かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:白川毅夫・川辺千香子コンサート「クラリネットの魅力・私のお気に入り」

コンサート雑感、今回は先日10月13日に行われました、白川毅夫氏と川辺千香子女史のコンビによるクラリネットとピアノのコンサートを取り上げます。

白川氏に関しましては、以前も何度か取り上げています。

今日の一枚:メモリーズ 白川毅夫
http://yaplog.jp/yk6974/archive/116

コンサート雑感:クラリネットの魅力シリーズ1を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/770

コンサート雑感:クラリネットの魅力 シリーズ2を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/960

コンサートも上記2度だけではなく、もっと聴きに行っています。

今回の会場は、以前も取り上げたデザインKホールです。響きはそれほどではないんですが、木を使っているせいかとても温かい音色が響くのが特色です。

コンサート雑感:神谷 勝&内藤 晃 デュオ・サロンコンサートを聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/956

そもそも、このホールは私たちが想像するような、舞台と客席がセパレートになっているものではなく、集会室に椅子を並べましたというような会場です。もちろん、集会場よりはいい音が響きますが・・・・・

それゆえに、実は演奏者と聴衆との距離がとても短く、様々な発見をすることが出来ますので、とても楽しいものです。逆に演奏者は緊張するでしょう。実際、今回私は一番前の席に陣取りましたが(これは実は神谷氏の時も一緒だったのですが)、白川氏からは「緊張します」と言われてしまいました(そこまで辛口ではないと思っているんですが^^;)。

さて、曲目は以下の通りです。

ピエルネ カンツォネッタ
磯部周平(A.F.Gバッハ) エレジー
白川毅夫 アムゼルの森
バーンスタイン ソナタ
白川毅夫 無伴奏クラリネットのための「舞」
ブラームス ソナタ第2番

まずピエルネのカンツォネッタですが、基本的にクラリネットソナタを一楽章だけ取り出したという形式の作品で、クラリネットの他サクソフォンでも演奏可能になっている曲です。緊張していると告げられた割には初めからノリノリで演奏されていたのが印象的です。時代的には後期ロマン派の作品ですが、クラリネットとピアノのきれいなアンサンブルを聴けたのは嬉しかったです。

後期ロマン派と言いますと、重厚な交響曲、たとえばブルックナーマーラーといった作曲家が取り上げられることが多いですが、室内楽にも素晴らしい人が綺羅星の如くいたということを私にはっきりと教えてくれた演奏でした。こういった演奏に出会うのが、こういったサロン風の演奏会の素晴らしい点だなあと思います。

次に、磯部周平のエレジーです。所謂「エチュード」(練習曲)ですが、簡単そうに見えてそうではないだろうと思いました。息を合わす、つまりアンサンブルの練習曲であるという印象の曲で、クラリネットとピアノが対等でありつつ、お互いの音を聞きあわないと崩壊する作品です。旋律だけ聴きますと此方は簡単そうに見えるんですけど・・・・・まあ、作曲者は現在NHK交響楽団の首席クラリネット奏者ですから、時代的にはもちろん現代曲です。それ故、簡単などと素人が言えるような作品であるはずがありません。

3曲目の「アムゼルの森」は白川氏自身の作品ですが、これもまた難しい曲です。そもそも、アムゼルとは鳥の名前でして、それをクラリネットで演奏するのはとても難しい曲です。え、演奏したことないだろうって?もちろんです。しかし、誰しも義務教育でリコーダーを吹いていますよね?そのリコーダーで音が目まぐるしく変化する音楽を、素人の私たちはどれだけきちんと演奏できるでしょうか?そこから推測が十分可能なのです。つまり、それだけ音が目まぐるしく変化し、それにピアノもついて行かなければならない作品なのです。これを合わすには、熟練した技術とお互いの信頼がなければ難しいでしょう。白川氏のクラリネットもさることながら、川辺女史のピアノのサポートが素晴らしいです。常に冷静にリズムをとり、アンサンブルの基礎を形作っています。

