かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:アルヴェーン 交響曲全集5

今月のお買いもの、掲載が間に合わず5月に買ってきたものをご紹介していますが、今回はアルヴェーンの交響曲全集の第5集です。第5番とバレエ音楽「山の王」が収録されています。

まず、第5番ですが、アルヴェーン最後の交響曲です。1942年に作曲が着手され、彼がなくなる時まで作り続けた作品です。というと、未完成なのでは?と思うかもしれませんが、一応の完成は見ている作品です。ブルックナーのように完成してからまた手を入れるという作品だったので、アルヴェーンのあたまの中では未完成だったといえるでしょう。

この第5番は、第4番とは一転、古典的な4楽章制を採り、形式的にもはっきりと古典的な交響曲とわかる作品となっています。しかし、和声は彼独特のものが反映されており、特に第3楽章スケルツォは、打楽器が主旋律を担当し、それが諧謔的で個性を放つ音楽となっています。その第3楽章は第4楽章の序奏のような役割をもち、まるでベートーヴェンの第5番を彷彿とさせます。

当時の名だたる作曲家たちに影響を受け、その上で自分の個性を確立したアルヴェーンであれば、この作品で交響曲に独立したジャンルを確立させなおかつ精神性をもたせた、ベートーヴェンへ回帰しようという試みはごく自然な行動だったのかもしれません。不協和音とはっきりした旋律線のバランスは絶妙で、なぜこの曲がウィキのいうようにあまり演奏されることがないのかが不思議でなりません。

ヒューゴ・アルヴェーン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B4%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3

未完成であるというのがその理由なのかもしれませんが、かといってどこかで尻切れトンボになっているわけでもありません。全体としてはまとまっている作品です。ブックレットの英語解説を読んでのこれは私の想像ですが、アルヴェーンはこの曲に高い精神性を与えようとしていたのでは、と思っています。第5番という番号、第3楽章と第4楽章がまるでつながっているような形・・・・・これで主調がハ短調であれば、完璧なのですが(この曲はイ短調です)。

ベートーヴェンだけではありません。第4楽章では、ブルックナーワーグナーといった作曲家の影響も色濃く、どう見ても過去のシンフォニストへのリスペクトがこの曲には見え隠れします。私が評価しているのは、それでもアルヴェーンの音楽が持つ、北欧的なさわやかさというものは決して失われていないという点です。その絶妙なバランスは、本当に素晴らしい!

もっと評価すべきだとわたしは思います。演奏はとても冷静ですが、だからこそ、演奏者たちのこの曲への想いというのが、はっきりと伝わってくるのです。

カップリングの「山の王」は、バレエ曲だけあって、雰囲気的にはまるで映画音楽のような作品ですが、古今の作品が映画音楽のようであるわけではありません。その点では、この作品も個性的な作品であるといえるでしょう。1916年から23年にかけて作曲された作品ですが、その時代というものを感じさせます。ショスタコーヴィチも主要な作曲ジャンルに映画音楽がありますが、映画というのが単なる娯楽から芸術へと昇って行く時代の作品だろうと思います。最初はとても劇的に始まりますが、最後は楽しく終わります。

最後の組曲「グスタフ2世アドルフ」からのエレジースウェーデン王室の葬送行進曲として使われる曲ですが、この全集の一番最後に来ている(作品としては49なので決して最後ではない)ことを考えますと、まるでアルヴェーンの葬送行進曲としての意味をも持つように思うのは、わたしだけなのでしょうか。静かに始まり、消えゆくように終わるその音楽は、終わったのすらわかりません。ループにしておいて初めの「山の王」が始まってはじめて「あ、終わったのだな」とわかるくらい静かに終わるこの曲は、編集としてはアルヴェーンに対するオマージュの意味合いがあるとわたしは思っています。

全集というのは、その作曲家のあるジャンルを俯瞰するものでもありますが、同時に編集次第では、一つのアルバムとしての意味合いを持つと思っています。この第5集はその一つのアルバムの最後を飾るにふさわしい楽曲が並んでいます。

こうなりますと、彼が心血を注いだもう一つのジャンルである合唱曲は、元合唱団員としては聴いてみたいジャンルですし、また室内楽曲も、是非とも聴いてみたいと思います。こんな素晴らしい作曲家に出会えることは、そうあることではありません。今後も追いかけていきたい作曲家です。



聴いているCD
ヒューゴ・アルヴェーン作曲
バレエ音楽「山の王」作品37
交響曲第5番イ短調作品54
組曲「グスタフ2世アドルフ」作品49から エレジー
ネーメ・ヤルヴィ指揮
ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
(Brilliant Classics 8974/5)



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