かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ作品全集8

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ナクソスのリスト・ピアノ作品全集をシリーズで取り上げていますが、今回はその第8集を取り上げます。

実は、このナクソスの全集を借りようと思ったのは、第8集を単独で借りてきたことから始まるのです。その切っ掛けになったのが、瀬川玄氏のサロン「音楽道場」でした。採り上げられたのは、この第8集の2曲目である、「伝説」より第1曲「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」。

リスト : 伝説
Liszt, Franz : Légendes S.175 R.17
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/2255/

伝説 (リスト)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%9D%E8%AA%AC_(%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88)

珍しくウィキのほうが詳しいので、そちらを参考にするのが良いかと思いますが、瀬川氏の演奏で聴いた時の衝撃たるや、いまだに覚えています。あの衝撃が無かったら、私のピアノ作品ライブラリはかなり狭いものだったことでしょう。

リストと言えば、何と言っても超絶技巧です。それが、「伝説」では殆ど封印されています。むしろ、技法を使って描写を中心に据えています。その意味では、リストが確立した交響詩の延長線上だとも言えるでしょう。実際、「伝説」は管弦楽版もあります。

その「伝説」が、リストの作品の中で特徴的であることを際だたせるため、この第8集は第1曲目にピアノ・ソナタを持ってきています。数多くのピアノソナタを書き、超絶技巧で有名なリストですが、以外にもピアノ・ソナタは1曲しか書いていません。

リスト : ピアノ・ソナタ ロ短調
Liszt, Franz : Sonate für Klavier h-moll S.178/R.21 A179
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/1499/

このピアノ・ソナタはとても独創的な作品で、管弦楽作品で確立した技法をピアノへ移植した素晴らしい作品ですが、超絶技巧的な部分もある作品です。ところが、「伝説」はその超絶技巧的な部分は、第2曲のクライマックス程度にしか出てきません。明らかに作風が変っていることを示しています。

リストの1850年代〜60年代は、演奏家としてはピークを過ぎており、若き日のように超絶技巧ではなかなか演奏できない状態に入った時期です。その時期の作品をずらりと並べてみせるところが、さすがナクソスだなあと思います。むしろこの第8集はそれが特徴であると言えるでしょう。最終曲である、「ファウスト交響曲」第2楽章のピアノ編曲は時期的に第1曲のピアノソナタに近く、まだまだ超絶技巧的な部分がありますがだいぶ深遠なる世界が表現されるようになっています。

ネットなどで出てくる、当時の作曲家や評論家たちの評論は、私はあくまでもピアニスト・リストを評したものではないかと思います。それはクララにしてもそうで、彼女の脳裏にはやはりヴィルトォーソとしてのリストが「刷り込まれ」ていたのだろうと思います。そうなってしまうとどうしてもレッテル張りしかできませんから。しかし、交響詩などを見れば、超絶技巧一本やりではないのは明らかです。

その意味では、私が幸せだと思ったのは、一つは瀬川氏のサロンに通っていたこと、そしてもう一つは、管弦楽作品が好きだったことだと思います。それは視野教唆という意味ではマイナスの部分もありましたが、一方では、これ以前に交響詩を俯瞰できていたことがとてもよかったのです。リストを「超絶技巧」とレッテル張りせず、それだけではないと知り得ただけでも、リストという作曲家に対する理解が深まったと思うからです。

演奏は、イェネ・ヤンドー。ハンガリー出身である故なのか、リストの作品に対するリスペクトを感じます。それが一番出ているのが、「伝説」だと思います。

「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」を例に取れば、この作品には、聖フランチェスコと、小鳥たちが登場しますが、特に聖フランチェスコが小鳥に話しかける部分があわてず、小鳥に対してゆっくりと話しかけている様子がしっかりと表現されており、聖フランチェスコの、小鳥に対する優しい眼差しが手に取るようにわかるのが素晴らしいのです。

ピアノ・ソナタも決してあわてず、リストが目指した、それまで確立した様式をピアノ作品へ移植するという作業が見事に浮かび上がっており、決して超絶技巧一本やりではないことが明らかにされているのも素晴らしいです。そうかと思えば、「水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ」では神々しい聖人の姿が堂々と表現されており、縦横無尽です。この活きの良さは絶品です!

リスト作品の一つの魅力を、しっかりと表現しているのがとても素晴らしいと思います。




聴いている音源
フランツ・リスト作曲

ピアノ・ソナタ ロ短調(S178/R21)
伝説(S175/R17)
�@小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ
�A水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ
グレートヒェン(ファウスト交響曲より第2楽章)(S513/R180)
イェネ・ヤンドー(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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