かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:ラッスス ヴィラネッラとモレスカ集

今回のマイ・コレは、オールランドゥス・ラッススのヴィラネッラとモレスカ集です。リナルド・アレッサンドリーニ指揮、コンチェルト・イタリアーノの演奏です。

このコンチェルト・イタリアーノというのはイタリアの古楽団体で、実はアカペラの合唱団です。男女合わせて10名程度の少数精鋭です。

ある意味、このCDほど私はヨーロッパを感じるものはありません。少数でも素晴らしいアンサンブル、それを縦の線ではなく横の線で合わせていく演奏手法。そして一見するととんでもない内容だけれど、形式的には重要な古典への挑戦。どれをとっても日本の団体では絶対に実現してくれない内容です。

まず、ラッススをご紹介しましょう。いろんな表記がありますが、冒頭の私や下記のウィキなどが一般的な表記です。時代的にはルネサンスの作曲家です。

オルランド・ディ・ラッソ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%BD

宗教曲で主に有名な人で、それは日本のアマチュア合唱団も数多く取り上げています。ただ、この人は宗教曲と同じくらい世俗曲でも有名な人で、そのうち日本でもよく歌われているのがこのCDにも収録されている「愛しのマドンナ」と「こだま」です。実は、以前所属していた合唱団でその二つを歌うことになりまして、レファレンスで買い求めたのがこの一枚でした。

この二つはマドリガルと誤解されていますが、正確にはそのうちのヴィラネッラです。しかし、ラッススのヴィラネッラ、そしてモレスカはトンデモない代物だったのです・・・・・

それを説明するには、ヴィラネッラとモレスカというものがどういったものかを説明してしまうほうが早いでしょう。

http://2style.net/misa/kogaku/uta.html

基本的はマドリガルの一種で、ナポリで発展した庶民の旋律を使った音楽のことを言います。外声部で禁則である連続5度をわざと使うことによって、田舎的な雰囲気を出すのが特徴です。

和声における禁則
連続1度  連続5度  連続8度
http://www.mmjp.or.jp/music-access/contents/wasei/jyoshou03/kinsoku.htm

モレスカはさらに、その旋律や言葉にアフリカ由来(ムーア人)のものをつかったものを言います。冒頭の「アッララー、ピア、カリア」などがそれに当たります。奴隷であった黒人の旋律がもとになっていまして、たいてい性的な表現が含まれていることが多いのが特徴です。

性的な表現はヴィラネッラもそうですが、必ずしもヴィラネッラは性的な表現を含むとは限りません。しかし、ラッススの作品では含むことが多く、それは当時こういった旋律が黒人をはじめとする下層の人たちによって歌われていたことを示します。そして、まさしくラッススが注目したのがそういった下層の人たちでした。

ラッススの功績は、宗教曲というまさしく聖なる音楽を手掛けながら、決して庶民の音楽を袖にしなかったことです。音楽に上下はない・・・・・それをまるで地で行く作曲家であったということなのです。

トンデモないものというのは、それが故にラッススの音楽が持つ「性的表現」なのです。さらに言えば、当時の社会まで写す鏡になっていることです。たとえば、上記に挙げた「愛しのマドンナ」は、実はドイツの「田舎」兵隊がイタリアの女性を口説くのを笑い飛ばす歌です。つまり、当時ドイツが田舎とみなされていたことがこの一曲でわかるのです。

こういったものにはこのCDの指揮者ですら、どう解釈すべきなのか迷ったという記述がブックレットに記載がありますが、それは聴衆たる私もでした。ぶったまげたという表現が適当でしょう。それにしても、コンチェルト・イタリアーノはよくその性的表現などを絶妙に表現しています。おどけながらも決して崩壊しないアンサンブルは、高い実力を私たちに見せてくれます。

特に、「愛しのマドンナ」では笑い転げる演奏ですが、決してアンサンブルは崩壊していません。高いアンサンブルを保ったまま、完全におどけて見せています。しかも、テンポはめちゃくちゃ。まるで「ねーちゃん、オラとつきあってくんねえか〜、もうたまらない〜」って感じで歌っていても、アンサンブルは高いままです。ですから、もう笑い転げるしかありません。

これがヨーロッパの芸術の基礎なのだなと理解するまでにはしばらく時間がかかりましたが、そういった素養がもとめられるのがそもそも本場の音楽なのだなと知ったきっかけの一枚です。きちんとした音楽と形式で、性的なものまで表現する・・・・・それが、クラシックのそもそもの基礎なのだ、と。

以下に本場での演奏の様子が紹介されているサイトを挙げておきますが、さすがだと思います。

Innsbrucker Festwochen der Alten Musik 2003
AUS MONTEVERDIS MADRIGALBUECHERN
http://www.kiwi-us.com/~tujimoto/Text/ab2003/030813.html



聴いているCD
オールランドゥス・ラッスス作曲
ヴィラネッラとモレスカ集
リナルド・アレッサンドリーニ指揮
コンチェルト・イタリアーノ
(東京MPULUS MOPS 30-94)
※元々輸入盤で、日本語解説なしですと品番はOPS 30-94となります。



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