かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:マクシミリアン1世の宮廷チャペルにおけるモテット集

今回のマイ・コレのテーマ、見た方はいったいなんだと思われることでしょう。神聖ローマ帝国皇帝、マクシミリアン1世の宮廷に合ったチャペルで演奏されたであろうモテットを集めたCDです。

なんでこのCDを買ったかと申しますと、当時合唱団でイザークの「インスブルックよ、さらば」を歌っていたからなのです。

このCDの8曲目に入っていますが、それが目当てで買ったのです。しかしもちろん、別のもくろみもありました。当然ですが、私自身も「なんでマクシミリアン1世の名前が?」と思って、それに惹かれたのです。

つまり、私は一瞬にしてこのCDは珍盤であると確信した、というわけです。そしてその通り、このCDは珍盤です。

まず、マクシミリアン1世について、ウィキのURLを張っておきましょう。

マクシミリアン1世 (神聖ローマ皇帝)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B31%E4%B8%96_(%E7%A5%9E%E8%81%96%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E7%9A%87%E5%B8%9D)

政略結婚で勢力を拡大していった、ハプスブルク家の基礎を築いた人で、芸術を保護した人でもありました。そのため、彼の宮廷には音楽家が集まっていました。その中に、既に触れた「アルス・ペルフェクタ」ジョスカン・デ・プレもいました。

マイ・コレクション:ジョスカン・デ・プレのミサ曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/599

さらにもう一人の主要な芸術家として、イザークがいたのです。

ハインリヒ・イザーク
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%82%AF

このマクシミリアン1世の宮廷からは素晴らしい作品が生み出されており、それが一枚に収められたのがこのCDなのです。1曲目のホフマイヤーはネットではまったくその名がヒットしませんが、このCDの英語のブックレットには、1459年〜1537年の作曲家で、もともとはチロル領主ジークムント公の宮廷オルガニストでしたが、1490年からマクシミリアンに仕えるようになったとあります。1490年と言いますとマクシミリアン1世が借金ごとチロルを継承した年で(ウィキの「ローマ王・神聖ローマ皇帝」の項目参照)、彼がマクシミリアンからその才能を認められていた証左でありましょう。皇帝崩御後もザルツブルグの教会オルガニストとして活躍した作曲家で、マクシミリアン1世の才能を見る目の確かさをいきなり認識させられます。

収録されている作品すべてに言えることですが、その構成や展開がとても美しく、たんなる平坦な音楽では終らないのが特徴で、このホフマイヤーの「Salve Regina」もその一つです。

イザークもそれこそ私が目当てにした有名な「インスブルックよさらば」だけでなく、モテットも素晴らしいものがあります。一部歌詞にマクシミリアンを讃える部分があるのはある意味仕方ないでしょうし彼(あるいは彼ら)にとってはごく自然な流れだったでしょうから流しましょう。それを差し引いたとしても作品の価値が下がることはありません。

そもそも、インスブルックよさらばにはマクシミリアンに対する賛意は全くないものの、マクシミリアンに対する敬意にあふれている曲でもあります。彼がインスブルックを離れることになった時にその感謝の念を表わした曲だからです。作曲はイザークではないとも言われますが、いずれにしてもイザークのマクシミリアンに対する敬意が込められている作品です。

ジョスカンも「アルテ・ペルフェクタ」の名に恥じない作品となっていますし、またイザークの作品にかかわったゼンフルも、イザークジョスカンといった先人たちをついでマクシミリアン宮廷の作曲家として就任するほどの才能がありました。ただ、ホフマイヤーほどの力はなかったようで、旧師イザークを超えることはできなかったようです。

ルートヴィヒ・ゼンフル
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%92%E3%83%BB%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB

そのためか、第11曲目の「Quis dabit oculis」はゼンフルだけではなく、コンスタンツォ・コスタによって最終的に完成された作品となっています。

基本的にほとんどの曲はアカペラです。ルネサンス期に当たるマクシミリアン1世の時代は人の声が最上と考えられた時代ですから、楽器は添物です。そのため、オルガン以外の楽器は「インスブルックよさらば」くらいにしか使われていません。

演奏するアンサンブル・ホフカペレは楽器とのアンサンブルも、そして最上とされたアカペラも実に魅力的に演奏してくれています。カウンターテナーがすこし上声部できついのが難点でしょうか。しかしそもそも女性のアルトの音域を男声が出すのは結構きついのです。一応、私も合唱団時代はアルトの音域が出ましたから一部アルトを歌ってほしいと言われば第九でアルトを歌ったことも有りますが、さすがにある音から上は全く出ませんでした。プロはもう少し上の音域なら出るでしょうが、さすがにカウンターテナーという専門職でないと完全にアルトの役割を果たすのは無理です。その意味では、かなり難しい曲も彼らは作曲をしていたという証左でもあるのです。

合唱と言いますと「歌」というイメージがあると思いますが、このルネサンス期の作品の魅力は実は声による室内楽という側面にあります。それこそがポリフォニックである曲の魅力でもあります。それが前面に押し出されているCDです。



聴いているCD
パウル・ホフマイヤー作曲
Salve Regina
ハインリッヒ・イザーク作曲
Salve Sancta parens
Virgo prudentissima
Christ ist erstanden
ルートヴィヒ・ゼンフル作曲
De profundis
グレゴリア聖歌のゼクエンツ
Inviolata, integra et casta es Maria
ジョスカン・デ・プレ作曲
Inviolata, integra et casta es Maria
ハインリッヒ・イザーク作曲
インスブルックよ、さらば
ジョスカン・デ・プレ作曲
Proch dolor
ハインリッヒ・イザーク作曲
Sancti Spiritus assit nobis gratia
コンスタンツォ・フェスタおよびルートヴィヒ・ゼンフル作曲
Quis dabit oculis
ハインリッヒ・イザーク作曲
Christus surrexit
マイケル・プロクター指揮
アンサンブル・ホフカペレ
(CHRISTOPHORUS CHR 77217)



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