当に少ないんですよ。やはり独善的な人多いんで(だからこそ創作ってできるんですけどね)。けれども大中氏も厳しいところがあるにも関わらず人が絶えなかったのは、ご本人の人徳というものでしょう。

こういう「日本人」を左右とも袖に振る、今の日本の現状ってなんだろうなあって思います。いでよ!第2の福永陽一郎!

 


聴いている音源
大中恩作曲
混声合唱曲「島よ」(作詞:伊藤海彦)
混声合唱曲「風のうた」(作詞:中村千恵子)
混声合唱曲「風と花粉」(作詞:伊藤海彦)
④ピアノ伴奏による「五つのうた」
中村仁策指揮(①)
神戸中央合唱団(ピアノ:中村健)
須賀敬一指揮(②)
豊中混声合唱団(ピアノ:中村有木子)
大中恩指揮(③④)
コールMeg(ピアノ:三浦洋一

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。