かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:フォーレ 室内楽全集第1集

今回のマイ・コレは、フォーレ室内楽全集の第1集です。ユボーのピアノを中心とするアンサンブルです。フォーレ室内楽の演奏では名盤といわれているものです。

これを購入しましたのは8年ほど前だったと思います。当時、室内楽へと自分の興味が向き始めていた時でした。

其れ以前にも、このブログでもブラームスを取り上げたりもしていますが、もちろん聴いています。このCDが思い出深いのは、それまでオーケストラ曲ばかり聴いていた私が、オケ曲も室内楽もと舵を切る、そのきっかけになったものだったからです。

といいつつも、このCDを買ったきっかけは、実に個人的なものでして、当時好きな人がいたのですね。そしてたまたま、どこかでフォーレの曲を耳にして、胸がかき乱され、購入したのがこのCDです。私には珍しく山野でも銀座の本店ではなく、地元の店舗で購入しています。それだけ、急いでいたとも言えるかと思います。

勿論、職場は当時銀座でしたから、本店で買ってもいいわけなんですが、確か休日に買ったと記憶しています。それだけ待てなかったのですね。しかも当時、フォーレ室内楽は全集でと考えていました。今の図書館で全集を借りるということの萌芽がここにありました。それは間違いなく、史学科卒の学士である私の視点がはっきりと反映されていました。

その時、第2集も並んでいましたが、まず興味を持っている弦楽アンサンブルのほうを優先して買ったのでした。それがこのCDです。

第1集は2枚組でして、今回はまずその一枚目をご説明しましょう。収録曲はピアノ四重奏曲第1番と第2番です。

もともとフォーレは興味を持っていましたし、さらにはレクイエムを歌ったことも有る作曲家でした。フォーレはフランス印象派の作曲家で、教会のオルガニストからキャリアをはじめた作曲家です。ですから当然の如く、ピアニストであるドビュッシーサン=サーンスと言った作曲家の影響を受けています。その上で、当時の音楽的な潮流であった、無調的という影響も同時に受けています。

ガブリエル・フォーレ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AC

では、「ウィキの記述とは異なりますよね?ドビュッシーは無調的な音楽とは一線を画したはずですね?」という疑問があるかと思いますが、ことはそう単純ではないのです。無調音楽のきっかけを切り開いたワーグナーの毒というものはそうたやすく逃れられるわけではありません(そもそも、ワーグナーの音楽を紹介したのがサン=サーンスでした)。しかし、フォーレはそれから逃れることもせず、かといって支配されることもしなったのです。当時の音楽潮流としっかりと向き合ったうえで、自分の音楽を形成していった作曲家です。

ですから、彼の室内楽は一種独特の雰囲気を持っています。簡単に言えば、幻想的なのですが決してそこに何か隠された意味があるとか、そいういったものがない、健康的な魂の叫びのような音楽です。

第1曲目のピアノ四重奏曲第1番がそういった雰囲気を十分に持っています。1876年から79年にかけて作曲された作品で、1880年に作曲者がピアノを担当して初演されています。4楽章形式で、形式的には何も冒険はしていないにも関わらず、音楽はとても色彩的で、それでいて妖しい雰囲気は持っていないのが特徴です。

その点に、私は初め聴いたときに驚かされました。おや?もっと妖艶な雰囲気を持っていてもいいはずなのに、と。それがなく、むしろ健康的だったのです。演奏者たちがトップアーティストたちであるということも有るのでしょうが、そこに美しい花が咲いているような、そんな雰囲気を持っています。

さらに私を室内楽の世界へと浸かっていくきっかけになった曲が、2曲目の第2番でした。1886年に完成し、87年に初演された曲ですが、それは「レイクエム」の前年なんですね。第1楽章はまるで、恋人を想うかのようにピアノが連打される音楽で、じっさいユボーは冷静さを保ちつつ、ピアノを「ぶっ叩いて」います。弦はアインザッツがとても強く、「君への想いが抑えきれないんだ!」といわんばかりです。

第1番は確かに作曲の時期にフォーレは失恋していますが、第2番はCDの解説でも、またウィキでも恋愛に関する記述がありません。もしかするとそれは、両親を亡くしたことからかも知れません・・・・・

1885年に父をフォーレは亡くしています。母も第2番が初演された87年に亡くなっています。そういった人を想う気持ちが、この第2番には込められているのかもしれません。第2番を作曲した時、すでに彼の父は故人です。その上、数年前には失恋を経験し、もしかすると母も思わしくない・・・・・そういった状況では、切なく、人を想わずにはいられなかったでしょう。

実は当時、私も同じように母を亡くした直後でした。大規模な作品ではレクイエムくらいしか癒されるものがなく、故人だけではなく今生きている人を想ったときに、自分の心を癒してくれる曲がほとんどないという事実にぶち当たり、悩んでいた時に出会ったのがこのフォーレだったのです。しかし、それでも状況はなかなか改善されることがなく、その後数年を要するのですが・・・・・

その数年後に出会ったのが、ベートーヴェンの弦四だったのです。ここから、私の好みはオケだけはなく、一気に室内楽へと向いていきました。今まで「神奈川県立図書館所蔵CD」のコーナーで室内楽が比較的多いのはそのせいなのです。いっぽうでマイ・コレではほとんどありませんよね?せいぜいブラームスです。それはちょうど母を亡くしたあたりから、私自身の音楽の好みが変化したことがあるのです。高邁な精神を述べるような交響曲だけではなく、もっと個人的な感情を吐露するサロン的な音楽もと・・・・・

ユボーのピアノが素晴らしいという点も、あったのだと思います。タッチの柔らかさが生み出すふんわりとしつつしっかりとした音楽。それにきちんとアンサンブルする弦。その上で「情熱と冷静の間」が絶妙にバランスが取れているその演奏は、だからこそ聴く者の心をかき乱す一方、なぜかき乱されるのかを冷静に顧みさせてもくれます。

私の音楽の趣向をコペルニクス的転回へと誘ったジャンルの一つです。私にとって、バッハのマタイ受難曲とおなじくらい、人生にとって大事な作品です。



聴いているCD
ガブリエル・フォーレ作曲
ピアノ四重奏曲第1番ハ短調作品15
ピアノ四重奏曲第2番ト短調作品45
ジャン・ユボー(ピアノ)
レイモン・ガロワ=モンブラン(ヴァイオリン)
コレットルキアン(ヴィオラ
アンドレ・ナヴァラ(チェロ)
(ワーナー・クラシックス WPCS-10978)



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