4曲目のバーンスタインソナタは、いかにも時代を感じさせる不協和音が多い作品ですが、それでいでどこか古典的でもあります。時代からすれば当然のこと、新古典主義音楽です。それにしても、バーンスタインクラリネットソナタが聴きましたのは収穫でした。20世紀の音楽にも、素晴らしい作品があるということを教えていただきました。3楽章と普通のソナタとは楽章構成は異なりますが、しかしそれ以外は比較的わかりやすい音楽が鳴っていますから、もっと演奏されてもいい作品だなあと思いました。まあ、それを気づかせてくださるのは、御両人の演奏の素晴らしさでもありますが。

休憩後の第5曲は、これも白川氏自身の作品である「舞」。無伴奏となっていることから、これはクラリネットのみの作品です。そもそもは、日本舞踊のための舞曲でして、それ故か途中所謂クラシックにおける舞曲とは異質な、硬質なリズムが存在します。ところがそれがとても私にとっては自然でした。昔の私からすれば信じられない現象が起きていました。しかし、それは今まで食わず嫌いで音楽をえり好みしてきたせいであり、自然体で様々な音楽をうけいれられるようになってきている現段階では、むしろ自然なことなのだろうと思っています。たとえば、以前日本人の作品で、現代舞踊のための作品を取り上げたことがあります。

今月のお買いもの:橋本國彦 交響曲第1番・交響組曲「天女と漁夫」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1006

こういった作品が聴けるようになったからこそ、自然と耳を傾けることが出来たのだろうと思っています。その意味では、あまり現代音楽を聴かれない方に取りましては、難しい作品だったかもしれませんが、そういった異質な点を面白いと感じられればOKでしょう。演奏者も初めからそんな気持ちだったようですし、サロンなのですから肩の力を抜いてちょうどいい感じでしょう。

最後のブラームスは、がっちりとしたブラームスらしい、渋い作品です。最晩年とも言える1895年に初演されていますが、それ以前にも私的に演奏がなされている作品です。

クラリネットソナタ (ブラームス)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF_(%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9)

実は、私はブラームスクラリネット作品は好きでして、しかしまだまだ聴いていないものも多いジャンルなのです。室内楽の大家とも言うべきブラームス。様々な作品がある中で、この第2番は明るい曲ではあるんですが、どこかさみしげな部分も内包してます。そういった部分が、ブラームスの作品の妙ですが、それをとにかく自然に演奏してくださるのは素晴らしいと思います。

そんなのはプロなら当たり前でしょ?とおっしゃる方もいらっしゃるかと思います。確かに。しかし、明るい中にさみしさが内包されるということは、作品の表情の奥深さを意味します。それを、淡々と演奏するなかで、しかし段々気持ちが入っていく中で、バランスを採りつつ端正な演奏を心がけたうえで実現するのは、そう簡単なことではありません。この点はさすが白川氏だと思います。もちろんそれは、川辺女史のサポートあって故でもありましょう。どんな場面でも動じず、しっかりとアイコンタクトして演奏を始めるその姿勢は、適度な緊張感を会場に与え、会場全体をつつんでいました。

緊張すると言いながらも、素晴らしいパフォーマンスを見せてくださったご両人。自分自身のパフォーマンスはどうなんだろう?と振り返る機会を作ってくださったように思います。作品に感動するだけではなくて、こういった「振り返り」を与えてくださった今回の演奏会は、私にとってはとても大切なものの一つになりそうです。



聴いてきた演奏会
クラリネットの魅力 シリーズ3 〜私のお気に入り〜
G.ピエルネ作曲
カンツォネッタ作品19
A.F.Gバッハ〈磯部周平)作曲
エレジー
白川毅夫作曲
アムゼルの森
無伴奏クラリネットのための「舞」
レナード・バーンスタイン作曲
クラリネットソナタ
ヨハネス・ブラームス作曲
クラリネットソナタ第2番変ホ長調作品120-2
白川毅夫(クラリネット
川辺千香子(ピアノ)

平成24(2012)年10月13日、東京港区、デザインKホール六本木



このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。