かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ケルビーニ ミサ曲集3

今月のお買いもの、ディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、ケルビーニのミサ曲集を採り上げていますが、今回はその第3集をご紹介します。収録されているのは、ミサ・ソレムニス ホ長調他です。

ケルビーニのミサ・ソレムニス ホ長調は、1818年に作曲されたと「言われて」います。というのも、ブックレットとウィキで、作曲年代の表記が異なるからです。

主な作品
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%8B#.E4.B8.BB.E3.81.AA.E4.BD.9C.E5.93.81

ウィキでは「荘厳ミサ曲ホ長調」とあるのがそれですが、1814年になっています。一方、ブックレットでは1818年となっています。どちらを採用するのか迷いましたが、輸入盤のブックレットを私は採用しました。なぜなら、ウィキは文責が載っていない上に、参考文献もあやふやだからです。

ウィキしかない場合はそれを採用しますが(勿論、それで間違えば訂正しなければいけませんが)、ウィキの他もある場合で、かつ表記が異なる場合は、どちらかを採用する必要に迫られるわけで、今回は、文責がはっきりしているブックレットを採用した、というわけです。

勿論、だからと言ってウィキが全く信頼できないってことではないです。ただ、ウィキは他から転記している場合もあり、書き写している時に間違うという事もあるからです(同様に、ブックレットも間違うことがあるので、安易にだからブックレットのほうが正しいとは言えないんですが)。

いずれにしても、この作品は19世紀に入ってから作曲された作品であることには変わりありません。様式的には、これまでの二つのミサ・ソレムニスと若干様相を異にしており、それはあまり細部が分かれていないという事です。モーツァルトのミサ曲、特にザルツブルク時代の作品に近いものを持っています。例えば、モーツァルトもミサ・ソレムニスを書いていますが、それに様式的にはそっくりです。

モーツァルト ミサ・ソレムニス ハ長調K.337
http://yaplog.jp/yk6974/archive/185

6年前のこのエントリを、上げる日がくるとはですが・・・・・まあ、これだけでは少し不十分ですが、再掲することをお許し下さい。要するに、ミサ・ブレヴィスのような形式でありつつも、くり返しだったりはミサ・ソレムニスであるという内容を持つんです、このケルビーニのホ長調ミサは。

ベートーヴェンのミサ・ソレムニスがあまりにも有名であるがために、モーツァルトはかすみがちなんですが、むしろその後のミサ曲の様式、形式を見てみると、むしろモーツァルトが果たした役割はとてつもなく大きいのですね。そして、それを受け継いでいったが、ケルビーニであり、そしてその後の前期ロマン派の作曲家達だったのです。

ですから、ハイドンモーツァルトベートーヴェン、という流れが「絶対」であると思いこんでしまうと、ミサ曲の変遷が理解できずに、宗教曲などつまらないということにつながって行ってしまうのだろうと思います。歴史好きな私にとって、こんなにワクワクする史実はありません!

その上で、このホ長調ミサは、後のベートーヴェンのミサ・ソレムニスを準備した作品であるとも言えます。何故なら、サンクトゥスとベネディクトゥスにおけるオザンナは旋律が異なるという、ミサ曲のおきて破りをしているからなのです。

マイ・コレクション:ベートーヴェン ミサ・ソレムニスと合唱幻想曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/445

上記エントリで、私が指摘したことを、ケルビーニも行っているという事なのです。しかも、ベートーヴェンが完成させる、9年も前に。

ここまで来ますと、不思議なことに、すべてベートーヴェンのミサ・ソレムニスへと繋がっていくから不思議です。下記ウィキの説明にはそれがすっぽり抜け落ちているように思います。実際にヨーロッパの音楽学者がどう論じているかが、知りたいところです。もしかすると、ケルビーニとの関連が思いっきり出ていたりするかもしれません・・・・・

ベートーヴェンのミサ・ソレムニス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%83%AC%E3%83%A0%E3%83%8B%E3%82%B9#.E3.83.99.E3.83.BC.E3.83.88.E3.83.BC.E3.83.B4.E3.82.A7.E3.83.B3.E3.81.AE.E3.83.9F.E3.82.B5.E3.83.BB.E3.82.BD.E3.83.AC.E3.83.A0.E3.83.8B.E3.82.B9

少なくとも、ケルビーニはベートーヴェンよりも10歳年上であったということは、注目に値すると思っています。だからと言って、音楽的に古くさいのかと言えばそんなことはなく、むしろベートーヴェンと同時代の音楽がしっかりと鳴っているのです。むしろ、ベートーヴェンが先達ケルビーニに追いつき追い越せだったのではないかと思うくらいです。

ベートーヴェンが生きた時代、音楽の先進地域はイタリアであり、そしてフランスです。ようやく、そこにドイツも名を連ねようとする時代です。イタリアに生まれ、そしてフランスで活躍し、なおかつ自立心が強いケルビーニは、ベートーヴェンからすれば羨望の的であったことでしょう。フランス宮廷とつながりがあったとしても、です。

