かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:マルチヌー 交響曲全集2

今月のお買いもの、4枚目はブリリアント・クラシックスから出ているマルチヌーの交響曲全集の第2集です。交響曲第3番と第4番が収録されています。

まず、マルチヌーという作曲家がどんな作曲家なのか、ウィキのURLを再掲しておきましょう。

ボフスラフ・マルチヌー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%95%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%8C%E3%83%BC

チェコに生まれ、音楽の勉強をするためにパリへ行ったはいいが、ナチスの台頭によって国どころか活動の場所としてのヨーロッパを追われ、アメリカへわたり、戦後は帰国の念を持ちながらヨーロッパでその生涯を終えた20世紀の作曲家であり、多ジャンルを作曲した多作家でした。

交響曲に関しては、6曲書いていますが第1番から第5番まで、つまりそのほとんどがアメリカで作曲されたものです。そのうち第4番までがアメリカで初演されています。つまり、この第4番までがアメリカで作曲され、初演された交響曲であるということになります。

しかも興味深いことに、第1番が作曲された1942年から5年連続で交響曲を一つづつ作曲しているのです。普通であれば一つの時期に区切られますし、もちろんマルチヌーの作品区分からもこれらはアメリカ時代とくくられるわけなのですが、よく聴きますとそれぞれに年ごとに違いが出ています。それはそのまま、時代の移り変わりを表わしています。

第3番は1944年に作曲された作品です。クーセヴィツキ―のボストン交響楽団での活動20周年を記念する作品ですが、ウィキの記載通りどこか陰鬱な雰囲気を持った曲です。ときたま明るい部分が散見されますが、それはおそらくウィキの記載とは反対に、戦況が次第に好転しつつあることを鑑みてなのかもしれません。いずれにしても全体的には陰鬱な雰囲気に包まれ、いつ終わるとない戦争が影を落としていることが見て取れます。

この時期アメリカは国力からすれば確かに日本やドイツを圧倒していましたが、二正面作戦を継続するというのは並大抵のことではありません。マルチヌーは大陸出身だからこそ音楽に強く出たのでしょうが、この曲からはそもそもアメリカもあまり明るい雰囲気ではなく、務めて明るくしていたことが伝わってきます。クーセヴィツキ―の20周年は果たしてどんな雰囲気のなかだったのか、想像できる作品です。

形式的には3楽章制を取るのは興味深い点ですが、ソナタ形式を採用するなど、この時期のマルチヌーの交響曲の特徴がよくあらわれている作品です。英文のブックレットによりますと、弦楽部はコレッリの影響もあるとの記載があります。当時マルチヌーがいかに古典へ理想を求めていたかがわかる点だと思います。

続く第4番は1945年に作曲された作品です。戦後の祝祭感があふれる作品で、第2楽章では祖国チェコの旋律が使われており、全体的にもスメタナドヴォルザークと言った作曲家の影響が散見される作品です。しかし今までのコスモポリタン的な雰囲気も持っている作品で、そのバランスが素晴らしい作品です。再び4楽章に戻していますが、このあたり楽章制に注目するだけでも、とても興味深いことが分かってくるような気がします。

例えば、第3番が3楽章制であるのは、3楽章制がフランス風を意味することから、何かしらの暗号を意味しているような気が私はしています。

ノルマンディー上陸作戦
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E4%B8%8A%E9%99%B8%E4%BD%9C%E6%88%A6

もちろん、ブックレットもこれにふれていはいませんし、ウィキにも記載がありません(そもそも、ウィキには第3番の項目すらありません)。しかし、1944年でしかも実際に初演されたのは1945年であったということを考え合わせると、ノルマンディー上陸作戦がマルチヌーの念頭にあったことは否定できないような気がするのです。それは当時、フランス解放を意味し、それによってヨーロッパ解放を意味したからです。

つまりここで、第2番と第3番はつながってくるわけなのです。それは第4番へもつながります。なぜ4楽章制に戻したかと言えば、それは戦争が終わったことを素直に喜んでいることなのですから。チェコはもともとドイツ音楽圏ですから、楽章制からすれば交響曲において古典派以来4楽章を伝統にしてきました。だからこそ、チェコの解放を喜んで、4楽章制にしたという考え方も、十分できます。

もちろん、これは楽章制とその知識による私の想像でしかありません。が、こういった側面からマルチヌーの音楽を聴きますと、いきなりいろんなものが心に湧き上ってくるのですから不思議です。

ヤルヴィの指揮とそれに従うバンベルク響の演奏は、まことに端整なのにドラマティックです。私にとってマルチヌーは全く初めての作曲家ですが、まるでいつか聴いたような、そんな気すらしてくる音楽を奏でてくれるから不思議です。それはもしかすると、そもそもマルチヌーがドイツ音楽圏の作曲家であるということを如実に語っているのかもしれません。フランスでもマルチヌーは学んでいますが、退学させられたと言ってもプラハ音楽院に通っていますし、そして何年かはチェコ・フィルの団員として、祖国の音楽家やドイツ、オーストリアの作曲家の作品に触れているわけなのですから。

彼らにとってこの演奏はごく自然になせる業なのかもしれませんが、それはやはり音楽家がドイツ文化圏ということが強く反映されているからなのかもしれません。



聴いているCD
ボフスラフ・マルチヌー作曲
交響曲第3番
交響曲第4番
ネーメ・ヤルヴィ指揮
バンベルク交響楽団
(Brilliant Classics 8950/2)



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