かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト全集より 宗教音楽16

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、モーツァルト全集の宗教音楽の第16回目は、モーツァルトの宗教小品の2つ目です。

レジナ・チェリやオフェルトリウムといった作品が主なのですが、こういった作品も決して無視できないので、この編集はこれで素晴らしいと思います。ただ、惜しむらくは、もう少しキリエを収録してほしかったという点なのです。

その意味では、アーノンクールのほうが優れているかもしれません。かと言って、この全集はだからなくてもいいのかと言えば、必ずしもそうではありません。この第16集はいくつか音楽史上重要な作品を纏めているからです。テ・デウムK.141、「ミゼリコルディアス・ドミニ」ニ短調K.222(205a)がそれです。

いずれも、対位法を駆使した素晴らしい作品であり、さらにK.222は第九第4楽章主題に似た旋律があることが指摘されています。ベートーヴェンハイドンだけではなくモーツァルトも研究した上で自らの作風を確立した作曲家ですので、影響を与えたとしても不思議はありません(しかも、偶然か主調も同じニ短調です)。

私たちは音楽史上、どうしてもハイドンモーツァルトベートーヴェンという順番で考えてしまいがちです。それはあながち間違いではありません。確かに三人の生まれた年代はその順番になりますし、また楽器が発達した歴史を考える時には、確かにそうなります。しかし、音楽がどう影響を与えているかとなると、ことは複雑になります。私の意見では、ハイドンモーツァルトベートーヴェン、です。

もし、モーツァルトがもっと長く生きてさえすれば、確かにハイドンモーツァルトベートーヴェンになったはずだと思うのですが、何分モーツァルトは早くデビューし早逝してしまいました。ですから、本来モーツァルトがもっと遅い時期に大成させるべきものを受け継いだのが、ベートーヴェンであったといえるように思います。

しかも、ハイドンも19世紀まで生きています。そういった各々の人生というものと作品を照らし合わせると、様式という点では、やはりハイドンモーツァルト→ベートーヴぇンということになろうかと思います。この第16集はそういった点をさりげなく提示している音源なのです。モーツァルトでいえばレクイエム、ベートーヴェンでいえば第九へと繋がる作品群が、この第16集なのです。

演奏自体も素晴らしいです。ビブラートがない旧東独の合唱団は、力強くかつ透明な、美しい合唱を響かせています。フレーズを大事にしつつ、熱いものも感じます。指揮がケーゲルということも有るのでしょう。ケーゲルは指揮者としてのキャリアを合唱指揮から始めていますから。

ケーゲルは変態演奏というイメージが強いかと思いますが、宗教音楽においては実に端正で基本に忠実な演奏をします。それが思い余って変態演奏になるというのが私のイメージで、実に演奏の王道であると思います。それはやはり、人間楽器である「声楽」という指揮からキャリアをはじめた故だと思うのです。

こういう演奏を聴きますと、イデオロギー論で東側は宗教を弾圧したという単純議論には違和感を覚えます。それは各国でまだら模様でしたし、また、弾圧具合も同様です。ならばなぜ、私がミサ曲で指摘した、アンティフォナを省略するという点はネットでは無視されているのか?これこそが、旧東独で行われた「弾圧」だったとも言えるのですから。しかし、今ではそれを指摘している人は私を含め、ごく少数になってしまいました。

ケーゲルの宗教音楽の演奏を聴くということは、「当時行われていた宗教弾圧の真の姿」を知るということであり、私は決して通り過ぎてはいけないものだと思っていますし、この神奈川県立図書館の音源は、それを教えられた音源でもあるのです。



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
レジナ・チェリ 変ロ長調K.127
テ・デウム ハ長調K.141(66b)
レチタティーヴォとアリア「それ故に大切なことは/高きを求め」K.143(73a)
オッフェルトリウム「スブ・トゥウム・プレシディウム」ヘ長調K.198(Anh.C 3.08)
オッフェルトリウム「ミゼリコルディアス・ドミニ」ニ短調K.222(205a)
聖体の祝日のためのオッフェルトリウム「ヴェニテ・ポプリ」ニ長調K.260(248a)
サンクタ・マリア・マーテル・デイ ヘ長調K.273
レジナ・チェリ ハ長調K.276(321b)
聖母マリアのためのオッフェルトリウム「アルマ・デイ・クレアトリス」ヘ長調K.277(272a)
キリエ 変ホ長調K.322(296a)
キリエ ハ長調K323=K.Anh.15
イザベラ・ナーヴェ(ソプラノ、K.127)
ウルズラ・ラインハルト=キス(ソプラノ、K.276・277)
ダグマル・シェレンヴェルガー=エルンスト(ソプラノ、K.143・198・322)
ウーテ・ゼルビヒ(ソプラノ、K.198)
アンネリース・ブルマイスター(アルト、K.277)
ローズマリー・ラング(アルト、K.322)
エーベルハルト・ビュヒナー(テノール、K.276・277)
ヘルマン・クリスティアン・ポルスター(バス、K.276)
ライプツィヒ放送合唱団(合唱指揮:ゲルト・フリシュムート《K.322・323》、ホイスト・ノイマン《K.141・222・260・273・276・277》)
ミヒャエル=クリストフリート・ヴィンクラー(オルガン、K.143・198・322・323)
ヴァルター・ハインツ・ベルンシュタイン、フォルカー・ブロティガム(オルガン、K.127・141・222・260・273・276・277)
ヘルベルト・ケーゲル指揮
ライプツィヒ放送交響楽団



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