そこまで論じますと長くなりますので割愛しますが、要するに自立するためには境界線が引けないといけないわけです。ケルビーニはそれをやすやすと行なえているのですね。ACでかつ自立心が強いベートーヴェンからすれば、「こんな人になりたい!」と思う一人であったことでしょう。

楽聖ベートーヴェンに対して何たることを!という方もいらっしゃるかもしれませんが、ケルビーニはシンフォニストではなかったにせよ、優れたオペラ作曲家であったことは、多くの学者や音楽家が認めるところです(「メテア」を復活させたのはマリア・カラスであったことを想起してください、そういった批判をする人たちは)。なおかつ、シンフォニスト・ベートーヴェンが尊敬していた作曲家の一人に、ケルビーニがいたということも、押さえておく必要があるかと思います。

ケルビーニは、古いものをリコンストラクションするかのように、モーツァルトを評価し、尊敬しつつ、しかし自分の音楽をしっかりと持ち、表現し、後世に伝えたということが、このホ長調ミサからははっきりと見て取れるのです。バッハ以来の伝統も尊敬していたベートーヴェンが、憧れても何ら不思議はありません。

ケルビーニのミサ曲を聴くという事は、これほど深遠な世界へと連れて行ってくれるのかと、私自身、こう原稿を書いていて驚きを隠せません。やはり、百聞は一見にしかずなのだなあと思います。

演奏の特徴としては、聴きどころ満載ですが、かなり長くなったこの紙面を文字通り「〆る」ことを考えますと、クレドの「エト・レジュレクシット」だろうと思います。やわらかでかつ力強い合唱は、自然と内なる喜びが外へと向かっていることを受け取ることができます。勿論、もっと硬質な演奏にすることも可能でしょう。ただそれは、まさしくショスタコの第5番第4楽章のように、強制された喜びになりかねません。それはそれで私も嫌いではないですが、しかしこの演奏の、決して硬質ではないが、しかし力強さが随所にあらわている演奏は、聴いていて飽きが来ませんし、何しろ疲れません。

ふと、合唱指揮者はだれだろうとみてみれば、納得、ペーター・ダイクストラなんですね。以前、スウェーデン放送合唱団のコンサートレヴューをかいたときにも言及している、素晴らしい合唱指揮者です。

音楽雑記帳:スウェーデン放送合唱団コンサートを聴いての雑感
http://yaplog.jp/yk6974/archive/372

軽く柔らかい発声を指導したダイクストラ。なるほど〜と思いました。決して硬質ではないけれど、しかししっかりと力強さがある演奏はそこから来るのだなと思いました。ムーティはここまで、合唱団は一緒なのですが合唱指揮者は変えています。それはムーティが決して自分の理想とする音楽を表現しようとするときに、合唱指揮者にこだわらないということを意味します。意外とこういった点はアンチ・カラヤンの人たちには理解されなかったりするんですが^^;

このボックスを取り上げているブログはいくつかありますが、オケや指揮者に言及しているものは多いですが、合唱団に対しては皆無なのが寂しいですね・・・・・ですので、私は是非とも、合唱団にフォーカスして書いていきたいと思います!

バイエルンですからオケが素晴らしいのは、合唱好きであろうが交響曲好きであろうが、共通意識だと思います。さらに、合唱団も素晴らしいのです!本当にドイツの放送合唱団は、西といい東といい、素晴らしい団が沢山あるのですが・・・・・

それを伝えてくれるのが、カップリングの宗教曲二つなのです。1つ目のアンティフォナはアカペラですが、まさしく発声の軽さは、私がスウェーデン放送合唱団でライヴで聴いたそのものですし、2つ目のモテットnemo gaudeatもその軽めの発声が、美しさを際だたせています。重厚なバイエルン放送交響楽団とともにアンサンブルしていたとは思えないようなその軽さは、しかし作品の美しさを、十二分に伝えています。オルガンとのアンサンブルは素晴らしく、オルガンもはっきりと聴こえるその録音も素晴らしいです。カラヤンのようにあまりいじっていないはずですが、それでもオルガンがはっきりと聴こえるだけのアンサンブルが作れるのはさすがプロですし、またダイクストラの美意識を存分に感じられる演奏だと言えましょう。




聴いているCD
ルイジ・ケルビーニ作曲
ミサ・ソレムニス ホ長調
8声のためのアンティフォナ
モテット:Nemo gaudeat
ルート・ツィザーク(ソプラノ)
マリアンナ・ピッツォラート(メッゾ・ソプラノ)
ヘルベルト・リッパート(テノール
リーダー・アブドラザコフ(バス)
バイエルン放送合唱団(合唱指揮:ペーター・ダイクストラ
リッカルド・ムーティ指揮
バイエルン放送交響楽団
(EMI 6 29471 2-3)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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