東京の図書館から、府中市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回はカルロ・マリア・ジュリーニがベルリン・フィルを指揮した、ベートーヴェンの第九を収録したアルバムをご紹介します。
ジュリーニと言えば、孤高の指揮者とも言われた名指揮者です。ステディな解釈をする一方で演奏は情熱的なものが多いのが特徴で、魅力ある演奏を数多く聴衆へ届けた人でした。
この説明を見て、ああ納得と思ったのが、ジュリーニってほとんど名演名盤と呼ばれているものってドイツものを振ったものなんですね。ルーツが当時のドイツ領の北イタリアだったというのが納得なんです。ならドイツ語堪能でコミュニケーションにもたけていただろうと思うのです。
たいてい、クレンペラーなどが「民主的」とか言われますが、ではジュリーニは民主的ではなかったんでしょうか?独裁的だったのでしょうか?まずは演奏を聴いてみましょう~
驚くことに、オケはベルリン・フィルであるにもかかわらず、カラヤンやヨッフムと言った指揮者のような硬質なベルリン・フィルサウンドというものがないんです。もっとまろやかで、しなやかで、そして情熱的。そのうえで、音を比較的伸ばしているにもかかわらず、爽快でもあるんです。
それはまさに、ウィキで言うところの「ドイツ的な構築性とイタリア的な流麗さを両立させた独自のスタイル」だと言っていいと思います。
私としては実は、こう少し硬質である上でカンタービレしてくれる演奏が好みですが、このジュリーニの演奏もほんとに素晴らしい!
ちょうど府中市立図書館に通い始めたころで、ならばここでも第九を借りてみようと思い立った最初のディスクがこれでした。実はそれまで私はジュリーニの指揮ってあまり興味がなかったんです。でも、当時関西から定期的に鉄道ファン活動の合間に音盤組合活動をしていた友人から、ジュリーニの第九はいいですよって教えてもらっていたんです。さらには、まだ実家にいたときにご訪問した当時のマイミクさんの一人からも、ジュリーニの構築力は最高だと、ストラヴィンスキーの「春の祭典」などを聴かせていただきながら教えてもらってもいました。
そんな経緯があったので、じつは音盤組合(つまりはディスクユニオン)でジュリーニのCDを探していたわけだったんですが、ちょうど府中市立図書館で見つけたというわけでした。
よく、公立図書館は国内盤しか取り扱わないからつまらないという意見もいただくのですが、確かにこれなどは国内盤だったと思います。けれども図書館の使命とは、その資料が国内、海外問わず利用者の知識吸収のために最良のライブラリを構築することです。私のようにジュリーニを何故か食わず嫌いでいて、その魅力に気付かない人が、気楽に借りてみてダメならそのまま返せばいいという図書館のシステムは実はうってつけなんです。もちろん、そのまま聴きたければリッピングしないといけないという面倒くささはありますが・・・・・それを面倒くさいというのなら、初めから買えばいいんですから。
買わないからこそ、まずは借りてみる、ということが重要であるわけです。気に入れば、そのうちハイレゾで巡り合えば購入ということもあることでしょう。図書館はそのために存在すると思っています。多くの人に気軽に知識を提供する・・・・・それこそ、図書館の使命なのです。
このジュリーニの盤を置いているというのは、府中市立図書館の司書さんはセンスがいいということの、これも証明であると思います。情熱的ですが洗練さもあるジュリーニの演奏は、これからも名盤として語り継がれていくはずなのですから。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」
ユリア・ヴァラディ(ソプラノ)
ヤルト・ヴァン・ネス(メゾ・ソプラノ)
キース・ルイス(テノール)
サイモン・エステス(バス)
エルンスト・ゼンフ合唱団(合唱指揮:エルンスト・ゼンフ)
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
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