かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト全集より 宗教音楽15

神奈川県立図書館所蔵CD、モーツァルト全集より宗教音楽を取り上げていますが、今回はその第15回目です。宗教音楽小品が収録されています。

アーノンクールのにも同じようなCDがありますが、やはりこの手はまとめてということになるのでしょう。これは演奏が再びケーゲルですが、アーンクールよりもさらに徹底してひとまとめにしています。

まずは演奏面から。とても端正で、静謐なものすらあります。所謂ケーゲルらしい熱い演奏というものはありません。しかし、血の通った、人の温かみを感じます。

特にそれを感じるのが、ミゼレーレK.85で、静謐でありながら、ドラマティックな点も存在します。フレーズを大事にするその演奏は、さすが合唱団の指揮者からキャリアが出発しているだけあるなと思います。

次に編集面です。この音源はまず小品をケッヘル番号順に並べています。これは必ずしも成立順ではないんですが、ネットで検索するときには実に役立ちます。解説はないのですが、いつも提示している「モーツァルト・コン・グラツィア」ではケッヘル番号順で検索できるようになっており、そこで調べれば直ぐに解説が出て来ますので、ありがたい話です。

Mozart con grazia
http://www.marimo.or.jp/~chezy/mozart/index.html

さらに、この音源はアーノンクールが収録していない曲も収録しており、それが第1曲目のK.20です。一応モテットということになっていますが、「モーツァルト・コン・グラツィア」ではなぜアーノンクールが入れなかったかの要因を想像することができます。

モテット「神はわれらが避難所」 ト短調 K.20
http://www.marimo.or.jp/~chezy/mozart/op0/k20.html

モテットとありますが、実際にはマドリガルであって、正式な宗教曲ではないということが分かります(新全集ではアンサンブルによる歌曲、つまり世俗歌曲にカテゴライズされています)。そのため、アーノンクールは入れなかったということが分かります。ではなぜケーゲルは入れたのでしょうか?社会主義リアリズム?それも考えられないことはないですが、社会主義者であったからこそ、この曲を世俗曲とはとらえられなかったというほうが正解でしょう。確かに
、この曲は世俗曲と言いながらも、とても静謐な音楽です。

ただ、こういった曲が生まれるというのもモーツァルトの時代を表わしているので、実に大事な一曲だったりするのです。そういうものをあえていれてきたケーゲルの判断は、けっして間違いとは言い切れません。新全集に忠実に従ったがゆえに、マドリガルは抜かしたアーノンクールとさてどちらが正しいのかということが難しいような、現代とは違った社会がモーツァルトの時代であったということは間違いないからです。教会がある一定の力を持つ時代・・・・・それは、今の私たちには理解しがたいはずです。

モーツァルトが生きた時代、そしてその社会というものまでがこの一つで俯瞰できる内容にしている点では、もしかするとケーゲルに軍配が上がるかもしれません。

私はこの全集を借りてよかったと思うのは、実にこの第15集の存在です。モーツァルトの宗教音楽を俯瞰するためには、アーノンクールだけでは不完全であるということを教えてくれたからです。いっぽうでもちろんこの音源だけでもだめで、二つないと俯瞰できないということを教えてもらったのは、とてもよかったと思っています。モーツァルトの宗教音楽というものは、単純ではないことを教えてもらったのは、幸せだと思います。



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
モテット「神はわれらの避け所」K.20
キリエ ヘ長調K.33
聖ベネディクト祭のオッフェルトリウム「スカンデ・チェリ・リミナ」ハ長調K.34
アンティフォン「チバーヴィト・エオス」K.44(73u)
ヴェニ・サンクテ・スピリトゥス ハ長調K.47
オッフェルトリウム「インテル・ナートス・ムリエールム」ト長調K.72(74f)
ミゼレーレ イ短調K.85(73s)
アンティフォン「クリエテ・プリムム・レーニュム・デイ」K.86(73v)
キリエ ニ短調K.90
キリエ ニ長調K.91(186i)
レジナ・チェリ ハ長調K.108(74d)
オッフェルトリウム「べネディクトゥス・シト・デウスハ長調K.117(66a)
ダグマル・シェレンベルガー=エルンスト(ソプラノ、K.34・47・108・117)
ローズマリー・ラング(アルト、K.47)
ラルフ・エシュリヒ(テノール、K.47)
ハンス・ヨアヒム・リッペ(バス、K.44)
ルネ・パプ(バス、K.47)
ライプツィヒ放送合唱団(合唱指揮:ゲルト・フリシュムート《K.20・33・34・44・47・72・85・86・90・91・108・117》)
ミヒャエル=クリストフリート・ヴィンクラー(オルガン、K.20・33・34・44・47・72・85・86・90・91・108)
ヘルベルト・ケーゲル指揮
ライプツィヒ放送交響楽団



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