かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ファリャ 三角帽子

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はスペインの作曲家、ファリャの「三角帽子」です。フリューベック・デ・ブルゴス指揮フィルハーモニア管の演奏です。

ファリャは最近、管弦楽作品を採り上げました。

神奈川県立図書館所蔵CD:ファリャとアルベニス管弦楽曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1541

南欧の独特の和声が魅力的なファリャの作品をこの時聴いて、さらにと思って借りたのがこの音源でした。ファリャと言えば、この「三角帽子」か「恋は魔術師」が断然有名で、人気ですからねー。

でも、そこから入らないのが私らしいところでして、本来なら室内楽から入りたかったのですが、この時は見つからなかったので、まずは「スペインの夜の庭」から入ったのでした。

スペインと言えば、フラメンコに代表される激しいリズムの舞曲が有名ですが、じつはこの三角帽子も冒頭はその踊りのシーンから入るのです。

三角帽子 (ファリャ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%A7%92%E5%B8%BD%E5%AD%90_(%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%AA%E3%83%A3)

学校の鑑賞の時間で、名前だけは憶えさせられるファリャですが、では三角帽子とはどんなジャンルの作品なのでしょう?で、ウィキを紐解いてみますと、バレエ音楽なんですね。

しかも、始めはファリャがパントマイム音楽として望んだという点は注目に値する点でしょう。つまり、もっと大きなカテゴリである、舞曲として成立したのがこの作品です。

その上で、パントマイムですとストーリーがあります。ある意味、とても20世紀の音楽らしい性格を持っている作品だと言えます。とはいえ、和声は親しみやすいものですし、旋律線もはっきりしています。途中にベートーヴェン交響曲第5番「運命」の第1主題がそのまま使われていますが、それも違和感がないくらいですから!

そして、声楽が入るという独創性、これは後にプーランクも導入し、プーランクでは合唱まで登場しますが、この三角帽子では合唱はちょっとだけ。むしろ掛け声って感じです。ドラマを引き立てる役割を担っているにすぎませんが、当時としてはバレエあるいはパントマイムであるにも拘らず、まるでオペラを見ているように思ったことでしょう。

でも、現代を生きる私たちからすれば、恐らく聴きましても特段の先進性を見出すことはできないでしょう。同じような音楽を日常茶飯事に聴いているからです。それがドラマや映画のサウンド・トラックです。ファリャの「三角帽子」はまさにサウンド・トラックの走りだと言えます。

19世紀から20世紀初めに掛けては、現代に繋がる様式が続々と成立した時代であると言えます。喫茶店のBGM、そしてサウンド・トラック・・・・・どれも私たちは当たり前のように、毎日ドラマをテレビで見たり、或は映画を見たり、外食したりで聴いているわけですが、その走りはこの時代に求められるでしょう。

一方でその大元はバロックまでさかのぼることができます。あるいはルネサンスでしょうか。新古典主義音楽がバロックに注目し「温故知新」しなかったら、一体現代の音楽はどのようになっていたでしょう。現代程様々な音楽が氾濫し、豊かに実っている時代はありません。無調のものもあれば、調性音楽で旋律線がはっきりしているものもある、とてもバラエティ豊かな時代です。

その扉を開いたのは、新古典主義音楽に触発された人たちであったことは間違いありません。ファリャも元々民俗音楽が基礎にあった人であったせいか、新古典主義音楽へと傾倒していきますが、その萌芽をこの「三角帽子」に見ることができます。

とてもスペインスペインしているこの作品を、まさにスペイン生まれの指揮者フリューベック・デ・ブルゴスはオケを良いテンポとアンサンブルで鳴らしています。作品が持つ生命力と人間臭さ、そして力強さと庶民のたくましさを十分表現しています。思わず踊り出してしまうそのリズムを、強めのアインザッツで演奏させるなんざあ、思わず体を動かしてしまいます。え、外でてやっとくれって?うーん、じゃあ、外で聴きますか・・・・・

うん、携帯音楽プレーヤーに入れて、歩きながら聴いてもいいかもしれません。作品が持つ芸術性と庶民性、文学性とフィジカルな部分を引き立てている演奏で、約40分の演奏はあっという間に過ぎていきます。

オケであるフィルハーモニアは本当に豊潤な音を出しますねえ。ほれぼれします。その豊潤さが演奏にさらに花を添え、スイッチを入れただけで私たちを南欧へと連れて行ってくれます。現実にありそうな行政官の不正と非現実性が混然一体となって現実として私たちに迫ってくる作品に、しっかりと生命力が与えられています。これがプロの仕事ですね。




聴いている音源
マニュエル・デ・ファリャ作曲
バレエ音楽「三角帽子」全曲
ヴィクトリア・デ・ロス・アンへレス(ソプラノ)
ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス指揮
フィルハーモニア―管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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