かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:フォーレ 室内楽全集第1集2

今回のマイ・コレは、フォーレ室内楽全集第1集の2枚目です。ピアノ五重奏曲の2曲が収録されています。ピアノはユボーでかわりありませんが、弦楽アンサンブルはヴィア・ノヴァ四重奏団に代わっています。

ピアノ五重奏曲は基本的に弦楽四重奏にピアノがついたもので、これも古典派のころから作曲され続けているメジャーなジャンルですが、ここでは近代的なピアノと弦楽アンサンブルとの絶妙なコンビネーションを楽しむことができます。

派手さというのは、実はピアノ四重奏曲に較べるとないんです。それは全体的に作曲されたのが遅いという側面もあるのではと思います。第1番は1903年から06年にかけてですし、第2番は1919年から21年にかけてですから、どちらも20世紀に入っての作品になるのです。不協和音の割合はより多くなり、色彩感がより鮮明となっています。

フォーレ弦楽四重奏曲を1曲しか作曲していませんが、弦楽四重奏団のための曲と考えればこのピアノ五重奏曲もあるわけです。その意味では、3曲は弦楽四重奏のための曲があるといってもいいでしょう。

聴いていますと、明らかに演奏の難易度はピアノ四重奏曲と比べると難しいだろうなあと思います。不協和音が多く、聴いていて和声がどこへ行くか予測がつかないからです(もちろん、プロはそんなことは当り前なので苦にはしていませんが)。しかしそれは、フォーレの当時置かれた状況もあったようです。

第1番は聴覚範囲が狭まるという聴覚障害が発生したころですし、第2番はフランス国立音楽・演劇学校の学院長を退いた後の経済的不安の中でです。その上で、年齢を重ねた「枯れた部分」が相まって、激しさは幾分抑えられた、静かな音楽が存在します。

だからこそ難しい側面があり、いわゆる「情熱と冷静の間」のバランスをとることに傾注しないと、アンサンブルは崩壊することが多いのですが、さすがそれは全くありません。その上でむしろ情熱的ですらあります。第1番の第1楽章や第4楽章など、完璧で激しいパッセージが心に沁みます。

こう、「なんで自分は感動するのか」をたんなる感想文ではなく、分析をすることによって、その演奏のどこが素晴らしいのかが浮かび上がります。ぜひともアマチュア合唱団の方にはそういった聴き方もしてほしいと思います。その点では、このCDは格好の教材となるでしょう。特に、この2曲はピアノが導入部で重要な役割を果たしています。テンポを決めているのです。その部分を、ユボーはまず静かに入っています。なぜ静かに入るのかといえば、そこはピアノのみなのでテンポを決める重要な部分だからです。その後、テンポが決まったら徐々に情熱的にしています。そんな点に注目してほしいのです。

私が合唱団出身であるにもかかわらず、いろんなサロンでなぜ受け入れられるのかといえば、単に演奏をしてきたというだけではありません。そういった分析をするからこそです。しかし私はそこで単なる評論で終わるのではなく、それが読者の方の向上心に繋がるようにしたいという「志」を大切にしています。だからこそ、厳しいことも言いますし、それで終わることもしないのです。

こういった本当に完璧な演奏を聴くというのは、幸せなことだと思います。しかしながら、それをどう受け取るのかで、その後は決定的に異なるといえるかと思います。例えば、ピアノ五重奏曲は決してサロン的ではありません。個人の気持ちが強く反映されている作品ではありますが、決して気楽に演奏できる作品ではないからです。実際、2曲とも(いや、これはピアノ四重奏曲もですが)初演はコンサートであって、サロンではありません。たまたまサロンを主宰するところが主催のコンサートということはありますが、決して少人数が集うサロンではありません。もっと大勢がいる「コンサート」です。

その意味では、ベートーヴェン弦楽四重奏曲で目指した、プロのための音楽というレールの上にしっかりと乗っているといえるでしょう。

印象的には複雑で、じっさい和声も複雑ですが、それゆえか、実に心にストレートに入ってくるのがフォーレの音楽だと私は思っています。それはレクイエムしかりですし、この室内楽しかりです。特に、後期ロマン派以降の作曲家は、まず室内楽から入るのが理解への近道であると私は思っています。それは編成が単純で、どんな音が鳴っているかが分かりやすいからではないでしょうか。そのきっかけとなったのがこのCDであることは間違いありません。それがたとえば、わたしにとってはバルトークや、ショスタコーヴィチといった作曲家の作品へと目を真剣に向けるきっかけになっているのです。

それにしても、演奏の素晴らしさもさることながら、編集の素晴らしさも述べておきたいと思います。お分かりかと思いますが、実はこれ、年代順になっているんですね。フォーレ室内楽の変遷が、ピアノと弦楽アンサンブルのための曲によって俯瞰できるようになっているわけなのです。こういった編集はいいことだと思います。実は第2集はソナタで、まだ買えていないのですが、某店舗で中古を見つけていますので、いま目をつけているところです。手に入りましたら「今月のお買いもの」コーナーでご紹介したいと思っています。



聴いているCD
ガブリエル・フォーレ作曲
ピアノ五重奏曲第1番ニ短調作品89
ピアノ五重奏曲第2番ハ短調作品115
ジャン・ユボー(ピアノ)
ヴィア・ノヴァ四重奏団
(ワーナー・クラシックス エラート WPCS-10979)



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