かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:テンシュテットとロンドンフィルの第九

今月のお買いもの、2枚目はディスクユニオン御茶ノ水クラシック館で買い求めました、テンシュテット指揮、ロンドンフィル他の第九です。

これも700円。激安です・・・・・まあ、中古ですからね。でも、CDですから中古とは言え音質は全く問題ありません。

BBCの放送をCD化したもののようです。こういったことを、NHKもどんどんやってほしいなと思います。ようやくいろいろ出て来るようにはなりましたけれど・・・・・

テンシュテットの指揮の物を買うのは20年ぶりくらいです。以前、ワーグナーの物とベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の物をこのブログでも取り上げていますが、それ以来になります。

マイ・コレクション:ワーグナー ワルキューレの騎行
http://yaplog.jp/yk6974/archive/312

マイ・コレクション:ワーグナー 管弦楽曲集�U「タンホイザー
http://yaplog.jp/yk6974/archive/318

マイ・コレクション:ベートーヴェンブルッフ ヴァイオリン協奏曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/389

テンシュテットと言いますと、その端整な音楽づくりで有名なのですが、この第九ではまったく違った指揮を見せています。

全体的に、オケが前のめりで、走りがちなところをテンシュテットが手綱を引き締めているという印象です。アマチュアオケほどアンサンブルが崩壊しそうにはなりませんが、走り気味になっていることでドタバタ気味になりそうなところをテンシュテットがたしなめています。

残響のせいかもしれません。場所はロイヤル・アルバート・ホール。まるで教会のような残響です。イギリスだからいい響きのホールばかりとは限りません。というより、いつも自分たちが使っているホールとは違う場所で演奏していることのほうがこの演奏になっている原因かと思います。

ロンドンフィルは、本拠地はロンドン・フェスティバル・ホール。当然、響きが違うはずです。

ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E7%AE%A1%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%A3

ロイヤル・フェスティバル・ホール
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB

プロでもホールが違えばこういったことが起きることがあります。いや、ふつうはなかなか起きませんが、この第九という曲は魔物が潜む故、プロでもこういったことが起こり得るのです。ですから、アマチュアオケである宮前フィルが苦しんだのは、当然だと言えます。

コンサート雑感:2011かわさき市民第九コンサートを聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/860

第九という曲は、演奏しますとどうしても情熱が高まる曲です。ですから、「情熱と冷静の間」を取るのが難しい曲なのです。岡目八目で指揮を見ていないからだというのは簡単ですが、そういかないのが第九なのです。ですから、わたしはたとえばアマチュアオケのコンサート評で、金管に対して指揮をきちんと見てくださいなどとは言わないのです。そんなことしているに決まっています。でも、それがどうしても中途半端になって、事実上指揮を見ていない状況に陥ることがあります。それを回避するためには、事前の準備が必要なので、たとえば合唱をやってみて、息の吐き方を勉強してみると、突破口が見いだせることがありますよと提案するのです。

さすがにロンドンフィルの金管はpで音程が不安定になるなどということはないですが、出だしが合わないということは生じてしまうわけです。

マチュアオケの方であれば、スコアを見てみてください。事前にどこまで息を吸えるのか、それをにらめっこして研究してみると、改善することがあります。

この演奏では、合唱団も若干ですが同じ現象に陥っています。合唱団もロンドン・フィルの姉妹団体であるロンドン・フィルハーモニー合唱団ですから、いつもと違うホールで苦労してるのが手に取るようにわかります。

第九でどこが一番難しいかと言えば、実はこの「息継ぎ」なのです。金管にせよ合唱にせよ、あるいは木管にせよ、人の息を使って演奏する楽器はとにかく難しいのです。

そこをテンシュテットはとにかく冷静にさせようと必死です。その効果が表れ始めるのが第3楽章で、これはとても美しい演奏になっています。第4楽章になりますと再びオケが走り始め、それをテンシュテットがたしなめるという構図になります。それは合唱団が入って顕著になりますが、vor Gott!の部分できちんと六拍伸ばしてその上で音の切り方を合わせたのは素晴らしいです。

そしてそこから全体的に演奏は立ち直っていきます。練習番号M前後の朗々たる美しさは格別!そして、最後の「抱きあえ、いく百万の人々よ!」の部分はきちんと喋っており、ものすごいテンポでフィナーレへと突入していきます。聴衆は興奮して残響を楽しむ冷静さを欠き、曲が終わると同時にブラヴォウ!と拍手の嵐です。

できれば残響を楽しんでほしいなと思いますが、もしかするとそういった意見はこの演奏に関してはしてはいけないのかもしれません。それは、第九という曲がなぜ作曲されたのかを思い起こす必要があります。

第九はベートーヴェンが長らく温めていた楽曲でしたが、現在の作品となるきっかけになったのは、ロンドン・フィルハーモニー協会からの委嘱であったという点です。現在のロンドン・フィルとは直接関係ありませんが、ロンドンの人たちがこの曲を誇りに思っていることは、間違いないでしょう。その上で、第九はヨーロッパにおいては特別の曲であるということも、留意する必要があります。

交響曲第9番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC9%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

ロイヤル・フィルハーモニック協会
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E5%8D%94%E4%BC%9A

さらに、テンシュテットロンドン・フィルとの関係、テンシュテットという指揮者が辿った人生、この演奏がなされた当時の国際関係まで考慮に入れる必要もあります。

クラウス・テンシュテット
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%88

この一枚は、私に演奏というものをどう聴くべきなのか、再考を迫るとてもいい教材となっています。



聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付」
マリー・アンネ・ヘーガンダー(ソプラノ)
ルフレッダ・ホジソン(コントラルト)
ロバート・テアー(テノール
ギーネ・ハウエル(バス)
ロンドン・フィルハーモニー合唱団
クラウス・テンシュテット指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(IMG Artists BBCMusic BBCL 4131-2)



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