かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ストコフスキーの第九

神奈川県立図書館のライブラリ、今回はストコフスキーが指揮する第九です。

私の世代では、第九のいわゆる「変態演奏」の代名詞がストコフスキーでした。

レオポルド・ストコフスキー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%AA%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC

まあ、なぜ変態演奏が多いかはほとんどこのウィキの記述で言い尽くされてしまっているのではないでしょうか。父母ともに移民でかつ国籍は保守的な文化を持つ英国。それゆえに活躍の場所がアメリカであったこと、そして解釈が楽曲の改変までに至ることもしばしばだったこと、です。

こういった指揮者は特にストコフスキーの年代であればムラヴィンスキーやゴロワノフなど結構いたことも有りまして、特に変態演奏系を好むクラシックファンには絶大な人気を誇った指揮者です。で、そういった指揮者は以前の私であれば嫌ったタイプでして^^;

ですので、なかなか食指が動かなかったのですが、ようやくこのあたりの指揮者の演奏も聴いてみようかという段階に入ったかな〜という気がします。それで借りましたのがこの音源でした。

収録曲は第九とワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第3幕への前奏曲と弟子たちの舞踏、そしてマイスタージンガーの入場なのですが、ワーグナーと第九とで全くアプローチが違うことに驚かされます。ワーグナーではむしろ端整とも言うべき演奏をしていますが、第九になりますと一転、テンポアップしつつそのテンポが揺れますので、オーケストラがついて行けないこともしばしばです。

オーケストラはロンドン交響楽団であるにも関わらず、です。1967年の録音ですが、その前年のN響のほうがよほどアンサンブルとしては素晴らしく思えるくらいです。それくらい、ストコフスキーが前のめりになっているのが分かります。

この音源はライヴ録音であるということもそうなっている理由なのでしょう。しかしそれは昨日取り上げましたマタチッチ/N響も同じであるわけなのですが、この差は面白いです。どちらも気持ちの昂揚が演奏に現われてはいるんですが、アンサンブルが崩壊寸前までいっているのはこのストコフスキーのほうです。それをロンドン響が何とか寸前で踏ん張っているというのがまず第一印象です。

ただ、第3楽章になるとようやくアンサンブルはよくなりますが、第4楽章にとんでもない変態演奏が待っています。そう、いつも私がこだわるvor Gott!の部分です。ここ、なんと3拍で通り過ぎていきます!

ストコフスキーの第九と言いますと、なんといってももうひとつの特徴が「快速」なのです。デイヴィッド・ジンマンが新ベーレンライター原典版を使った演奏をする前まで、このストコフスキーの演奏が快速盤として知られていました。実際、この演奏でも第九はほぼ63分です。当時70分前後がふつうだった時代ですから、いかに快速かが分かります。それを象徴する部分だと思います。

それ以外は、さすがロンドン響だなあというサウンドを聴かせてくれます。昨日のN響が演奏していた東京厚生年金会館のような残響でありながら、N響よりもやわらかい音色、しなやかでしかし力強い表現、アインザッツの強さなど、合唱団もふくめて素晴らしい演奏です。第4楽章冒頭のティンパニをぶっ叩いてくれるのも私好みです^^;

それにしても、vor Gott!の部分は腰を抜かします。ただ、それがまた歯切れのいい演奏に繋がっていることも確かなのがストコフスキーのすごいところでもあります(ただ、何度も申しますがこれは通常の決まり事から外れています。だからこそストコフスキーはすごいのです)。こういった指揮者は確かになかなか出ないでしょう。ただ、だからと言って彼が楽典などをぞんざいに扱っていたのかと言えば、決してそうではないわけです。そうであれば、ワーグナーでの端整な演奏を説明ができません。

まず、端整な演奏が基本にあってこそ、変態演奏は成り立ちうるのだということを、ストコフスキーは教えてくれています。その点では、当日演奏されたマイスタージンガーの第1幕への前奏曲も聴きたかったなと思います。時間の都合上、削除されたそうです。

それともうひとつ注文を付けるならば、できればホルンをワーグナー校訂でやってほしかったなあ、と・・・・・ま、これはあくまでも私のこだわりなのですけどね。せっかくワーグナーから第九と来たのであれば・・・・・変態演奏ストコフスキー様ですから〜

ま、そこまでやってしまったら、濃すぎですね^^;



聴いている音源
リヒャルト・ワーグナー作曲
組曲ニュルンベルクのマイスタージンガー」より:楽劇第三幕への前奏曲、弟子たちの踊り、マイスタージンガーの入場
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」
ヒーザー・ハーパー(ソプラノ)
ヘレン・ワッツ(コントラルト)
アレクサンダー・ヤング(テノール
ドナルド・マクインタイル(バス)
ロンドン交響合唱団
レオポオルド・ストコフスキー指揮
ロンドン交響楽団



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