かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:インマゼールの第九

今回のマイ・コレは、またまたベートーヴェンの第九です。ジョス・ファン・インマゼール指揮、アニマ・エテルナおよび合唱団の演奏です。

当時、この演奏がほしい割にはなかなか手が回らず、ようやく買った記憶があります。私としては2枚目のピリオドになります(もう一枚はまだご紹介していませんが、ガーディナーです)。

ピリオドと言えば、快速演奏というイメージが強いと思いますが、第九となるとこれが一変します。まだご紹介していないガーディナーもそうですが、このインマゼールもそうです。

確かに、第1楽章から第3楽章までは快速というイメージがぴったりだと思います。ところが第4楽章ではそれほど速いわけではありません。タイムとしては23分25秒。モダンでもっと快速の演奏はいくらでもあります。

第4楽章でピリオドらしいと思うのは、私がいつも問題にするvor Gott!(第330小節)の部分です。ここは毎度申しますがvorの二分音符を一拍としてGott!の全音符を六拍伸ばすのが普通です。ところが、インマゼールはGott!を五拍しか伸ばしていません。もう一拍は残響です。その後、Alla Marciaが静かに始まります。

つまり、思いっきり変態演奏であるわけです。しかし、ピリオド楽器の性能というものを考えた時、この解釈もアリなのかなって思います。特にこの演奏はアントワープの教会で収録されているもので、そういった点を指揮者インマーゼルは考えているということでもあります。この点はモダンのスウィトナーとは若干異なるアプローチですが、演奏に似通っている点はかなりあるように思います。

マイ・コレクション:ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/217

しかし、初演時のケルントナートーア劇場は果たして残響はどうだったのかと考えた時、この解釈が必ずしも正しいとは限りません。現在劇場はなくホテルが代わりに建ってしまっていますが、そもそもが歌劇場であったということを考えますと、この当時の歌劇場からして、残響は2〜3秒ほどと考えていいのではないかと思います(教会ですとほぼ4秒です)。

ケルントナートーア劇場
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%A2%E5%8A%87%E5%A0%B4

それと、初演の編成です。以下のサイトでそれが提示されていますが、この編成でかつアマチュア(当時の意味でのなので現在とはレヴェルが違いますが)が入っていることを考えますと、むしろスウィトナーの解釈のほうが正しいように思います。

第九初演時の楽器編成
http://kcpo.jp/legacy/33rd/B-Sym9/first.html

となると、ますますこの演奏は爆演系の変態演奏にカテゴライズしていいのでは?と思います。その意味での評価というものは無いように思います。

この演奏、というよりもCDなのですが、なんといっても新ベーレンライター原典版に準拠している点も見逃せない特徴です。この演奏がほしかったのは、ピリオドでかつ新ベーレンライター原典版による演奏で、なおかつ校訂者デル・マールの解説が載っていたから、なのです。

ここではそれは書ききれませんが、校訂者がどこに注目しているのか、そして演奏者はそれを受けて何を実際面で重視しているのかが、この演奏ではよくわかるのです。第3楽章までは古典派であり、第4楽章では明らかにロマン派、いや、それよりもっと彼方へ行っている・・・・・その第九の特徴がまさしく前面に押し出されています。

演奏面ではそれを受けて気品すら全体に漂っています。第九とはこんなにも構成美とロマンティシズムとを兼ね備え得ているのかと考えさせられます。

なぜ今、指揮者の多くが新ベーレンライター原典版を取り上げるのか、その一端がここに集約されています。



聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」
マリー=ノエル・ド・カラタイ(ソプラノ)
ミラ・クルース(アルト)
グレン・シーベルトテノール
ウルフ・ベストライン(バス)
ジョス・ファン・インマゼール指揮
アニマ・エテルナおよび合唱団
(Sony Classical SRCR2462)



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