かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:東京セラフィックオーケストラ第15回記念定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和2年2月24日に聴きに行きました、東京セラフィックオーケストラの第15回記念演奏会を取り上げます。

このオーケストラを聴きに行くのは2度目でした。一度目は2年前に府中の森芸術劇場ウィーンホールで行われた第13回演奏会。この時、実力と将来性を買ってまた聴きに行きたい!と翌年もチケットを取ったのはよかったのですが、ちょうど昨年は後から第九を歌う機会が訪れたため、あえてどぶに捨てたのでした。

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では、今回はどんなプログラムだったのかと言えば・・・・・実は、セラフィックさんにはもう一つ掲げているものがありました。それは、10年来ベートーヴェン交響曲を演奏すること。そして今回はその総仕上げ。となれば残るは・・・・・今年はベートーヴェンイヤーですしね。

そう!第九です。

シベリウス 「フィンランディア
ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」

www.seraphicorchestra.com

昨年行けなかったので今年は行きたい!と思ってそろそろだと思い、チケットを発売しているピーティックスのサイトを見てびっくり!第九じゃないですか!これは万障繰り合わせていかねば!

ということで今回聴いてきたというわけです。ですが、世の中新型コロナウィルス狂騒曲真っ最中。政府の初動が遅れたこともあり、次々に公的な催しは中止となり、すみだ5000人の第九もその余波を受けました。そんなこともあり、さて、予定通り開催されるのだろうかと思っていたところ、会場である杉並公会堂のサイトには「対策を取ることで、各イベントを開催」との文字が!

これを受けて、セラフィックさんの公式サイトでも、予定通り行うとの告知が。それでもいきなり予定変更も状況が状況ですのでありうると、会場につくまでは気が気でなりませんでした。

で、会場についてみたら、係員が居てアルコール消毒。なら、大丈夫そうだ、と。今回もどこか予定が立て込み1プロは間に合わず、フィンランディアはほんのちょっとだけしか聞けませんでしたが、とにかくまずはコンサートが開催されていたことにホッとしました。

ということで、第九だけになったわけなんですが、全体としては壮大な演奏だったと思います。横島氏のタクトはかなーりゆっくり目。もちろん、それはしっかりと演奏すればものすごい演奏になるのですが、アマチュアでそれやれるか?とちょっと心配でした。しかも、この新型コロナウィルス騒ぎの中です。団員たちも不安の中で本番を迎えたはずなんです。その影響はそこかしこに出ていました。ホルンが調子悪いのがその典型です。

本来なら、しっかり吸って鳴らすはずだと思うんですが、どこかおっかなびっくりなのが明らかにわかるんです。もしかすると自分の唾液とかで移さないだろうか・・・・・そんな不安すら受け取れます。だからおっかなびっくりなんですね。第3楽章の普通ひっくり返る部分が完璧ですから、普通ならしっかり演奏できたのだろうと思っています。逆にクラリネットやフルートなんて完璧ですし。

弦は全体的に調子よかったと思います。今回両翼配置ですからともすればヴァイオリンはアンサンブルが合わない可能性もあった中で、それは全く問題ない!少し残念だったのは、2年前にはそれほど目立たなかったアマチュアらしい音の痩せが、今回は散見されたことです。けれどそれは多分、横島氏が目指した理想の演奏ゆえ何だろうなと思います。むしろアインザッツが合わなかったり、テンポを間違えたりなどが散見されました。これはこれで新型コロナウィルス騒ぎの影響を受けてしまったものだと思っています。そんな不安の中で、第九という作品が持つエネルギーに引っ張られていくのが手に取るようにわかるんです。

私も川崎のアマチュア合唱団で、毎年かわさき市民第九を歌っていた時、よく経験した失敗なんです。自分たちが音楽に寄ってしまうことで逆に引き込まれてしまいアンサンブルが乱れるんです。同じ現象が起こっていましたがさすがはセラフィックさんだと思ったのは、次のフレーズやリフレインでは修正されているという点。だからこそそんな細かいミスが全然気にならないんです。多分オケの皆さんも「あ!やっちまった!」って気づいていたはずなんです。そうじゃないと次で修正するのは不可能ですから。

とにかく、テンポとしては実は私としてはあまり好きじゃないテンポだったにもかかわらず、説得力がある演奏でした。だからこそだんだんこちらも演奏に引き込まれていくんです。その快感と言ったら!しかも、変態演奏ですしw

どこがって?私が変体演奏という場合は、あの問題にする部分(Vor Gott!)に決まっているじゃああーりませんか!けれども今回は全体的に休符がある部分であえてさらに休符を取り、残響が終わってから音を出すということが徹底されていました。これがなんとも豊潤で素晴らしいんです!こんな演奏もありか!と思わずうなりました。それが、アマチュアオケでですよ?たまりません!

そして何と言っても素晴らしいのは合唱団!今回はなんと!私の実家近くにある都筑区の合唱団、フロイデ・コーア・ヨコハマ。舞台ではなくいつかのコア・アプラウスと一緒で後部席に陣取ったのですが、アプラウスが「塊」で音が来たのに対し、フロイデ・コーア・ヨコハマさんは音が降りてくるんです!つまり、しっかり声が上に上がっている。だからこそアマチュアらしいちょっとぶら下がってしまった音になってしまったとしても、全然気にならないんです。むしろ、美しくかつ力強く聴こえるんです。その合唱団のパッションで、いろいろ細かいミスを連発していたオケはシャン!となっていくのがまた楽しい!これが第九という作品が持つエネルギーです。自由とか平和とかだけではなく、そもそもが連帯の歌である第九という作品が持つ力だと思います。

最後、しっかり「しゃべって」いたのも本当に素晴らしいですし、ほんと、もう細かいミスなんてどうでもいい!ほんとに素晴らしい演奏だったと思います。多分、新型ウィルスの登場さえなければ、もっといい演奏だっただろうなと、そこだけが残念です。え?そんなのを乗り越えるのが当たり前でしょって?たとえそうだとしても、アマチュアですよ?不安の中よくぞ最後まで情熱的に演奏しきったと思います。細かいミスでアマチュアが済ませられたのは奇跡だと思います。私はその軌跡の目撃者となったことが本当にうれしい!ともにこの難局を生きて乗り越えていきましょうと、心に誓った演奏会でした。また来年、皆さんの演奏が聴けることを楽しみに、今夜もウィルス対策したいと思います。

 


聴いてきたコンサート
東京セラフィックオーケストラ第15回定期記念演奏会
ジャン・シベリウス作曲
交響詩フィンランディア」作品26(合唱付き)
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
西本真子(ソプラノ)
丹呉由利子(アルト)
澤崎一了(テノール
谷 友博(バリトン
フロイデ・コーア・ヨコハマ(合唱指揮:小屋敷 真)
横島勝人指揮
東京セラフィックオーケストラ

令和2(2020)年2月24日、東京杉並、杉並公会堂大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。