かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:アリエル・ラミレス ミサ・クリオージャ他

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回はアリエル・ラミレスの合唱作品集を取り上げます。

多分、多くのクラシックファンが知らない、アリエル・ラミレス。私自身も図書館の棚で見つけて初めて知った作曲家です。フォルクローレの作曲家として知られているようですが、それは一面しか見ていないように思います。

アリエル・ラミレス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%AC%E3%82%B9

そもそも、フォルクローレの取集や、その旋律を使うということは、19世紀〜20世紀初頭にかけてヨーロッパに起きた民謡採集運動の影響を強く受けていますし、ということは新古典主義音楽の影響も強く受けているということになるわけです。私にとってはちっとも「どことなく変な」作曲家には見えないのです。むしろ、クラシックの王道を行く作曲家だといえるでしょう。

特にその傾向がはっきりしているのが、ラミレスの名を不動のものとした「ミサ・クリオージャ」です。クリオージャとは「大地」という意味ですが、借りたCDでは「南米大陸のミサ」と訳しています。これ、絶妙な、そしてかなり苦労したうえでたどり着いた訳だと思います。実際にラミレスが「ミサ・クリオージャ」で描いて見せた「大地」とは、彼の祖国アルゼンチンをはじめとする、南米大陸だからです。

それは、各楽章につけられた指示で明らかです。例えば、キリエには(ビダーラ〜バグマラ)という指定がありますが、その売りビダーラとはアルゼンチン北西部の6/8拍子のリズムのことですし、またグローリアで指定されている「カルナバリート」とは、南米大陸で広く踊られている舞曲です。

カルナバリート
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%8A%E3%83%90%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%88

PCだと、ブラウザを立ち上げておいて打ち込めばすぐ検索できます。フォルクローレという視点だけだと、これのどこが素朴なんだとかネガティブな意見も出てくるもので、実際この音源を取り上げているアマゾンのレビューではそういったネガティブなものも散見されますが、この作品、あくまでも民族色で彩った宗教曲なのです。しかも、舞曲を入れているというのはバッハのカンタータにもつながるものです。バッハも当時のドイツやヨーロッパで広く踊られていた舞曲をカンタータの中に取り入れ、神への賛美としたのです。それと同じなんですね。

バッハのカンタータがとりわけ大好きな私からすれば、このラミレスの視点は非常に素敵だと思いますし、また同時にピアソラにも哀愁を感じ、祖国への愛も感じる私からすれば、とても愛国的作品だとも思います。

カップリングされてる「夏のクリスマス」や「アルゼンチンのクリスマス」も同時に優れた宗教的作品だといえるでしょう。アルゼンチンだからこそクリスマスは夏ですし。それと、「夏のクリスマス」はどこかシシリエンヌのリズムも・・・・・ということは、これもまたバロックからの伝統に即しているってわけなんです。それを、南米大陸的に表現しただけ、です。けれどもそれがヨーロッパのクラシック音楽を聴きなれてきた私たちにとっては、とても新鮮なわけです。

けれども、下手に知っている人であれば、宗教曲であればなぜラテン語ではないのだとかみつく人もいるかもしれません。ではなんですが、バッハはドイツ語であるのを否定するんですか?この作品は、キリスト教という宗教がたどった歴史を凝縮している作品でもあるんです。カトリックで歌われてきたミサ曲。そして民族色をいち早く打ち出したバッハ。さらに20世紀に入り、言語はラテン語以外も認めるという会議の結果。それらがこの作品が成立する要素として絡み合っているんです。だからこそ、ヨーロッパではセンセーショナルな反応が巻き起こったというわけなのですね。

指揮するはホセ・ルイス・オセーホ。手兵のサルベ・デ・ラレード合唱団、そして民族楽器アンサンブルであるグループ「ウアンカラ」。助太刀する男声合唱団「ビルバオ合唱協会」に、3大テノールホセ・カレーラスの見事な美声が、のびやかで生命力ある、地に足ついた信仰の賛歌を見事に歌い上げます。どことなくフォルクローレしているけれど、でも宗教曲であるこれらの作品を、自分たちの歌としてしっかり歌いあげています。こういった作品が日本でも生まれ、演奏されていくといいのですが・・・・・




聴いている音源
アリエル・ラミレス作曲
ミサ・クリオージャ(南米大陸のミサ)
夏のクリスマス
アルゼンチンのクリスマス
 マリアへのお告げ(チャマメ)
 さすらい(ウエジャ・バンベアーナ)
 誕生(ビダーラ・カタマルケーニャ)
 羊飼いたち(チャージャ・リオハーナ)
 東方の三博士(タキラリ)
 逃避行(ビダーラ・トゥクマーナ)
ホセ・カレーラステノール
ドミンゴ・クーラ(パーカッション)
ホルヘ・バディン(パーカッション)
ラロ・グディエレス(ギター)
アルセニオ・ザンブラーノ(チャランゴ
ラウール・バルボーザ(アコーディオン
アリエル・ラミレス(ピアノ、チェンバロ
サルベ・デ・ラレード合唱団(合唱指揮:ホセ・ルイス・オセーホ)
ビルバオ合唱協会(合唱指揮:ゴルカ・シエラ)
ルイス・ヴァン・アーメリック(チェンバロ
ホセ・ルイス・オセーホ、ダミアン・サンチェス指揮
グループ「ウアンカラ」(民族楽器アンサンブル)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。





にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村