東京の図書館から、府中市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回はトロンボーン協奏曲を集めたアルバムをご紹介します。
トロンボーンと言えば管楽器ですから、それほど珍しくはないと思うかもしれませんが、じつはトロンボーンがソロとして使うというのは実はあまり多くはありません。そもそも、トロンボーンがソロとして使えるようになったのはロマン派以降です。なので特に管楽器の協奏曲が多かった古典派よりも、ロマン派以降、現代のほうが多いのです。
そんな楽器ですから、作品を見るのも珍しいというのはあるんですね。実はこのアルバム、そんな珍しいトロンボーン協奏曲を集めたもので、実際には2枚組のようなのですが、最初に出た形のが図書館にはあったようです。
さて、そんなトロンボーン協奏曲ですが、最初に出てくるのがリムスキー=コルサコフのもの。本来は実はオケとのではなく、吹奏楽との協奏曲なんですが、ここではオケと演奏されています。
次に出てくるトマジとロータのが本格的な協奏曲作品となります。トマジは20世紀フランスの指揮者で作曲家。特に管楽器の作品を多く世に出した人です。このトロンボーン協奏曲では、第1楽章にアンダンテとスケルツォを持ってくるなど、独創的な楽章構成で、トロンボーンが持つ艶が存分に表現されています。
そしてロータ。映画音楽で有名ですが、本人はクラシックの音楽家だと述べていたようです。それは伊福部とも通じるスタンスです。確かに、ロータが作曲した映画は高い評価を受けているものばかりです。
ロータの作品に関しては、いろいろ私も追いかけているので、またご紹介できる時があればと思っています。この協奏曲では、陰影が味わいを見せ、トロンボーンの粋な音色が美しく響きます。
最後の二つは、協奏的作品というものになります。シュニトケのはむしろ室内楽と言っていい作品で、各楽器の掛け合いが楽しめる作品。そしてラーベのものはビートルズの作品にインスパイアされたもの。どこかジャジーな雰囲気も持つ不思議な作品です。
演奏するは、ソリストがリンドルベイ。この人トロンボーンをやっている人たちの間では優れたソリストとして有名な様で、確かに聴いていても、気負うことなくのびやかで正確でかつ自由自在。とても楽しめる演奏です。サポートするのはヴァンスカ指揮タピオラ・シンフォニエッタ。これもまた気負うことない自在な演奏で、ともすれば不協和音が響く作品たちに、生命を与えています。こういう演奏は本当に素晴らしいって思います。
なぜなら、ともすれば、20世紀には見るべき作品は少ないって思いがちになるからです。この秋の来日オケのプログラムを見てみても、20世紀の作品は少なく、ほとんどが19世紀のもの。もちろんそれがいけないってことではないんですが、20世紀の作品を聴かないってことはつまり、我が国の作曲家の作品も聴かないってことなんですね。我が国にクラシック音楽が入ってきたのは19世紀後半。作品が生み出され始めたのは20世紀になってからなんですから。その作品を聴かないってことなんです。
いやいや戦争があったからというかもしれません。ならばなぜ戦後の作品も忌諱するのかとなります。伊福部は常に日本のリズムを追い求めていましたし、左寄りの作曲家たちも日本らしさを目指すことをやめませんでした。なのにイデオロギーや戦争だという理由で聴かないのですか?それは楽しみを半分失っていることだと私は思います。
それを思い起こさせてくれるのが、こういった20世紀の作品を収録しているアルバムなのです。私にとっては来日オケよりも、聴いていて楽しい時間です。
聴いている音源
ニコライ・リムスキー=コルサコフ作曲
トロンボーン協奏曲(オーケストレーション:クリスティアン・リンドベルイ)
アンリ・トマジ作曲
トロンボーン協奏曲
ニーノ・ロータ作曲
トロンボーン協奏曲
アリフレッド・シュニトケ作曲(本人及びクリスティアン・リンドベルイ編曲)
トロンボーンと7人の奏者のために対話
フォルケ・ラーベ作曲
孤独の人々(オール・ザ・ロンリー・ピープル)~トロンボーンと室内管弦楽のための~
クリスティアン・リンドベルイ(トロンボーン)
オスモ・ヴァンスカ指揮
タピオラ・シンフォニエッタ
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。