かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:BCJバッハカンタータ全曲演奏シリーズ10

今回のマイ・コレは、久しぶりにBCJカンタータ全曲演奏シリーズを取り上げます。今日は第10集です。

第10集には第105番、第179番、そして第186番が収録されています。1723年の夏、特に7月から8月にかけて初演された作品が並んでいます。

第105番と第179番は比較的小さな作品ですが、第186番は2部構成の11曲ある堂々たる曲です。

まず第105番「主よ、裁かないでください」は1723年7月25日にライプツィヒで初演されました。全6曲と小さいながらも混声四部のソリストが要る曲です。内容としてはもう曲名そのものでして、修辞を使って最後の審判に怯える人とその解放のためには敬虔になることを問う曲です。哲学的な楽曲だと思います。

先日のマウンダー極少期の件と関連して語るとすれば、この曲はそのマウンダー極少期の社会の気風に影響されていると言ってもいいでしょう。内容的には全くプロテスタントの曲ですが、とても先鋭的であることから、8年前に終わったマウンダー極少期の気風を持った曲と言えるかと思います。

当然ですが、大気や水が一度冷えてしまうと、温まるまでには時間がかかります。その化学的な影響を内容に受けている楽曲だと言えるでしょう。この作品が初演された1723年はマウンダー極少期が終わったとされる1715年から8年たっていますが、マウンダー極少期の影響が社会的にはまだ残っている時期と言っていいかと思います。地球はすでに温まっているかと思いますが、人の心までが温かくなるまではさらに時間がかかるものです。

ですから、どうしても音楽的に先鋭的になる・・・・・特に、青年バッハとすれば、ライプツィヒ就任後まだ日の浅い時期ですし、どうしてもこういった力の入った曲調になるのは致し方ないと思います。

マウンダー極小期
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E6%A5%B5%E5%B0%8F%E6%9C%9F

次に第179番「心せよ、神を恐れることが」です。1723年8月8日にライプツィヒで初演されました。これも厳しい曲調で、特に内容的には偽善を戒めている点が特徴です。こういった正義というものを取り上げるのはプロテスタントであるというだけでなく、やはりちょっと前までマウンダー極少期であったという気象条件も、私は加味するべきと思っています。でないと、同時期の管弦楽曲の性格を見誤る可能性があるからです。それについては、また管弦楽曲を取り上げる時に触れましょう。

これも6曲で構成される比較的小さい曲ながら、カウンターテナー以外のパートを必要とする堂々たるカンタータです。

最後に第186番「つまづくな、おお魂よ」です。1723年7月11日にライプツィヒで初演されました。この曲は20年くらい後に再演もされています(1746〜1750)。とても人気だった曲と見えて、そもそもこの曲は失われたヴァイマル時代の1716年に書かれたBWV186aで、その改作にすぎません。ですからもしそのBWV186aが存在していたとすれば、作曲年は1716年とこれもマウンダー極少期が終わった直後の作品と考えて差し支えないと思います。第1曲目がト短調という調性も、私はそれを証明しているように思います。

また、内容的にもこの世の貧しさとイエスの豊かさとを対比させていまして、第1部、第2部とも暗から明へという構成を取る点も、時代を感じさせます。まさしく、原曲がマウンダー極少期が終わった直後であるということが、こういった点からも明らかになります。

ですから、重々しく演奏してしまうと、厳しい側面は強調できても、まかり間違えば重苦しいものになりかねません。その点、BCJは軽めの演奏を心がけ、厳しさはアインザッツの強さで表現しているのが私にとっては好印象です。このほうがつらい中でも決して希望を忘れなかった当時の人々の気風というものが伝わってくるように思うからです(レンブラントの絵のように)。テノール桜田亮ですが、それ以外は海外勢。しかし、桜田亮は全く遜色ありません。力強さとしなやかさを持ち合わせ、ぐっと実力をつけているのが分かります。カウンターテナーはこのころから常連となるロビン・ブレイズBCJの「評価」というものがこういったソリストを見てもわかります。

BCJがこの1723年という時期を地球物理学や気象学の側面からとらえているかどうかは、鈴木氏がそれに触れていませんのでわかりません。しかし、マウンダー極少期が芸術に与えた影響から考えますと、BCJのアプローチは私はとても正しいことと思っています。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第105番「主よ、裁かないでください」BWV105
カンタータ第179番「心せよ、神を恐れることが」BWV179
カンタータ第186番「つまづくな、おお魂よ」BWV186
ミア・パーション(ソプラノ)
ロビン・ブレイズカウンターテナー
桜田亮(テノール
ペーター・コーイ(バス)
鈴木秀美(チェロ)
櫻井茂(ヴィオローネ)
今井奈緒子(オルガン)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(キングレコード KKCC-2286)※BIS CD-951の国内盤、解説付き



このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発